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24 お金の流れは、その人間の本性

 赤沢が「まず私が戦って死ぬ!」と病気を再発させたので家に帰し、たかしは青松の家に行く。次は通帳を見つけて銀行だ。青松名義の預金を下ろして税金を払い、保険証をもらって医療費を払う。


 〈無職大将軍〉のことは考えたくもなかった。〈無職大将軍〉の件を忘れるため、たかしは家捜しに集中する。どんなに捜しても、通帳もキャッシュカードも見つからない。どこかに隠しているのだろうか。


 疲れてしまったたかしは、PCが置いてあるデスクの椅子に座る。ゲーミングチェアというやつだろう、長時間座っても疲れにくいプロ仕様のものだ。ニートのくせに何故こんな高そうな椅子を使っているのだ。プロゲーマーのつもりか。


「……」


 ふと気まぐれで、たかしはゴテゴテしたPCの電源を入れる。パスワード入力画面が出てきたので、たかしは試しにユーザーアカウント名をそのままコピーしてログインボタンを押してみた。認証に成功し、ログインできてしまう。


「マジかよ……」


 こんなパスワード設定で大丈夫なのだろうか。青松には悪いが、手掛かりを見つけるためPCの中を見せてもらおう。どこの銀行に口座を持っているのかだけでもわかれば、最悪現物が見つからなかった場合に市役所へ行く手間が省ける。


 たかしはメールボックスを開き、内容をチェックすることにした。通販でも使っていれば、口座振替で決済した記録が残っているかもしれない。新しい順にメールをチェックして、たかしは言葉を失った。


「何だよ、これ……!」


 そこにあったのは中国人と思われる業者との取引記録だった。なぜ中国人だと思ったかというと、メールの文面がたどたどしかったからである。


 取引しているものは、青松がやっていたと思われるネトゲのレアアイテムだった。青松はRMTリアルマネートレードをやっていたのだ。ざっと見た限り、ここ最近で急に羽振りがよくなって、総額三十万ほど使ってレアアイテムを買っている。


 ちなみに青松は売る方もやっていた。何がニートで収入はないだ。月数万レベルだが収入がある。役所で収入ゼロの税務申告をしていた記録が残っていたが、ひょっとしてこれは脱税に当たるのではないだろうか。月数万でも年間だと数十万の収入があったことになる。この高そうなPCその他周辺機器を経費にするなら差し引きゼロになるのかもしれないが、そんなに甘くないだろう。日用の範囲内とされ、却下されるオチが待っていると思われる。


 続いてたかしは青松がやっていたネトゲにログインしてみる。まず総プレイ時間を見てたかしは変な声を上げてしまう。


「二万三千時間!? なんだこりゃ……」


 一日十二時間やっていたとしても、五年を超える。無茶苦茶だ。それだけの時間があれば難関資格の一つや二つ、とれてしまうだろう。ネトゲの世界なら現実とかいうクソゲーで手にできない栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる仲間を手に入れることができたというのか。


 続いてたかしは細かい記録をチェックし、乾いた笑いを漏らした。ガチャ回数2512回。ガチャは一回五百円なので、総額で百二十万円を超える。ネットで調べてみるとガチャが実装されたのは一ヶ月前ということなので、青松はこの一ヶ月でRMTの分も合わせて百五十万円以上使ってしまったことになる。この分だと社会人時代の貯金はもちろん、ナマポンからの報酬も使い込んでいる可能性が高い。


 いや、いくら青松でも生活費くらいはとってあるかもしれない。虚脱感の中、たかしは通帳とカードの捜索を再開する。ユーサーアカウント名をパスワードにするようなやつが、きちんと通帳やカードを管理しているはずがない。絶対にこのPCの近くにあるはずだ。


 たかしはほどなくして通帳を見つけた。ゴミに紛れて机のすぐ下に放り出されていた通帳。残高は、三百三十四円。


「ハハ……。ほんとバカだよ、おまえ……」


 たかしは泣いてしまいそうだった。



 次の日の朝、たかしは自宅で市役所に行く準備をする。もはや銀行に行く意味はなくなっていた。青松は目覚めない。生活保護の申請を代行してやることだけが、たかしにできることだった。病院にも事情を説明しておく必要がある。順調にいけば半月ほどで生活保護の受給が開始され、未払いになっている医療費が支払われるだろう。


 正直やりたくない。ずっと家で寝ていたい。けれど、たかし以外に代理がいないので仕方ない。


 たかしが準備を終え、部屋を出ようとしたところでナマポンが出てきた。


「大変でェす! 敵の反応をキャッチしましたァ!」


「そうか……」


 たかしは死んだ魚の目でナマポンを見る。ナマポンは首を傾げた。


「どうしたんですかァ? あまりやる気が見られないようですがァ?」


「そんなことはないよ……。赤沢にも連絡してくれ」


 あまり赤沢には戦わせたくないが、今の状況だと仕方ない。二人で力を合わせなければ、勝ち目はないだろう。




 敵の反応があったのは、青松が入院している病院だった。病院にニートがいるのかと疑問に思ったが、青松がいた。敵は青松を狙っている。


 一ヶ所に留まっていると怪しまれるので、たかしと赤沢は病院の周囲をそれとなくぶらぶらして警護に努める。


「なぁ、知ってたか? 青松はネトゲでレア武装作るために百五十万くらい使ってたんだぜ? バカだろ」


 たかしは思い出したように赤沢に話しかける。赤沢はうなずいた。


「バカだな」


「そんなことしてて役所に生活保護の申請出してたんだぜ? どうしようもないだろ?」


「本当にどうしようもないな」


「そんなやつ、俺らが命張って守る価値あんのかな?」


 赤沢は立ち止まり、まっすぐなまなざしをたかしに向ける。


「でも、死ななければならないほどの悪人ではない。目が覚めたら、私と黄山で鉄拳制裁して、旧軍式の指導をしてやればいい」


「そう……だな」


 今は、赤沢の純粋さが救いだった。

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