とある学祭の模擬店〜疑問符を取り出すポットパイ〜
……なるほど
そんな風に言われたのか
僕も
同じことを
言われたことがあるよ
僕の場合は
親からだけどね
勘って怖いよね
なんで
怖いと感じるか分かるかい?
それは
相手の勘働が
自分の不利益につながると
思っているからさ
まあ
それは
ポットパイの議題からは
逸れてしまうから
置いておくとして
彼らの『勘』を支えているのは
これまでの観察結果と
現在
表層に表れているものとの合致だ
出来上がったパイの部分が
白っぽくって柔らかいもの
こんがり焼けててパリッと割れるもの
ちょっと硬めでスプーンが刺さるもの
卵が塗られた時にどうだったとか
トースターと
オーブンレンジの差とか
「これと同じことが以前にも……」
今と昔を
適切に
結び付けられるのだから
賢い人だ
本当は
そういう人には
余計な誤魔化しは逆効果なんだよ
ただ
パイの中身を
美味しく食べてもらうためには
何も考えずに
えいってフタを開ければ
良いというものではない
入念な心配りは
必要だと思うんだけどね
いやいや
論点がまた
ぼやけてしまうな
話を戻そう
過去と現在を結ぶって
話をしたんだけどさ
でもね
それが
「よくあること」なら
昔のことなんて
いちいち
覚えていないよ
すごく良いか
すごく悪いか
どっちかは分からないけど
とにかく
ものすごく
印象に残るような
そういう出来栄えだったんだよ
その時のパイは
食べ物って
好みが分かれるからね
出してるほうは
「これが好き」
と思っていても
彼にとっては
どっちだったのかな
……僕?
僕の時はさ
最悪だと思われていたよ
病的な不味さだって
今にして思えば
僕の目から見ても
あれは
良くなかったな
でもね
食べた人は
不味さの原因はBだと思ってたけど
真因はAだったんだ
時が来たら
Aをばっちり整えて
パイを食べてもらうよ