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誰も知らない誘拐事件  作者: 空波宥氷
10/28

進展

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・青山清花(アオヤマ サヤカ

神奈川県警の刑事。友香の姉的存在。

英国人と日本人のハーフ。

灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。

愛車、ナナマル(JZA-70)の整備が趣味。



・神津柳(カミツ ヤナギ

中華街で探偵事務所を営む女性。

カールしたショートボブと眼鏡が特徴。

友香の叔母にあたる、母親的存在。32歳。



・生天目 響(ナマタメ ヒビキ

友香のクラスメイトで、親友。

黒髪ロングをハーフアップにした少女。

天才ハッカー。バニラアイスが好物。

9


 陽はまた登り、通勤ラッシュもおさまってきた頃、友香は昨日訪れたビルの前に立っていた。

 警備ロボのデータを消去するため、響と待ち合わせをしているのであった。



「ええ……じゃあ例の件、よろしく頼むわね」

「友香!お待たせ!」



 友香がどこかにかけていた電話を切ったタイミングで、一人の少女が駆け寄ってきた。

 少女の身長は友香より少し高く、肩下まで伸びた黒い髪が青いリボンでハーフアップにまとめられていた。服装は、フリルのついた白いブラウスに青い薄手のセーターを羽織っており、紺色のAラインスカートが落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

 彼女こそ、友香の親友であり、ハッカーの生天目響なまため ひびきであった。



「久しぶりね響、元気そうでなにより」



 彼女に気がついた友香は、久しぶりに友人に会えたからか、嬉しそうに笑みを浮かべる。

 


「びっくりしたよ、急に電話がかかってきたと思ったら、ロボットのデータを消してほしいだなんて」



 そんな彼女に響が苦笑する。



「忙しいのに呼び出してごめんなさいね。それで、データなんだけど……」

「大丈夫、私に任せて。その代わりスイーツ奢ってもらう約束、忘れてないわよね?」



 響きがニヤリと笑う。



「はいはい、響は本当に甘いものが好きね。あ、ロボットはこっちよ」

「はーい。ていうか魚屋さんの隣に花屋さんがあるの?すごい立地ね」

「私も初めて来たときは驚いたわ。でも、すぐに食用菊が用意できていいんじゃない?」

「で、花屋さんはその見返りに、お刺身をもらってたりして」

「おもしろい近所付き合いね、それ」



 くだらない会話をしつつ、二人は階段を上っていった。







9-2


 その頃、清花は探偵事務所を訪れていた。

 昨日起こったことを、一刻も早く柳に伝えたかったのだ。



「行方不明になっていた組長が遺体で発見された?」



 彼女は一瞬目を見開いたが、すぐに真剣な表情に戻った。



「詳しく聞かせてくれる?」


「はい。昨日の午後十時、中華街市内の路地裏で人が血を流して倒れていると110番通報があったそうです。発見者は酔っ払いで、近くの居酒屋で飲んだ帰りに発見したと証言しています。その路地は人通りがほとんどなく、そのせいで発見が遅れたと思われます。被害者は先にも述べた通り、指定暴力団組長、金田巳神43歳。死亡推定時刻は、二日前の午後12時から14時の間。死因は大動脈損傷による失血死。凶器は側に落ちていた彼の拳銃です。おそらく、犯人ともみ合いになった際、暴発したのではないかと捜査本部は考えているようです」

 


 清花が一息に概要を述べた。



「銃……ね。で、犯人の目星はついているの?」

「はい、被害者のモバイルウォッチの最新履歴に、何度も同じ番号からの着信記録がありました。おそらく、被害者は現場に呼び出されたのでしょう。そして口論の末、暴発してしまったのではないかと考えられます」



 モバイルウォッチとは、通話やメール機能を内蔵した腕時計型通信デバイスで、ひと昔前に普及していたものだ。通話着信があると、時計の円周から映像がちょうど虚像と実像のように、写し出される機能が目新しかったせいだろう。現在では、これと連動できるコンタクトレンズが開発されており、ミーハーな若者を中心に、再び話題となっているようだ。



「なるほど、で、その電話の相手はわかったの?」

「ええ、それが……」



 清花が躊躇いがちに口にする。その名前に、柳は驚きを禁じ得なかった。





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