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12 戦隊の花は巨大ロボ戦!

「さぁ、呼んでください! 〈無職大将軍〉を!」


 なんだそのネーミングは。カクレンジャーの〈無敵大将軍〉に喧嘩を売ってるのか。


「赤沢さんの発案でェ、和風にすることが決定したのでェェェェェす!」


 いや、まあいいけどさ。忍者とか侍とか、和風戦隊って結構多いし。初の戦隊ロボであるバトルフィーバーロボも和風だし。


 白鳥は出現したガラケーで、いずこかに電話を掛けた。


「もしもし、白鳥です。〈無職大将軍〉さん、来てください!」


 刹那、空が光った。そして巨大ロボットが空中に出現し、軽業師のようにたかしたちの前に飛び降りる。


 ネーミングのとおり、〈無職大将軍〉は和風モチーフのロボだった。


 モデルにしているのは真田幸村の鎧なのだろう、兜からは鹿の角のような形の飾りが突き出ていた。浪人時代が長かったので真田幸村なのだろうか。でも幸村は真田紐を売って、ちゃんと仕事してたぞ。それとも大河ドラマに影響されたのか?


 当世具足のイメージで全身を覆っている装甲は真っ赤で、赤備えを完璧に再現。さらに背中には崩し字で「無職大将軍」と達筆に書かれた赤ののぼりを背負っている。よくわからないがもの凄い迫力だ。


 大きさは巨大化したメンドクサーイとほぼ同じだった。最近の戦隊ロボはゴテゴテ合体しすぎて怪人より大きくなりがちだが、きっちり調整したらしい。


「その携帯電話で白鳥さんのニート力を増幅して〈無職大将軍〉を転送したのでェす! さぁ、乗り込んでくださァい!」


 〈無職大将軍〉はたかしたちの前に跪く。ナマポンに促され、四人は胸にある搭乗口から〈無職大将軍〉に乗る。


 コクピットは、何やらバラエティ番組のセットのようだった。四色のひな壇が並び、固有武器をセットするようになっている。前面のモニターには外の様子が映るようになっていて、視界を確保していた。


「皆さん、武器をセットしてくださァい!」


 ナマポンの言葉に従い、たかしたちは目の前のくぼみにそれぞれの固有武器をはめ込む。続いてナマポンは白鳥に指示した。


「白鳥さんは、携帯電話もセットしてくださァい! そうすれば動かせまァす!」


 白鳥が携帯電話もはめ込むと、上からゲームのコントローラーのようなものが降りてきた。これを使って操作するということらしい。


「えっ、何これ!? 私、わかんないよ~!」


 コントローラーを持たされた白鳥はテンパる。あんまりゲーム等をしたことがないらしい。


「左の十字キーで移動して、右のボタンで攻撃だ! 貸してみろ!」


 たかしは白鳥からコントローラーを引ったくり、ガチャガチャと動かす。しかし〈無職大将軍〉はウンともスンとも言わなかった。


 何が楽しいのかナマポンはコクピット内をクルクル回る。


「ダ~~~メですよォォォォォ! 白鳥さんのニート力で動かしているので、白鳥さんしか動かせないのでェェェェェす!」


 〈無職大将軍〉を動かすには莫大なニート力が必要だ。そこで〈無職大将軍〉は敵から剥がれたニート撲滅マスクの部品を利用して、極限まで搭乗者のニート力を増幅する機構を作成し、組み込んでいる。


 ところが一度ニート戦隊の攻撃を受けたニート撲滅マスクは、四人のニート力に当てられて変質してしまっている。特に、とどめを刺されたときに受けたニート力の影響が強く、最後に攻撃した者の色に染められているため、他のニート力を増幅できなくなっているのだ。


 つまり怪人体のときとどめを刺した人間しか〈無職大将軍〉を動かせないということである。


「じゃあ俺らが乗ってる意味なくね?」


 たかしはマスクの下で憮然とした表情を浮かべる。五人乗りの戦隊ロボで主操縦者以外が何をしているのかは気になっていたが、まさか何もすることがないとは。職場で何もさせないというのは、立派なパワハラだぞ。


