表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/43

22 ニート、生活保護申請する

 というわけで、今度は税務課の担当職員同伴で福祉課の窓口に移った。これがたらい回しというやつか。本当にイライラするぜ。


 ひょろガリで気の弱そうな福祉課担当はやくざ顔の税務課担当と並んで座り、話を始める。


「え~、青松正男さんの生活保護申請というお話ですが……」


「ああ。今すぐ受付してくれ」


 たかしがそう言うと、福祉課担当は非常に言いにくそうに言った。


「……実は三ヶ月前に青松さん本人が申請を行ってるんです」


「えっ、じゃあ青松はもう生活保護を受けているのか?」


「いえ、そのときは申請を却下させていただきました」


「はぁ!? なんでだよ! 俺らがニートだからって、差別してるんじゃないのか!?」


「と、とんでもありません! そもそも生活保護というのはですね、無資産で働けない人しか受けられないものでして……」


 福祉課担当はくどくどと説明を始めようとする。遠回しに断られているのだとたかしは思った。いい加減たかしの堪忍袋の緒が切れた。


「じゃあ青松は受ける資格があるだろ! たらい回しにして回りくどいことしやがって! ふざけんなよ! 公務員だからって、俺らを見下してるんじゃないのか! だいたい、おまえら誰に食わせてもらってると思ってんだ! 税金で食ってるんだから、生活保護と一緒だろうが!」


 そもそも青松が税金を滞納していることを棚に上げ、たかし自身も税金など払っていないことを棚に上げ、たかしは怒鳴り散らす。税金で食っているといっても、仕事の対価として給料を受け取っている公務員と生活保護は全然違う。全く支離滅裂だったが、ブチ切れているたかしは気付かない。


「おい、黄山……!」


「今すぐ生活保護認定しろ! それがおまえらの仕事だ!」


 赤沢は制止したが、頭に血が昇ったたかしは止まらない。福祉課職員の胸ぐらを掴み、激しく揺さぶろうとする。しかしたかしの蛮行は即座にストップさせられた。


「落ち着いてください、黄山さん」


 福祉課担当の隣に座っていたやくざ顔の税務課担当が立ち上がり、たかしの腕をひねり上げて取り押さえる。


「離せ、コノヤロー!」


「これ以上暴れるなら、警察を呼びますよ!?」


 たかしは暴れるが税務課担当の丸太のように太い腕で押さえつけられ、動くことができない。後から知ったことであるが、この税務担当は警察OBで学生時代には柔道で全国大会に出場した経験もあるとのことである。たかしのように窓口で騒動を起こすバカがいるので、市役所は警察や自衛隊OBを職員に採用しているのだった。


「落ち着いて! ご友人のために話に来ているのでしょう!」


 税務課担当の言葉を聞いて、たかしは抵抗をやめる。税務課担当はたかしの手を離した。


「ここでは話ができないので別室に移動しましょう」


「すみません……。お願いします」


 たかしは従う他ない。たかしと赤沢は相談室と書かれた小部屋に移され、そこでもう暴力を振るわないという条件で話を継続する。


「……実は前回、申請を受けて調査をいたしまして。充分な預貯金があることが判明しているのです」


 福祉課担当はたかしたちに資料を見せてくれた。資料によると、青松名義の口座には百万ちょっとの預金がある。おそらく社会人時代に貯めていたものだろう。生活保護は全く財産がない人でないと受けられないので、これだけ預金があると無理だ。


 この預金の存在を知っていたから、税務担当も差し押さえという言葉を出したのである。むしろ、よく今まで差し押さえされなかったものだ。仕事がないからと青松が言い訳したので待っていてくれたらしい。


「前回は預貯金に加えて本人に働けない事情もなかったので、生活保護は開始できませんでした。今回、青松さんが事故で入院中ということなので、資産がもうないということであれば生活保護を開始できます」


 まずは本人の資産で治療して、尽きれば生活保護受給開始。生活保護を受けていれば医療費は無料になるので、医療費の心配はなくなる。


 ちなみに生活保護を受けても、今まで滞納していた税金が免除されるわけではない。なのでまずは青松の預金で税金を片付けて残りを医療費に充て、尽きてしまえば生活保護という流れになる。


 多少は使っているかもしれないが預金百万円+ナマポンからの報酬が残っているはずなので、滞納整理した後でもしばらくは保つ。その間に青松が目覚めれば、本人に身の振り方を決めさせよう。青松の意識が戻らなかった場合は、たかしが生活保護申請を代行するしかない。


「……わかりました。銀行を当たってみます」


 市役所サイドとの話はまとまり、たかしと赤沢は市役所を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