1人目
道中、みつきとの会話でいくつか分かったことがある。
この大陸には3つの王国があること。
最近、魔物の動きが活発になっていること。
そして、この世界は所謂、剣と魔法の世界であること――――
みつきの家に着くと、夕食を用意してくれた。
「これはきのこカレーで…こっちはアップルジュースだ。」
少々リップルジュースを期待したのだが…しかしワイングラスに注がれたアップルジュースを見て笑みが溢れる。
後藤はきのこカレーと白米をぐちゃぐちゃとかき混ぜて食い出した。朝鮮食いだ。
ふと、タンスの上にある写真に目が行く。
「あ、あの写真…」
「あぁ、あれか。あれは俺が昔…だったころの…」
「そっちじゃなくて、その隣の女は?」
「あれは加藤みなみだよ、好きだったんだ…」
みつきはその後も恋愛話をごにょごにょと続けた、彼の与太話は飯を食らいながら聞き流すにはもってこいだった。
「ごっちゃんは彼女いるの?」
みつきの何気ない一言が夢と現実を直通させた。
「超絶色白バスケ部風美少女…」
「え?」
「超絶色白バスケ部風美少女《吉田ななみ》を探しているんだ」
「その吉田さんってのがごっちゃんの彼女ってこと?」
「そそそ…(この際そういうことにしておくか)」
「どこかで聞いたことあるような…」
みつきはいつもの口調で知ったかぶる。
「そうだ、城下町の酒場に行けば何か分かるかもしれない」
みつきにしては案外まともな意見だ。
「あそこの酒場の名前は確か…ビジョンクエストだ!あそこなら最悪働き口も見つかるよ」
「そんなふざけた名前をつける店主が見てみたいな」
二人の他愛もない話は深夜まで続いた。その後みつきはトレーニングがあるとかで出かけて行った。
一方後藤は眠れずにいた。無理もない、彼の脳ではこれまでの事象の処理が追いつかないのだ。ベッドの隣に本棚を発見。ねっとりと女子高生を視姦するように上下に視線を揺らす。すると、「リゼロだ、これ…」見つけた。こちらの世界でもリゼロは人気らしい。帯にそう書いてある。
後藤は夜明けまでリゼロを読んだ。彼の昼夜逆転の原因はリゼロにあったとかなかったとか…