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17 よかれと思ってやったこと、大抵は裏目

「私が来たからにはもう安心だ! 変身!」


 無意味に自信満々な赤沢は時計の針を逆向きに回し、変身する。


「終わらないたった一人の受験戦争! 私が受からないのは在日が悪い! ルサンチマンの戦士、ネトウヨレッド!」


 まぁいい。今は猫の手も借りたい状況だ。たかしは赤沢に指示した。


「赤沢、こっちを頼む! 俺が青松を助ける!」


「承知した!」


 赤沢はたかしのところに駆けつけ、固有武器を召還する。


「愛国無罪ソード!」


 ちょっと待て。愛国無罪ソードは今、青松が使っている。この場合、どうなるのだ。


 最悪の答えが出る。デモシカシと打ち合っていた青松の愛国無罪ソードは消失し、赤沢の手に愛国無罪ソードが出現した。


 戦闘中にいきなり武器を奪われた青松はひとたまりもない。防御することさえできず、デモシカシの豪腕をまともに受ける。


 青松は数発のジャブを立て続けに受けてふらついたところを、アッパーでぶっ飛ばされた。青松はダメージを喰らいすぎて変身が解け、生身のままコンクリートの壁に叩きつけられる。


「ガハッ……!」


 青松は口と鼻から血を流し、倒れる。受け身をとる素振りさえ見せなかった。たかしにでもわかる。あれはかなりやばい倒れ方だ。青松は腕をぴくぴくと痙攣させる。


「あっ、あああああっ!」


 赤沢は大きすぎる判断ミスに頭を抱え、変な声を出してうずくまる。


「赤沢、しっかりしろ! 畜生ォォォォォ!」


 たかしは赤沢に家事手伝いアローを押しつけ、青松にとどめを刺そうとするデモシカシの元に走る。もうヤケクソだ。巨大化されたらたかしが死ぬのだとしても、今デモシカシをやれなければ青松が殺される。


 なんとか赤沢は立ち上がり、ムダメシンと剣を交えて引きつける。ここでニジヨメンがデモシカシを守るために動いた。たかしの周囲で小さな爆発が起こる。地下での爆発はたかしが予想していた以上に影響が大きかった。柱やらエスカレーターが崩落し、たかしは床を転げる。


 ダメージ蓄積が限界突破し、スーツが消失した。大丈夫、たかし自身は無傷だし自主休講アックスは消えていない。たかしは生身のまま歩みを止めず、デモシカシに向けて突っ込んだ。ほとんどマスクが剥がれ、中年男の素顔を晒しているデモシカシの胴に、たかしは自主休講アックスを全力でぶち込んだ。


 スーツの補助がないたかしの一撃は非常に弱々しいものだったが、デモシカシは青松を倒したときに力を使い果たしていた。デモシカシは頭からコンクリートの壁に倒れ、血まみれになりながらふらつく。


「らぁぁぁぁッ!」


 たかしは返り血を受けて生身のまま血まみれになる。まだデモシカシには息がある。たかしは興奮のままに掴みかかり、デモシカシの首を締める。マスクが半分剥がれた中年のおっさんの顔はみるみる青くなり、やがて泡を吹いて絶命した。


「ハァ、ハァ、ハァ……!」


 やってしまった。これでデモシカシが強制細胞増殖剤を打たれて巨大化すれば、たかしの命で〈無職大将軍〉を動かすしかない。何としても強制細胞増殖剤を阻止しなければ。


 たかしは険しい表情で後ろを振り向くが、戦闘どころではなくなっていた。本格的に駅の地下プラットホームは崩壊を始めていたのである。たかしは変身が解除された生身の状態で、落ちてくる建材を避けつつ倒れたままの青松を助けなければならない。はっきり言おう。無理だ。


 たかしは恥も外聞もなくおろおろしながら叫んだ。


「た、助けてくれ、赤沢!」


「当たり前だ!」


 赤沢はたかしと青松を抱えて駅地下を脱出する。

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