清花の思い
主な登場人物
・反町友香(ソリマチ ユウカ
中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。
ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。
茉莉花茶が好き。
・青山清花(アオヤマ サヤカ
神奈川県警の刑事。友香の姉的存在。
英国人と日本人のハーフ。
灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。
愛車、ナナマル(JZA-70)の整備が趣味。
・神津柳(カミツ ヤナギ
中華街で探偵事務所を営む女性。
カールしたショートボブと眼鏡が特徴。
友香の叔母にあたる、母親的存在。32歳。
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取り調べを終えた清花は、足利と共に休憩スペースにいた。
「にしてもまぁ、よく自供させたな」
彼が缶コーヒー片手に、ベンチに座った清花に話しかける。
「私自身も、驚いています。後先考えず、つい勢いで凄んでしまいました……」
「それだけ、本気で相手を思っていたってことだろうよ。それから被害者と、その家族のことをな」
「ええ、そうですね……」
清花は思った。それだけではないかもしれない。自分は友香のために力を尽くしたのではないかと。
少女はこの事件を狂言誘拐だと推測した。それを間違っているとは思いたくなかったのだ。清花は、幼いころ共に過ごした友香を心の底から信頼しているのだから。
「まだ事件は終わっちゃいねぇからな。頼むぞ青山」
足利は、空になった缶をゴミ箱に捨てると、
「俺は先にデスクに戻ってるからな、じゃーな」
右手を上げ、休憩スペースを去っていった。
一人残された清花は、両手で包んでいた缶コーヒーをぼーっと見つめていた。すると、彼女の首輪が通知音を立ててた。
認識画面を表示させ、相手を確認する。画面には友香と表示されていた。
「もしもし友香?」
自供させた達成感からだろうか。少し興奮気味に通話回線をオンにする。
「もしもし清花?取り調べは終わったかしら?」
電話の向こうの友香は清花以上に興奮気味だった。そのため少々早口だった。
「はい、終わりましたよ。友香のほぼ予想通りでした」
「自供させたのね。さすが」
「ありがとうございます。それより、何かあったのですか」
少し嬉しそうに口元を緩ませた清花だったが、友香の異変を思い出し、問いかけた。
「ええ、確認してほしいことがあるの」
「確認してほしいこと?」
「ええ、もし私の想像通りだったら一気に事件が解決するかもしれないわ」
「……!それは本当ですか?」
驚きのあまり大きな声を上げてしまった。周囲には誰もいなかったのだが、口元に手を当ててコソコソと話をする。
「で、その確認してほしいこととは?」
「金田の通信デバイスを調べてほしいの。私の予想が正しければ……」
友香は清花に確認して欲しいことの詳しい内容を告げた。
「わ、わかりました。わかり次第すぐに連絡します」
清花は、その注文に動揺しつつ了承した。
通信回線をオフにした彼女はベンチから立ち上がると、その内容を確かめるべく鑑識課へと歩き出した。