出会い
ヤバイこの何このクソババァー、宇宙人に脳みそ改造でもされてんじゃ~?
それとも、このクソババァー超能力でも開花させたか!!
いや、もしやサイボーグか!!
「お前の考えなんて、顔見てりゃ~すぐに判るんだょ!!」
「私は甘く無いよ!!今月中に4ヶ月分の家賃払わなけりゃ~出てって貰うからね」
「はい…何とかします…」
来た時と同じ様に威圧感を残して帰って行った。
「はぁ~家賃何とかしなきゃなぁ…」
金子こと、ババァーとの出会いは、俺がまだ19歳の頃…
高校卒業して、両親が事故で死に、頼れる親戚もおらず、高校時代の連れが働いていたホストクラブで、住み込みホストをやってた時の頃だ。
いや、正確にはホストクラブを辞めた後か…
そこそこ顔が良かった俺は、客つきも良く調子に乗っていた。
そんな時、客の取り合いで先輩と揉めて、殴り合いの喧嘩の後ホストを辞めた。
「こんな所辞めも、どうにかなるさ」そう気楽に思っていた俺は、自分の考えの甘さを知る事になる。
俺が働いていたホストクラブ「rain」のオーナーは、その世界では知らない人は居ない程の人物で、そんな人の店を揉めて辞めた俺を雇う店は無かった…
オーナーが最後に俺に言った台詞。
「お前は表面しか物を見れない、商売人だな。」
はぁ?意味わかんね~よ…その言葉を飲み込み、俺は黙って店を立ち去る。
行くあても無い俺は、何人かの客の女達の所に転がりこんだ。
みんな最初は何日か住まわしてくれたが、日が経つにつれ、どの女も俺に、冷くなっていく。
「夏輝君って、中身ないね」
「顔が良いだけじゃ~ねぇ?謝って店に戻ったら?」
結局、女達は俺はホストの俺だから、価値があるんだと…ホストでなくなると、俺の価値はないと…
そう遠回しに言われてる気がした。
女の所にも俺のいる場所は無い。
俺は女の所を出た。
もうどこにも行くあてなど無い。
気付くと街を4日間程さ迷っていた。
頼る人も居ない、金も無い…
このまま、ホームレスか犯罪者になるか…
野垂れ死にも良いかも…どうせ価値の無い俺…
どうなっても構わない。
そんな事を思いながら、4月のまだ肌寒い季節、夜の公園のベンチで佇んで居た。
「何してんだい?」
不意に後ろから声を掛けられて振り向くと、一人の老婆が立っていた。
「え?あぁ、まぁ…」
金が尽き2日程食べていなかった俺は、力無くそう答えた。
「良い若いもんが、死にそうな顔して、まったく!!」
「とりあえず家にきな!!」
老婆はそう言ってスタスタ歩きだした。
そのまま、老婆の後ろを歩いて行った。
一軒家に老婆が入って行く。
「さっさと上がんな!!」
老婆に促されるまま、俺は家に入って行った。
「お腹減ってるんだろ?」
無言で頷く俺。
「先に風呂入っておいで!!臭いし、汚い。」
老婆はそう言って俺を風呂場に追いたてる。
久しぶりに暖かい風呂に入り、俺はホッと溜め息を漏らす。
風呂から出ると、老婆が「あんたの汚い服洗うから、
じいさんの服着てな!!」
そう言って下着とパジャマを渡してきた。
「ご飯出来てるから、早く来なよ」
つかつかと居間に戻って行く老婆…