二章 旅の仲間たち
幸太郎は先導するポポについて、森の中を歩いていた。
「あれれ?」
も、もしかして・・・このリアクションは!?
「迷ったなんて言うなよ!」
「ううう・・・ご、ごめんなざ〜い。」
迷ったうえに泣きだすなんて・・・なんて迷惑な妖精だろう・・・。
「な、何とかなるって!だから泣くなよ!頼むから!」
幸太郎が慰めようとポポに近づいていくと、靴の下に違和感を感じた。
「グオオオオオオオーーー!!!」
真後ろから物凄く大きな咆哮が聞こえる。幸太郎は足元を見た。するとそこにはそれはそれは太い根っこのような物があった。
「な、何だこれ・・・う、動いているぞ!?」
幸太郎は背筋に悪寒を感じたものの、勇気を出して振り向いた。全長10mはある肉食植物のような物が暴れていた。いや、明らかに肉食植物だ。だって普通の植物の花には目も口も鋭い牙もないもんね。幸太郎は背筋が凍りつくのを感じた。
「キシャーーー!!!」
お花さんのお口は幸太郎に向かって突進してきた。幸太郎はそれを命からがら避けた。
「うわー!珍しーい!“キメラ・フラワー”だ!」
あまりにも怖そうな名前だ。果たして生きて返してくれるのだろうか・・・。
「き、きめらふらわー!?」
「はい、“キメラ・フラワー”は肉食で普段は大人しい植物ですが、一度怒らせてしまうと、怒らせた相手を食い尽くすまで決して逃がしません。どうやら勇者様は怒らせちゃったみたいですね。ア、アハハハハ・・・。」
「アハハハハじゃねぇよ!食われるー!勇者なのに旅立ったその日にー!!」
幸太郎は逃げ出そうとしたが、お花さんが根っこで2〜3mくらいある壁を作ってしまったので、逃がして貰えなかった。
「これがあの有名な“根の壁”かー。凄ーい!」
あまりにも呑気な妖精に幸太郎はキレた。
「お前呑気に構えてないで何とかしろー!」
「じゃ、じゃあ勇者様、胸の前で両掌を広げてください。」
言うとおりにするとポポがその上に乗った。
「“キメラ・フラワー”を倒せそうな武器を想像してみてください。」
創造した武器を出してくれるとでもいうのだろうか。仕方ない、今はそれに賭けるしか道はないか・・・。えっと、こいつは草だから・・・。
ポポは光を放ち火炎放射器となって幸太郎に装着された。
『何か、物凄く“夢の国”には場違いな気がするのですが・・・。』
どうやら変身した状態でも話せるようだ。それにしても本当にこの妖精は一言多いやつだ。
「でも草花にはこれが一番だろう?」
『まぁ確かにそうなんですけど・・・でも・・・、』
とにかく幸太郎は“キメラ・フラワー”を焼き尽くした。一時はどうなるかと思ったけどこれで一件落着だ。
『あ〜あ、人の話を最後まで聞かないから〜。ポポ知らないですよ〜。』
そうだった、ここは森だからこんなことをしたらこっちまで燃えてしまう。一難去ってまた一難とはこのことだ。
幸太郎はポポを消防車にしてなんとか火を消した。
「ふぅ、これでOKだな。」
幸太郎は額の汗をぬぐった。
『勇者様凄いです!流石僕の見つけた勇者様!』
幸太郎のはたらきにポポは感心した。
『ずる賢い!』
「うるせーよ!・・・ってそういえば俺たち道に迷ってたんだった!!」
幸太郎は動転した。二難去ってまた一難と言ったところか。そうすると不意に後ろから声がした。
「君たち、見てたわよ。凄いじゃない。道に迷っちゃったんだったら近くの町までなら案内するわよ?」
耳の長い長身の女の人だった。エルフなのだろうか。とりあえずその人に道を教えてもらい、森を抜けた。
森を抜けると遠くに町が見えた。
「ありがとうございます。えっと・・・、」
「自己紹介がまだだったわね。私はエルフ族のフレイヤよ。よろしくね。」
「フェアリー族のポポです。こちらこそよろしくです。そしてこちらにおられるお方は勇者様の佐々木 幸太郎さんです。」
