第二星 襲来
"東京第一軍事学校"
旧地球防衛軍
現「地球連合艦隊」
通称「地連」と呼ばれる組織ができてから作られた、日本の軍事学校第一号だ。
突如あらわれた敵"レイゼル"の殲滅と日本の防衛を目的とし、地球連合艦隊・日本支部が作った学校である。
生徒の総数は2000人を超え、教師等を含めると約2200人だという。
これは日本の軍事学校で一番の数字らしい。ちなみに日本には、軍事学校は四ヶ所あり、それぞれ、北海道、東京、兵庫、熊本にある。
そのなかでも、東京学校は、日本で一番始めに作られたということもあり、伝統と誇りがあるらしい。
東京第一軍事学校についた永人は、門の前にいる警備員の人に声をかける。
「すいません。本日よりこの学校に編入になった、星海 永人です」
「ちょっと待ってね。いまデータベースを確認するから...はい、確認完了。顔も写真と一緒だね。通っていいよ」
警備員に促され、門を通る。
あたりを見渡すと、武器運送用のトラックや、訓練用の戦車、そしておそらく人型起動兵器「グローリー・ドール」(通称GD)が保管されていると思われる、格納庫がみえる。
そして、校庭の方をみると、倉庫に向かって歩いていくGDも、見受けられる。
遠目からでも、その機体が前日本の主力機にして、現在は訓練兵、新兵に配給される機体「トモシビ」だということが、赤褐色をメインとした、カラーリングからわかる。
しかし、学校で使っているのはそのトモシビの劣化型である、トモシビ・軽装だ。
すこし、トモシビを眺めたあと、また校舎へと向かって歩いていく。
校舎に続く道を歩いている途中に、突如、耳障りな警報が鳴り響く。
この警報は、"レイゼル"が攻めて来たときに使われるものだと気づくのに時間はかからない。
(やつらが攻めて来たのか!いったいどこに!)
そんな事を考えながら、永人は敵の情報を得ようとスマホを覗きこむ。
スマホの画面には、「レイゼル出現、現在東京方面に進行中。レイゼルの機体は、パルック級を20体確認。
現在、地球連合艦隊日本軍第57部隊が東京15ブロックで交戦中。周辺の皆様は、直ちにお近くのシェルター。または、決められた避難場所に向かってください。繰り返します、レイゼル出現...」
と、いうメッセージが繰り返される。
(15ブロックだって?!この近くじゃないか!パルック級が20もいるのか...。かなり危険な状態だ。しかも交戦してるのが50か。時間稼ぎにもならないな)
地球連合艦隊日本支部の部隊の役割は数字によって変わる。
現在交戦中の50番台の部隊は、偵察を目的としている部隊だ。そのため、機体も戦闘行為には向いておらず、情報収集、長時間の稼働を目的として作られている。
それでも、戦えない訳ではないのだが、今回は相手が多すぎた。パルック級が二十体など、偵察機数機では、足止めにもならない。
(おそらくやつらの目的は軍事施設の強襲。と、なれば今回狙われるのはこの学校だろうな。ここが潰されたら、日本にとって大きいな痛手になる。全く、編入初日にこれか。まだ教室にもついていないんだぞ)
愚痴を心で吐きながら、永人は先ほど見たGDの格納庫に向かって走り出す。
(さっきまで動いていたんだ。いまなら、動かせる機体が一つぐらいあるかも知れない!)
格納庫に着き、扉をあける。鍵は空いており、急いでなかにはいる。そこで、さきほどまで使われていたであろうトモシビを発見する。
発見したトモシビを調べると一機だけ、起動状態でおかれていた。永人は素早く乗り込み、トモシビのコックピットにはいる。
トモシビの状態を確認する。
各部問題なし
武装
片手鉈×1
震動ナイフ×2
手榴弾×8
残りエネルギー85%
ライフル無し
(武装はこれだけか。しかも、アサルトライフルを持っていない。訓練機だからしかたがないが。これなら3体潰せたらいいほうだ)
一般兵ならば、一体でも潰すのが厳しい訓練機に乗り、永人はそう考える。
そして、出撃準備を終えた頃に、もう一度スマホみる。
「第57部隊壊滅、敵パルック級17までその数を減らす。現在パルック級は、東京第一軍事学校方面に向かって進行中。付近の皆様は、すばやく避難してください。繰り返します... 」
(やはりここにきたか。しかも、17体も残っている。さすがにこの数は一機では無理だな。時間も稼げやしない)
しかし、永人には、トモシビを降りる気配がまったくない。それどころか、格納庫の扉を壊し、トモシビをだす。
「さて、かなりのピンチだがやるしかない」
永人を乗せたトモシビは、パルック級いる方角に向かって駆けていく。
軍事学校の回りといえど、家やマンションが立ち並ぶ。その街なかを全長10mの機体が駆け抜ける。街の人々は避難したのか、人一人見つからない。
学校から5㎞ほど離れた場所でパルック級と出会う。
パルック級は戦闘機のような見た目をしているが、戦闘機と決定的に違う部分がある。それは、本来ならコックピットがあるであろう部分に、虫のような顔がついているのである。
虫の顔には人工知能、いわゆるAIが搭載されており、完全に無人機である。
そのために、死ぬのを恐れず、特攻紛いの行動まで、することがある。
永人は、パルック級を5機確認する。残りの12機は別のところにいったか、それとも後方で待機しているのか。
理由はどうあれ、ラッキーと考えよう。
とりあえず目の前の敵を全力で倒すだけだ。