七章 勇者のプライド
幸太郎たちが警戒態勢をとると、茂みから手にはダガーナイフを持ち、覆面を被った10数人の盗賊が出てきた。
「そこに武器と荷物を全部置いてとっとと消えな!」
盗賊集団のリーダー格だろうか、1人が前に進み出て偉そうに言った。
「僕は勇者だ。勇者から物を盗っ・・・、」
盗賊集団の全員が目をキョトンとさせ、幸太郎が言い終わるよりも前に笑いだした。
「ハッハッハ!いつの時代に流行った嘘だよ!古すぎて子供の頃を思い出しちまった!今時そんな嘘で騙されるやつなんて聞いたことないぜ!?」
リーダー格が大声で叫んだ。話から察するに、昔“夢の国”で流行っていた防犯の為の嘘なのだろう。“夢の国”のほとんどの人が「勇者だ。」と言っても信じてくれないのだと、薄々気付き始めてはいたがこうも笑われると流石に腹が立つ。
フレイヤとガノンが早くも飛びかかろうとし、幸太郎に手で制止された。幸太郎自身も何とか見返してやりたいと思っているのだが、1人で皆を傷つけないように戦えるような武器など何も思いつかなかった。いや、それよりも魔法を使ってみたい。自分に秘められた潜在能力がどれほどの物なのかが知りたい。
「ポポ、魔法にコツとかってないの?」
盗賊集団が笑い転げている隙をついて、幸太郎はポポに耳打ちした。
「魔法のコツですか?想像、それだけです。」
幸太郎はポポのあまりに簡潔な答えに戸惑ってしまった。何をどう想像すればいいんだろう?しかし、盗賊団たちは笑い疲れてしまったのか笑うのをやめて臨戦体制に戻ってしまった。もう聞き返す隙はない。
「あくまでも荷物は渡さないってか?多勢に無勢だぞ?よく考えてみろよ。お前らに勝ち目なんてねぇんだよ!とっとと荷物置いて失せな!」
幸太郎たちが全く動揺を見せないからか、リーダー格が疳癪を起した。またそれにフレイヤが反応したが、幸太郎がまたも制止した。
「僕がやる。そんでもって勇者だって証明してやるよ。」
盗賊集団は今度は怒りだした。フレイヤたちは「呆れた。」と言うように溜息を吐いて武器を下ろした。
ポポが変身のスタンバイをしたが幸太郎は無視して盗賊集団に喧嘩を売った。
「おじさん、弱い奴ほどよく吠えるって言うけど、本当なんだね。おじさんたち皆弱そうだもんね。」
「よく吠えるのはお前の方だろうがぁぁぁああーーー!!!」
幸太郎が挑発すると盗賊集団はまんまと乗ってくれた。あとはハッキリと強く想像するだけ。・・・多分。
次の瞬間、幸太郎たちと盗賊集団の間に巨大な渦潮が現れた。しかし、それは一瞬で消え去ってしまった。盗賊集団はまた笑い始めた。あれだけ威張り散らしたのにこんな結果になるなんて・・・悔しい・・・悔しいよ・・・!
「はぁ、まったく、使ったこともないのに魔法なんて使おうとするからよ。魔法っていうのはね、こう使うの。」
フレイヤがそう言った途端またあの渦潮が現れた。しかも、さっきのよりもずっと速く回転している。
「“激流の渦潮”!」
フレイヤの雄たけびと共に渦潮が大きくなり、盗賊集団を飲み込んだ。一瞬盗賊たちの断末魔が聞こえたが、それ以降は水が激しく流れる音しか聞こえなかった。
フレイヤは魔法を解くと、幸太郎にみっちりお説教をした。
「もうあんな無謀なことはしないこと!分かった!?」
フレイヤは物凄い形相で言った。
「は、はい・・・。もうしません・・・・。」
幸太郎は震える声で言った。さっきの盗賊よりこっちの方がずっと怖い。
「よろしい!・・・まったくもう、ポポを使えばよかったでしょうに。」
身の毛のよだつ形相が一変していつものフレイヤに戻った。でもまだ怒ってるけどね・・・。
「どうしても魔法が使ってみたかったんだ・・・。」
幸太郎がうつむくと、フレイヤが笑いかけてくれた。
「仕方ない、今日からお城につくまでの間魔法を教えてあげるわ。その代わりみっっっちりしごくからそのつもりでいてね。」
「え?お城?」
幸太郎はキョトンとした。初耳だ。フレイヤが軽蔑するような眼でポポを見た。ポポは一瞬思い出したという顔をしたが、フレイヤの方を見て驚いて文字通り飛びあがった。フレイヤは溜め息をつくとお城のことを話し始めた。
「・・・もう3つ街を過ぎたその向こうにお城があって・・・、」
そういえば“夢幻王”も城に住んでるって・・・・・・お城ってまさか・・・!




