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38 ニートですが、責任はとります

 結局、なんやかんやでそのままやりまくり、さすがに疲れたたかしは赤沢の横で大の字になる。幸せそうな笑顔を浮かべた赤沢は、たかしの耳元でささやく。


「今日は危険日だった……。でも、後悔はない。ひょっとしたら、未来がない私でも未来を作れるかもしれないのだ」


 えぇ……。たかしは顔を引きつらせる。もちろん、ゴムなんか使ってない。ちょっと無責任、考えなしすぎないか。赤沢だけでなく、たかしもだが。たかしが配慮すべきだった。


 いやまぁ、一回ならセーフだろう。いきなり命中なんてするはずがない。今回は練習だったのだ。


 たかしは自分に言い聞かせるが、突然ナマポンが現れる。


「お二人ともお元気そうで何よりでェす!」


「何の用だよ……?」


 たかしは訝しむような顔をしてナマポンを見上げる。猛烈に嫌な予感がする。ナマポンはいつものように軽い調子で告げた。


「業務連絡に参りましたァ! でも、それどころじゃないみたいですねェ。いやあ、今回ので本当にできちゃってますよォ。おめでとうございまァす!」


 背筋が寒くなり、たかしは考えなしの行動を後悔する。しかし赤沢は心底嬉しそうな表情を浮かべた。


「ナマポン、それは本当か? 嬉しい! 私の中に今、赤ちゃんがいるんだ……」


 赤沢は愛おしそうに自分のお腹を撫でる。いやあ、まだ卵子のまんまなんじゃないかなぁ。今なら避妊薬飲めばまだ間に合うよ?


「この子は絶対に強い子に育つに違いない。いや、私たちで強い子に育てよう、黄山」


 赤沢はニコニコしているが、たかしは顔を引きつらせるばかりだ。ちょっとは現実見ろよ。明日死んでもおかしくないって自分で言ってただろ? 生き延びても逮捕待ったなしだぞ? 獄中出産する気か?


(ガキがガキを作ったようにしか思えねぇ……)


 たかしは頭を抱える。警察と怪人のダブルパンチで追い詰められているということから目を背けても、問題は山積みだ。たかしも赤沢も収入なんか全くのゼロである。今からたかしがバイトでも始めるのか? ニートだったくせに。


 赤沢の家族にも説明しなければならない。たかしは大事な娘を傷物にしたのだ。土下座したって許されないだろう。けれども情けないことに、赤沢の実家から援助を受けることなしに子育てなんてできるわけがない。


 たかしはふと妊娠して退学した高校の元同級生を思い出した。彼女はその後、いったいどうなったのだろう。彼氏や親と、案外仲良くやっているのだろうか。


 そもそも、高校時代の事件を思い出すこと自体が終わっているのだった。たかしの同級生は今、大半が普通に働いている。結婚し、子育てしている者も珍しくない。どうして二十歳を超えたたかしが、高校生のように悩まねばならないのだ。そのこと自体、おかしい。


 つけを払うときが来たということだろう。どんな顔をすればいいかわからない。でも赤沢が頼りない以上、たかしが何とかするしかない。


 たかしの心情を察しているのか察していないのか、ナマポンはニッコリと笑う。


「ちゃんと責任をとらなきゃいけませんねェ」


「そうだな、私はこの子を立派に育てる! それが私たちの未来だ!」


 赤沢は素直に受け止めて強く決意しているようだが、たかしは強いプレッシャーを掛けられている気分になる。ナマポンが言いたいことはただ一つ。たかしが死んで怪人たちを倒せということ。


「そうだな……。責任はとらないとな」


 たかしは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。赤沢を妊娠させた責任。母と妹を怪人にした責任。青松を殺した責任。たかしはナマポンに尋ねた。


「結局、業務連絡って何だよ?」


「ニート撲滅団の怪人二名があなた方を追って東京に来ましたァ! 今は大人しくしているようですが、明日には暴れ出すでしょうねェ」


「……わかった」


 たかしはベッドから降りて深呼吸し、服を着始める。備え付けのバスローブではなく、ここに来るまで着ていた普段着だ。指が震えて、ボタンをうまく留められない。それでもたかしは手を動かすのをやめず、どうにか服を着た。


 まだ全裸の赤沢は服を着たたかしを、不思議そうに眺める。


「今からそんな格好をして、どうしたのだ?」


 たかしはポケットから睡眠薬を取り出す。赤沢の部屋で失敬したものだ。


「おまえは、寝てろ。後は俺がやる」


「……? どういうことだ?」


 赤沢はわけがわかっていないようで、かわいく首を傾げる。赤沢はそれでいい。しばらくガキのままでいてくれ。


「き、黄山!?」


 たかしは水と睡眠薬を口に含み、赤沢の唇を塞ぐ。たかしは赤沢の喉に、睡眠薬をそのまま流し込んだ。


「な、何を飲ませた!?」


 赤沢は動揺するが、たかしは赤沢を寝かせて布団を掛けてやる。


「ほら、風邪引くぞ。暖かくしろ」


「黄山、何を考えている!? まさか、一人で……! だったら私も行く!」


「いくらヒーローになっても死んじまったら終わりなんだ。おまえは生きろ」


 しばらく赤沢は騒いでいたが、すぐに眠りに落ちる。さすがハルシオン。本当によく効く。


 赤沢が眠ってしまったのを確認して、たかしはナマポンに要求する。


「俺を外に出せ。……俺が一人で、ジュンと母さんを殺す」

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