二走目
「今日の夜、1時半全員集合な!」
帰りの会終了後、先生が居なくなったのを見計らって久我ちゃんは言った。
明日は土曜日だから丁度良い機会なんだろう。
「あ、美術部も参加していいかな?」
真由は久我ちゃんに問う。
「別に良いよ。」
あっさりとOKを貰えたので驚いた。
「じゃあ未来ちゃんと百合達に連絡しとく。」
「よろしく。」
俺は不安で仕方なかった。
「もうそろそろで…行かなきゃな…。」
時計を見ると1時20分だった。
俺は清めの塩、御守りに夕方寺で貰った札を沢山持った。腕時計を身に付ける。
「有紗、そろそろ行くぞ?」
「待ってよ杏理。俺も清めの塩とか持ってくから。美術部員全員分のお守りも。」
有紗は俺の姉で美術部員の1人だ。
有紗も肝試しに行くことになってる。
俺達は気が乗らない学校に向かった。
1時半
「よし、揃ったか?」
学級委員である終と明梨は男女数が合うか、確認している。
「よし揃ったな。久我ちゃん、ルール説明して。」
久我ちゃんは前に出てルール説明を始めた。
「ルールは基本鬼ごっこと同じだ。範囲は学校の中。外に出たら負け。あ、あと音は幽霊に見つからないように立てない方が良い。幽霊は目が見えないから、耳で聞いて反応するからな。」
久我ちゃんがそう言うとみんな頷いた。
ルール説明が終わった後、美術部員にお守りを渡した。
「そろそろだ。皆準備は良いか?」
皆肯定の声を上げる。
「よし。時間は3時間、誰が残れるかな?」
そう言った久我ちゃんの顔は一瞬不気味だった。
「5秒前…4、3、2、1…開始だ。」
皆は校舎内に入っていく。
俺と有紗、百合、未来、そして親友の北島朝海と果鈴と行動することにした。
俺達は本当に小さな音を立てる。
「わふ〜いっ!!鬼さんこちら手の鳴る方へ♪」
馬鹿みたいにはしゃいでるのは、イラッとする馬鹿の岡山陸だ。
「へいへいへいっ!!あそれそれっ!!」
「祭りかよったく…。」
俺は呆れて陸をみた。
「おい、陸うるさ…。」
俺が注意しようとした時だった。
「!?」
目の前に血飛沫が上がった。
陸はスローモーションに倒れた。
何が起こったのか分からない。
「な、なんで…?」
目の前で陸は…
死んだ。
「杏理…何が…起こったの?」
真由の声が震えている。
そこにいた美術部員は立ち尽くす。
何故陸は死んだ?
朝海は陸に近づいてしゃがんだ。
「…肩から腰まで傷ができてる…それと…腕の脈と首の脈を切られてる…。」
陸は目を開いたままだ。
朝海は陸の目を閉じさせた。
「袈裟斬り…か…。」
確か斜めに切られることを袈裟斬りと呼ぶはず。
アニメか漫画で見た。
「…この遊び危険だ…空気が悪いし…気持ち悪い…。」
朝海は霊感が強いほうだ。俺と有紗も朝海の影響で霊感が少しある。
一瞬見える程度で本当に弱いが…。
「帰りたい…。」
泣きそうな声で真由は言った。
「真由…大丈夫…頑張ろう?」
果鈴が真由を慰めるように頭を撫でた。
「皆…生きて帰るぞ。死ぬなんて許さない。」
俺が言うと皆強く頷いた。
みんなで帰るんだ。
生きて帰るんだ。