ゲーミングモード
レジェンダリーズには他にも、ゲーミングモードというものがある。実はレジェンダリーズが配信するFPSモードもその中にあるコンテンツの一つで、レジェンダリーズ用に開発されたゲームであったり、過去に開発されたゲームであったりが納められている。
過去作に至っては膨大な数が登録されていて、翻訳のされていない作品もレジェンダリーズを介せば勝手に翻訳してくれるし、ゲーム機にダウンロードして遊んでいるわけではないので、HDD容量不足だからとわざわざゲームを削除して容量を増やすなどの手間もかからない。
セーブデータは、他のゲーム機で遊んでいた時のセーブデータさえあればそれを引き継げるので、また一からやり直すということもない。ただし、再びそのゲームを課金あるいは無課金でダウンロードし直す必要がある。
ダウンロードと言っても、レジェンダリーズ内の本人確認画面にってことだけど。
マイナンバーで遊んでいても、別にマイナンバー側にゲーム履歴が行くわけではなく、あくまでも個人を特定することと病歴をレジェンダリーズ側に提供しているというだけなのよね。
個人情報に関してはすべてAIが管理しているので、管理側にいる人達ですら見ることができない。プレイスタイルや音声変化などから個人の体調を推測し、時には病院へ行くことを進めることもあるのがこのゲームのもう一つの姿でもある。
人の健康的で快適な暮らしのサポートを目的とし、時には廃人同然に遊ぼうとしてしまう人に休息を促すゲーム。そんなゲームが今まであっただろうかと、配信当時は言われていたらしい。
そうなると、危惧してしまうのが個人情報漏洩問題。詳細な個人情報管理の仕方は分からないものの、AIテンは一つの情報を細分化したものいくつものサーバーに別けて保存しているのではないかと言われている。
つまり、一つのサーバーから情報が盗まれても、細切れにされた情報では何の役にも立たないということだ。すべてのサーバーを盗めたとして、それらの情報を再び繋ぎ合わせるのは何十年もかかる。
何より、サーバーに不正アクセスしようとした時点でAIテンが気付き、ハッカーのパソコンを再使用不可能なほどクラッシュさせたという噂が実しやかに囁かれるほどのセキュリティーなのよね。
いくつものサーバーを介してハッキングしているハッカーが、まさかその居場所を特定された上にパソコンを破壊されるなんてことがあるのかしらと疑っているのだけど、トロイの木馬などのウイルスは、完膚なきまでに削除されているというのは事実らしい。
ウイルスの制作者を特定して、パソコンウイルスを蔓延させないよう警告して回っているというのも、嘘か誠かわからない噂の一つ。まぁ、人間が作ったものである以上、それを上回る頭脳のAIに勝てるはずもないのだから、そういう噂が出て来てもおかしくはないけど。
AIテンにしか情報を復元できないので、個人情報が盗まれる心配は少なからずしなくてもよいってことは間違いない。
ゲームの作品によっては2Dや3Dなので、状況によって画面表示のされ方が変わってくる。VRのものであれば上下左右360度見られるが、レトロゲームだと目の前に固定された画面が表示される。
また、コントローラも自在に選べて、人それぞれの遊び方で遊べるのも特徴の一つね。
何よりすごいのが、ゲームチャットで「こんちには」と打つと、相手が英語圏の人だった場合相手側のチャット欄には「Hi」と表示される。つまり、同時翻訳機能もあるの。
これは本当に画期的で、臆することなく会話できると好評なのよね。
家庭用ゲームからアーケードゲーム、スマホゲームやPCゲーム、どんなゲームだってレジェンダリーズでは遊ぶことができる。
FPSモードのFPSは、ファースト・パーソン・シューターの略でシューティングゲームの一つであり、一人称視点のゲーム。基本的に手や腕しか見ていていないのだけど、レジェンダリーズにおいては自分の視点で見える感覚に近いため下を向けば胴体や足も見える。
PVPを基本としつつ、モンスターの討伐もあり、カードゲームの要素もあり、大会主催者側の基本ルールを少し変えるだけであらゆる様相を呈することができる。
カードゲーム要素を強めに出したトレーディングカードゲームバージョンもあるし、MMOFPSというマッシブリー・マルチプレイヤー・オンラインという、多人数が同時に参加できるオンラインゲームもある。
ラグがないに等しいレジェンダリーズでは、特にMMOFPSをプレイする人の数が圧倒的に多いと言われる。
学生の間は、対戦人数が限定されているFPSモードで遊ぶことが基本とされているけど、禁止されているわけではない。ただ、私みたいに授業でやる程度の人間にとっては必要のないことだけど。
清夜が誘って来た学生主催のトーナメントの大元の全国学生連盟のルールでは、対戦人数を絞ったタイプのルールになっている。横から急にモンスターが襲来するという設定もないので、完全なる対戦試合なのよね。
そしてなにより、その他の大会と違って賞金もなし。名誉のみを求めて競い合う形になる。いわゆるeスポーツってやつね。
eスポーツとは、エレクトロニック・スポーツの略で、中にはその賞金で年商何億って人もいる。ただ、お金が関わっている以上、不正のない公平な試合でなければならないので、レジェンダリーズの厳しい規約に不満を持つ人達にとってはレジェンダリーズを介してのeスポーツに参加したくないという人もいる。
彼等の言うレジェンダリーズの厳しい規約というのは、過去の犯歴を開示するという条件なのよね。窃盗、恐喝、暴力、薬物などなど、その中でも比較的軽微な犯罪であろうとも自己申告が必須だというもの。
日本ではかつて、窃盗を万引きと言っていた時代もあったのだけど、犯罪の重さを自覚させるために公式での表現は窃盗を使わなければならないとされた。
犯歴を開示するというのはあくまでも禊の様なものなのだけど、そこで嘘を付くと賞金が出るタイプのeスポーツへの参加が認められないのよね。本人が忘れていただけ、だというのなら後で申告し直せばいいだけだけど、事実を否定すると賞金は貰えなくなる。
と言っても、実際に賞金を貰うようなタイプの人達が犯罪を犯していたという事実は今のところないみたいだけどね。
大金が動くので、透明性が必要だとされているのは当然のことだと思うし。
ゲーミングモードでは日々新たな挑戦がなされていて、レジェンダリーズの進化と共にその将来に期待されている。
その証拠に、操作端末の充実化は目覚ましく、もっと感覚的に遊べる様にと実際に体を動かして遊べるものもあるのよね。スパーリングの秒間ダメージを数字化し、それをポイントとして溜めることでキャラクターのカスタマイズをするというゲームもあったりするの。
前に遊んだことがあるから詳しいんだけど、つい熱中し過ぎて部屋の物を壊してしまったから止めた。そんなに暴れていた自覚はなかったんだけど、さすがに回し蹴りは物にも自分にも優しくないと知ったのよね。痛かったわよ、足……
コントローラの進化はもはや指先だけで操作するものではなく、もっと大きな身体の運動の一部となりつつある。元々そうなりつつあったのだけど、体感型へと変わってきていた。
今後の可能性では、コントローラを使わない時代になるのではないかと予測している人達もいる。
どうなるにしても、とっても楽しみだわ。




