13 代償
たかしたちは〈無職大将軍〉を山の方に戻してから飛び降りる。〈無職大将軍〉は光に包まれ消えた。また秘密基地に転送されたのだろう。
たかしたちは周囲に人がいないのを確認してから変身を解いた。
「一時はどうなることかと思ったけど、何とかなってよかったな」
「そうだね……。どうにかなってよかった」
たかしの声に青松が応える。青松もホッとした様子だ。
途中から様子がおかしかった赤沢は、またも暗い顔でうつむいていた。たかしは赤沢にも声を掛ける。
「そんな顔すんなよ。勝ったんだからよかったじゃねぇか」
「そうだよ! 勝ったんだから! 私たち、がんばったでしょう?」
赤沢の手を握り、白鳥はニッコリ笑う。たかしも笑った。
「そうだな、白鳥が一番がんばった!」
「だよね~! 私、がんばった! イエ~イ!」
「イ、イエ~イ!」
白鳥はたかしにハイタッチを求めてきた。たかしがおずおずと両手を挙げると、パンと勢いよく白鳥はハイタッチする。バカな大学生みたいなノリは苦手だが、白鳥が相手ならやっていいような気がした。ちょっといい臭いがする。やばい、興奮しちゃったかも。
赤沢は冷めた目でたかしたちを眺めながら、ぼそりと白鳥に尋ねた。
「……体は何ともないのか?」
「う~ん、ちょっと疲れたかなぁ? でもこれくらい、お風呂に入って寝れば治るよ! さ、帰ろ!」
そう言って白鳥は先頭に立って駆け始める。たかしは苦笑して白鳥を追いかけた。
「おい、待てよ!」
この調子で、全ての怪人を倒せればいい。そうすれば、たかしはヒーローだ。主人公だ。きっとこれからの人生、全てうまくいくに違いない。目の前にあるのは、薔薇色の未来だけだ。
慌てすぎたのか、たかしの前で白鳥は派手に転倒する。
「おいおい、なにやってんだよ」
たかしは白鳥を起こしてやろうと手を差し出す。いきなり体に触れたらセクハラになるかもしれないので、手を掴んだりはできなかった。ニートにはその辺の距離感がわからない。
しかし白鳥は差し出されたたかしの手を掴もうとはしない。
「おい、白鳥?」
白鳥は、ピクリとも動かない。糸が切れたマリオネットのように、ただ静かに地面に横たわっているだけだ。
「白鳥、何の冗談だよ……?」
動かない白鳥の傍らでたかしは立ち尽くす。後ろから青松が血相を変えて走ってきて、白鳥の肩を揺すったり名前を呼んだりする。白鳥は動かない。
「心臓が止まって息もしてない! 俺は心臓マッサージするから赤沢さんは人工呼吸を! 黄山は救急車呼んでくれ!」
目の前の光景が信じられない。悪夢を見ているようだった。
「残念ながらこれは現実なんですよォ」
ナマポンが他人事のように言ってから、姿を消した。