「まぁ、勇者様でしたの?・・・小さいのに。頑張ってくださいね、小さな勇者様。」
「あ、はい。・・・そういえばポポ、具体的に何をすればいいのかまだ聞いてないんだけど・・・。」
「あ!そのことをすっかり忘れてました!!」
話のほとんどが勇者を称えるものだったので、どうやら幸太郎は“夢幻王”とか言う魔王的なやつを倒させる為に、“夢の国”の神様的なものに呼ばれたということが分かった頃には、もうすでに町に着いていた。門に“酒の町カトロ”と書いてある看板がかかっている。この町の名前なのだろう。
町に入ると当然の如く酒臭かった。流石酒の町と言ったところか。ポポもフレイヤさんも同じところを目指しているようなので、そこまで一緒に行った。そこはカトロでも有名な酒場らしい。
その酒場の看板には“斎蔵の酒蔵”と書いてあった。斎蔵というのはここのマスターの名前らしい。中に入ると大勢の人が当然のごとく酒を飲んでいた。
「では、私はこれで。さようなら。」
幸太郎とポポが別れの言葉を返したら、フレイヤさんはマスターの方へ行って手紙を渡し、何やらお金を貰っていた。手紙を届ける仕事だったのだろうか。幸太郎がぼんやりとそんなことを考えているとポポが叫んだ。
「ここにおられるのは世界を救いの道へと導かれる勇者様です!旅のお供を頼みたいのですが、我こそはと言う方はございませんか?」
なるほど旅のお供を集めるのなら確かに酒場は絶好の場所だ。しかし、酒場は一瞬静まり返り、笑いで溢れかえった。ウェイトレスの女の子まで笑っている。
「だっはっはっはっはっは!こんなガキが勇者だと!?笑わせんじゃねぇ!野良犬にだって勝てねぇだろうによ!」
ドワーフのような風貌の男が幸太郎を笑った。それに対しポポは憤慨した。
「失礼な!勇者様は先程、森で“キメラ・フラワー”を見事倒されました!」
酒場中で大笑いが響き渡る。笑い転げている者さえいる。
「“キメラ・フラワー”だって!?そんなもんこんなガキに倒せる訳がないだろう!?あれは相当な手練じゃなきゃ倒せやしねぇ!」
お花さん・・・そんなに凄かったのか。もしポポがいなかったらと思うとぞっとした。フェアリー様様だ。ポポとドアーフの男が言い争っていると、フレイヤさんがこっちへ歩いてきて言った。
「本当よ。私、この子が“キメラ・フラワー”を倒したのをこの目で見たわ。」
一瞬で酒場が静まり返った。
「何のジョークだフレイヤ、そんなことありえて堪るか。」
フレイヤさんとこのドワーフの男は知り合いのようだ。
「何ならあんたとこの子、どっちが強いか試してみる?きっと5分と持たないわよ。」
「お、お前がそこまで言うなら信じてやってもいい・・・だが、そいつが俺に勝ったらの話だ。・・・小僧、ついて来い。俺がお前の相手をしてやろう。」
酒場の裏には小さな闘技場のような物があった。ここで戦うと言うのか。ドワーフの男は身の丈ほどもある大きな斧を持ってきた。
「ガキ、覚悟はいいか?」
ドワーフ男はニヤリとした。
「いいよ、おじさん。いつでもかかってきなよ。」
幸太郎はニヤリと返す。
「はっはっは!言うね!ガキ!!」
ゴングが鳴ると、早速ドワーフの男が突進してきた。
「ポポ!」
「はいです!」
幸太郎はポポを身の丈ほどの大剣に変えた。不思議とそれは軽く、非力な幸太郎にも持てるほどの重さだった。
「やるじゃねぇかぁぁぁああーーー!!!」
ドワーフの男は幸太郎に向けて斧を振り下ろした。幸太郎は大剣でガードしたが、あまりの力の差に吹き飛ばされそうになった。
「オラオラ!どうしたどうした!攻撃しねぇと勝てねぇぜ!ガキ!!“キメラ・フラワー”を倒したんじゃねぇのか!?まさか寝込みを襲ったんじゃねぇだろうな!?」