「ニートらしくていいじゃないですかァァァァァ!」


 全く意味がないわけではなく、白鳥以外のニート力も使ってはいるそうだ。気休め程度にはなる。


 メンドクサーイは動きだし、剣で〈無職大将軍〉を斬りつける。


「うわああああっ!」


「キャアアアッ!」


 コクピットが大きく揺れ、胸の装甲から火花が散った。ひな壇前の机に必死に掴まりながら、青松が叫んだ。


「白鳥さん、とにかくボタンを押すんだ!」


「う、うん!」


 青松の指示通り、白鳥はボタンを適当に押す。〈無職大将軍〉は斬られながらパンチを繰り出し、メンドクサーイを突き放した。


「その調子だ!」


「えいっ!」


 青松の声に乗せられ、白鳥は次々とボタンを押す。〈無職大将軍〉は前進してメンドクサーイにローキックを見舞い、メンドクサーイの動きが止まったところでジャンプしてから腰の刀を抜いて殴った。赤のボタンがパンチ、青がキック、黄色がジャンプで白が抜刀ということのようだ。


 幸い、戦いは山の方で始まっているので民家等を踏みつぶす心配はあまりない。無茶苦茶に戦っても、ある程度は大丈夫だろう。


 だが、敵も大人しく殴られ続けるわけがない。メンドクサーイは角を突きだし、剣を振るって反撃する。いくら装甲が厚くても、こんなのが続けば耐えられるわけがない。


「クソッ、盾か何かないのか!?」


「ないですねェ」


 たかしはナマポンに尋ねたが、ナマポンはすげなく首を振った。和風でもバトルフィーバーロボは盾を持っていたが、それは胴体デザインが西洋の騎士というミックスだからである。純和風の〈無職大将軍〉は刀を両手で持つため、盾を持つことができない。刀で敵の攻撃を払うという戦い方をしなければならないが、白鳥には難しすぎる。


「だったらナマポン、必殺技か何か、あるだろう!?」


 青松がナマポンに尋ねる。防御ができないのなら、やられる前にやるしかない。ナマポンはうなずく。


「コマンドリストをモニターに表示しましたァ! 参考にしてくださァい!」


 モニターの一角に複雑なコマンドリストが表示される。強そうなものは全て、十字キーとボタンをフルに使ったものばかりだ。格ゲー経験者でもない限り一発で成功させることはできないだろう。どうしてこんなシステムにしたのだ。


「ロボットを動かすソフト開発の手間を省くために、ゲームから流用したんですよォォォォォ! 皆さん得意そうですしねェ」


 たかしや青松なら問題なくやれただろうに、よりによって今回は白鳥だった。青松は白鳥に指示を出し始める。


「上方向と赤ボタンを同時に押して! 次は右、青、赤の順!」


 必死に目の前のコントローラーを見て、白鳥は〈無職大将軍〉を動かした。白鳥は全くモニターを見ていないが、そこも青松が指示してフォロー。とにかく攻めて、ペースを握り続ける。


 どうもメンドクサーイの動きが鈍い。足下を気にしているようだ。まさか人だったり民家だったりを踏みつぶさないように気をつけているというのか。


「そりゃあ、気をつけるでしょォ! 相手の狙いはニートだけなんですからァァァァァ!」


「あ、なるほど」


 ナマポンの言葉でたかしは納得した。ニート撲滅団の目的はニートを撲滅することである。一般人に被害を出してはいけないことになっているのだろう。だから警官たちを傷つけたときも苦しんだ。


「よっしゃ、そのままイケイケドンドンでやっちまえ!」


 たかしも拳を振り上げて白鳥を応援する。周囲への被害を抑制しながら戦わなければならない、などという縛りはこちらにはない。外道ではあるが何よりまず勝たなければならないのだ。ニートたちの未来のためなのでリア充が二、三人死んでも仕方ない。


 白鳥がたかしの意図に気付けば憤慨しそうだが、白鳥はコントローラーだけに集中している。青松はもちろん気付いていて、それとなくメンドクサーイを市街地の方向に誘導していた。


 メンドクサーイは住宅街を背にして、いよいよ戦えなくなる。ここで青松は大技の使用を指示した。


「右下右下黄左上左上白赤青赤青だ!」


「わかった!」


 白鳥はうなずき、コマンドを入力する。〈無職大将軍〉は必殺技のモーションに入り、ロボ戦になってから空気化していた赤沢も含め、全員が必殺技の名を叫ぶ。


「「「「無職両断! 豪炎唐竹割り!」」」」


 〈無職大将軍〉の刀が豪快に燃え上がる。〈無職大将軍〉は炎を帯びた刀をまっすぐメンドクサーイに振り降ろす。メンドクサーイは縦に真っ二つとなって炎上し、灰へと帰った。

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