十一章 魔玉の力
修正しないといけない部分が多々ありましたので、投稿し直させていただきます。
これからもSwitch!!をどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
リーナさんと幸太郎は穏やかなせせらぎの中に奔流を作りながら、猛スピードで水面まで上っていく。途中にいた魚たちは次々と逃げ出していったが、何匹かは逃げ切れずに幸太郎に当たった。リーナさんには当たらなかったので、幸太郎を背負ってさえいなければきっとその魚たちは後ろの奔流に飲み込まれるだけだったのだろう。
マル湖の水深60〜70mくらいの穴から出てきたはずなのに、5秒も経たないうちに水面までたどり着いてしまった。リーナさんの他の追随を許さない遊泳のおかげで、穴から出てきたときに感じた息が続かないかもしれないという不安は無駄になった。
「どう、速かったでしょ!?」
泳ぎながらリーナさんが言った。
「うん。でもリーナさん、よかったんですか?僕の目の前で・・・、」
リーナさんは自分であの鍾乳洞の中では他の種族とあまり関わってはいけないと言っていた。なのに僕の目の前で自分の名前を言った。これは掟に反するのではないのだろうか?
「おかげで追放されちゃったわ。でもあそこで私が名前を言わなかったら、あなたは1人でお仲間を探さなきゃいけなかったのよ?見たところ武器も持ってないようだし、襲われたらどうしようもない、だから放っておけなかったのよ。それに私、外の世界を自由に泳いで旅するのが夢だったの。じゃあ、今度は君の番よ。」
「あ、僕の名前は佐々木幸太郎です。」
それから僕は何度も何度もお礼を言った。リーナさんはいいと言ってくれたけど、それでも足りない気がした。
偶然にもポポたちは帝都の目の前に流れ着いていた。しかし、勇者である幸太郎がいない。その事に気づいたポポは探しに行こうとしていた。しかし、フレイヤは違った。
「なるほど、あなたは初めからこうするつもりだったのね。あなたほどの者なら船一隻くらい割れて当然。違うかしら、ネンス?」
「フレイヤさん、それってどういう・・・?」
ポポが驚いていると、ネンスはフレイヤを見たまま数歩後ずさった。
「おいおい、言いがかりは止せよ!確かに俺は“夢幻王”派だった。でもそれは昔の話だ。今は違う!今は・・・、」
「問答無用よ!」
フレイヤがネンスに攻撃しようとした瞬間、エルフの2人は河の上流の方から何かの気配を感じ取った。それはフレイヤが知っているどの速い物をも超えるスピードでこちらに向かってきていた。
「このスピード・・・もしかして人魚?」
人魚が人を乗せ、猛スピードでこちらに向かってくる。フレイヤはエルフのおそるべき視力で、乗っているのが誰なのか確かめた。
「あれは・・・幸太郎!?」
それを聞くや否や、ポポはそれに向かって全速力で飛んでいった。
「勇者様ーーー!」
「ポポ!」
ポポは幸太郎の頭につかまり、泣きながら言った。
「ボク、もう会えないかと思ってましたーーー!!」
「僕もだよ!本当に、会えてよかった!!」
リーナさんが岸に着くと、フレイヤが仲間との再会に気をとられている隙を突いて、ネンスが幸太郎に近づいてきた。
「ん?その手に持ってるのは何だ?見せてみろ。」
ネンスが“魔玉”に触ろうとすると、リーナが叫んだ。
「それに触らないで!」
ネンスが手を止め、リーナを睨む。
「私たち人魚が守り通してきた物を昨日私の仲間を殺した、あんたみたいな“夢げ・・・、」
リーナさんは言い終わらないうちに、一瞬で灰になってしまった。河が灰色に濁っていく。
「全く、言わなければ見逃してやったものを・・・これだから女というやつは・・・。」
そうか、リーナさんはこいつに・・・。
「ようやく本性を現したわね、“魔玉”に心奪われた裏切り者!」
誰か・・・こいつを・・・いや、
「仕方ねぇな、じゃあ皆まとめて灰になりな!!」
こいつを倒す力を・・・!
何でも俺にくれるか?
・・・!?あぁ、いいよ。何でもあげる!だから力を・・・!
なら俺の力を貸してやるよ。その代わりお前の体、少し借りんぞ。
突如、ネンスの背後から高波が襲う。そしてそれはネンスだけを包み込み、球の形を描いて空に浮かんだ。その後ろを一匹のコウモリの様な生き物が飛んでいく。
「これは、もしかして“海の魔玉”の力!?幸太郎、あなたもしかして・・・、」
驚愕するフレイヤをよそに幸太郎が不敵な笑みを浮かべた。
「悪いな、俺はあいつと約束したんだ。お前を殺すってな!」
「がは・・・!」
「ありがとう幸太郎、でも決着は私につけさせて。」
「無理だね。さっきも言ったように俺はこいつを殺さなくちゃならない。」
「!?・・・何言ってるの幸太郎?」
ネンスは何かを伝えようと必死に口を動かしている。
「・・・深海に沈め。」
幸太郎がそう呟くと、水の球は急激に圧縮されパチンコ球くらいの赤い塊になり、シャボン玉の様に弾けた。
本日は2話目もあります。