十二章 夢の城
急に目の前が真っ暗になった。体の自由も利かない。僕は悪魔にでも魂を売り渡してしまったのだろうか?
『だから言ったのだ。』
さっきの・・・声?
『自分を強く持てと。』
いや、この声・・・聞いたことがある。“海の魔玉”だ。
『少年よ。』
そうか、僕は自分の力に支配されてしまったのか。
『そなたの仲間が力の化身を倒してくれた。』
力の・・・化身?さっきの声のこと?
『そうだ。仲間のおかげでそなたは体を取り戻すことができた。だが今回の事で力の化身の力が強まってしまったようだ。』
じゃあ僕はいったいどうすれば・・・?
『さっきも言っただろう。自分を強く持て。さすれば今回の様な惨劇は免れよう。』
自分を強くって言われても・・・。
『少年よ。力に、感情に、決して身を委ねるでないぞ。』
幸太郎は朝の日差しを感じた。目を開けると、仲間たちが周りを取り囲んでくれていた。しかし、それを見たフレイヤとガノンは臨戦体制をとり、ポポと瞳は怯えている。
「大丈夫、元の僕だよ。それよりここはどこ?ネンスは?いったいどうなったの?」
それを聞き、皆はほっと胸をなでおろし、フレイヤが医者を呼びに行った。見渡すとそこは医務室の様なところだった。
ポポたちによると、突然高波がネンスを襲い、そのまま包み込んで潰してしまったそうだ。それはどうやら僕の持っている“海の魔玉”の力らしく、それを境に僕はおかしくなって、ポポと“魔玉”を使い仲間までも襲おうとしたらしい。でも、途中で頭を抑えて倒れたので、皆で“夢の城”まで運び込んだのだと言う。
「佐々木君・・・もう、あんな事しないよね?・・・誰も殺そうと・・・しないよね?」
瞳が恐る恐る聞いた。
「うん、絶対しないよ。だってあれは僕じゃなかったんだから。」
僕が“海の魔玉”の事、それから力の化身の事を一部始終を話すと、瞳の顔から緊張の色が消えた。
「やっぱり、佐々木君じゃなかったのね。よかった・・・佐々木君が元に戻ってくれて。わたし、もう2度と・・・。」
瞳はそこまで言うと泣き崩れてしまった。きっと怖かったのだろう。
フレイヤがフェアリーの医者を連れて帰ってくると、僕は魔法による診察を受けた。医者は以上がないことを言うと“心帝”が王座の間で待っているとだけ伝えて帰ってしまった。
一行は部屋の外にいた執事に案内され王座の間へ向かった。途中、何人もの衛兵がいるのを見て、幸太郎は“心帝”がどんな人なのか少し不安に思っていた。もし怖い人だったらどうしよう。
「こちらが王座の間になります。」
執事はそう言って大きな樫の扉に手をかけようとした時、急に扉が開け放たれ、中から少女が飛び出してきて幸太郎に抱きついた。
「勇者殿ーーー!☆勇者殿がわたくしと同じ年の頃の少年だと聞いて、わたくしずっとあなたのご到着を心待ちにしておりました!」
幸太郎が呆然としていると、少女が頬にキスしてきた。幸太郎が慌てふためいて後ろを見ると、ポポは唖然と、フレイヤとガノンはニヤニヤと、瞳はムスッとしているのが見えた。
「陛下、勇者殿がお困りです!」
執事が鼻を押さえて少女を叱った。きっとさっき扉にぶつけたのだろう。
「へ・・・?」
それを聞いた幸太郎がまた唖然とすると、少女は我に返って幸太郎を放した。
「ヤダ、わたくしったらとんだご無礼を!」
少女は咳払いをしてこちらに向き直る。
「わたくしこそがこの“夢の城”を統べる現“心帝”、ファントム=クリスティーナ・ボルサリーノVIII世にございます。クリス、とでもお呼びくださいな☆」
「えぇぇぇええーーーーー!!!」
幸太郎は驚きのあまり叫び声をあげてしまった。
致命的なミスがあったので若干書き直させていただきました。これからはこんなことがないよう気をつけますのでご了承くださいm(_ _)m