ドワーフの男の大斧による猛攻に幸太郎はたじたじになってしまっていた。このままじゃ負けるのも時間の問題だろう。
「これで・・・終わりだぁぁぁああーーー!!!」
大斧が振り上げられた瞬間を狙って、幸太郎が大剣を大斧の刃の付け根に向かって思い切り振り上げた。大斧の刃は宙を舞い、場外の地面に突き刺さった。観戦していた人たちが息を呑み、静寂が広がっり、しばらくすると歓声に包まれた。
「くそっ!俺は認めねぇぞ!!今のは明らかにまぐれじゃねぇか!」
ドアーフの男が別の斧を取りに行こうとすると、フレイヤさんがやってきて言った。
「見苦しいわよ。それに残念ながらその子、全然本気出してなかったわよ。勇者様も、もう少し強い武器で挑んであげてもよかったんじゃないですか?」
「あ、やっぱりバレちゃいました?でも、アレは流石に死んじゃいますよ。」
「何・・・だと・・・?」
ドアーフの男は完全に戦意を喪失した。
「俺の負けだ・・・仕方ねぇ、小僧、お前を認めてやる。・・・それと、1つ頼みがあるんだが・・・、」
ドワーフの男は土下座して言った。
「頼む!俺をお前の旅に連れていってくれ!」
「いいよ、おじさん。おじさんみたいに強い人なら大歓迎だよ。」
幸太郎の言葉にドワーフの男は大喜びした。
「俺はドワーフ族のガノンってんだ!よろしくな!!」
「僕は佐々木 幸太郎だよ。よろしくね。」
「フェアリー族のポポです。よろしくです。」
挨拶を交わし終えるとフレイヤさんが悪戯っぽく言った。
「ガノンだけじゃ頼りないから私も連れて行ってくださらない?」
「言ってくれるぜ。」
「うん、いいよフレイヤさん。他にも誰かついてきたいって人いませんか?」
大勢の人が名乗りを上げたがガノンが止めた。勇者の旅は厳しい旅になるからだそうだ。
「まったく・・・こんな危ない酒場に旅の仲間を探しにくるなんて・・・。」
「すいませんです。長老に『仲間集めなら酒場だ。』って言われて・・・フェアリー族の友達にカトロの“斎蔵の酒蔵”が有名だって聞いたんです。まさかこんなことになるなんて・・・。あっ、そういえばフレイヤさん、斎蔵さんに何を頼まれていたんですか?」
「こらポポ、話を逸らすんじゃ・・・、」
「モンスターの駆除をちょっとね。」
「えぇ!?」
「とは言っても、あなたが倒した“キメラ・フラワー”の餌の餌程度だけどね。」
「よく言うぜ。俺ならどんなに金を積まれても“オオゾウクイ”なんざ1人じゃあ・・・、」
「あんたは魔法使えないからでしょ?」
「・・・フレイヤ、そりゃドアーフ差別ってやつだぞ・・・。」
「ふふっ、冗談よ。」
・・・フレイヤさん、あなたが強いってことはよぉく分かりましたぁ!
そんな話をしながら4人が酒場を後にしようとした時、さっき笑っていたウェイトレスの女の子が声をかけてきた。
「君、村小の転校生だよね。」
村小とは田村小学校の略で、幸太郎が転校してきた小学校の名前である。
「え?」
聞くとどうやら噂話にされていた“消えた子”のようだ。自分のやりたいことがないから仕方なく酒場のウェイトレスをやっていたそうだが、この仕事には飽き飽きしてしまったそうで旅に連れて行って欲しいとのことだ。幸太郎はしぶしぶ承諾した。
「ゆ、勇者様〜!?この子巻き込んじゃってもいいんですか?」
皆は危ないからと反対したが、幸太郎は旅に連れて行くと言ってきかなかった。
「この子、同じ小学校に通ってた子なんだ。あ、小学校って言うのは7歳〜12歳までの子供が通う・・・えーっと・・・、」
「勇者様、“夢の国”にも流石に学校くらいはありますよ。」
「そうなんだ。・・・とにかく、全然知らない子だったけど、何だか他人の気がしないんだ。」
結局その子も連れて行くこととなった。小田桐 瞳と言う名前らしい。幸太郎とポポはフレイヤとガノン、瞳を仲間に加え、カトロを後にした。




