同居③
「お風呂お先しました」
そう言って風呂場から出てきた姫野ちゃん、ちゃんとバスタオルで胸隠してる。
そういうとこ、弟に徹してくれないのな。
徹してもらったらもらったで色々まずいんだけど、なんだろうこのわがままな気持ち。
「いつも下着とかもろもろ風呂場においてあるんで、持って入るの忘れたんすよね」
そうなんだ。
でも整髪料落としたサラサラヘアの姫乃ちゃん美少女過ぎてカオス。
透明感あるもっちり白い肌とかカオス。主に俺の脳内が。
何気に視線をそらしてしまったチキンマインドな俺。鼻血吹き出そう。
どう見てもおちんちんついてなさそうなお姿でした。
◇◆
お風呂に入った。
毛とか浮いてないかなーとか思って探そうか迷ったけどさすがにきもいのでやめた。
風呂から出ると姫乃ちゃんが料理してた。
ゆるふわ系女子の作るふわっとパンケーキとか予想してたけどおかんの作る和食みたいなのが出てきた。
「母さんがタッパに作ってくれてたのを温めただけっすよ」
姫乃ちゃんが作ったのは味噌汁と出汁まし玉子だけらしいけどプロ級なお手前。
姫乃ちゃんママの作った肉じゃがは料亭の味。
やはり金持ち一家はステータス欄の数値が高いんだなって思った瞬間だった。
「ご飯はお世話になるんだからお前が作れよって言われてて、その、あんまうまくはないんですけど」
「いやいやいやいや、うまいよ? 超美味い! え、これから作ってくれるの?」
「はい、俺でよければ」
男装女子の解除バージョンの姫乃ちゃんが恥ずかしげに笑ってうなずく。
なにこれ恋してしまいそうですが。
きっつい。
きっついわこの生殺し感。
ここは修行僧の試練場ですか?
「えなりさんは、普段はどんなご飯を食べてるんですか?」
「え、カップ麺とか、冷食とか? なんで?」
「どんなのが好きなのかなって思って」
「あー、そうなんだ、なんでも食べるよ、好き嫌いとかないし、和洋中なんでも」
「そっすか。じゃあスーパー行ったらお得食材でその日の献立決めるっすね」
「あ、うん。でも負担にならない程度にしてほしいから、たまにでもいいよ?」
「大丈夫っすよ。部活とかしてないし放課後は彼女といるだけっすから」
「あ、ふーん、そうなんだ。じゃあ、お願いしようかな」
「はい! 任せてください」
彼女の笑顔がまぶしい。
心の涙がとめどなく溢れてる。なにこの幸せ。
お母さん。僕は悶死しそうです。