魔王と書いて引きこもりと読む!
申し訳ありません、八割方テンションと衝動で書きました。
「コモリ様!コモリ様!」
朝から自室のドアを叩く音が部屋に鳴り響く。
「むー・・・眠い」
「コモリ様、ドアを開けてください!」
俺は眠いんだ。この安眠は何人たりとも邪魔はさせてなるものか!
「失礼します」
バァン!
「え?」
「おはようございます、コモリ様。本日はお日柄もよく、絶好の仕事日和ですね」
一人のメイドが何気なく俺の自室に入ってくる。
「では本日の予定を確認させていただきます。まずは各地の魔王様達との会談、次は各軍部の予算の見直し、次に地下倉庫にある大量の呪いの武器の封印解除、呪いの仕様変更。昼食を取った後に」
「待て待て待て待て」
「何か、問題点でも?」
「問題だらけだコラァ!!言ったろ、俺は魔王じゃないし、魔王になったつもりもない!!俺は引きこもりだってずっと前から言ってただろ!!そして何より俺が許せないのは・・・」
「許せないのは?」
「ドアを蹴破って入ってくるな!!俺の貴重な宝物が壊れたらどうしてくれるってんだコラー!!」
朝から俺の怒号が部屋に鳴り響いた。
申し遅れたな、俺の名は日蔭小守。元日本人だ。今現在は名前をコモリって改名している。何故なら・・・
「全く、コモリ様・・・」
「何だ、その可愛そうな物を見る目は」
「いえ、これが宝物・・・なのですよね?」
「ああ、そうだ。それは俺の究極の宝物の一つでな、Fa○eのブルーレイだな。いやぁ、それにしても今回のUB○、凄くよかった。やっぱUf○版だよな」
カパ・・・バキッ
一つのディスクが箱から取り出され一人のメイドに粉々に握り潰された。
「て・・・・・」
「ああ、申し訳ありませんコモリ様。ついうっかり」
「てめええええええええええ!!!何がウッカリだ!俺の宝物粉々にしやがって!!てめえの心臓ハートキャッチしてやろうか!?」
「はぁ・・・」
「この「やれやれ」感が余計にむかつくぅぅぅ!!」
「どうせまた創るでしょうに・・・」
「うるせええ!!」
俺は泣きながら手に魔力を集める。そして2秒程度もすれば俺の手の中に一枚のディスクが握られていた。
そう、俺がいるのは日本どころか地球ですらない、異世界だからだ。
「うっうっ・・・ごめんよ、俺のダメイドがとんでもないことを」
俺は泣きながらF○teのブルーレイに謝る。
「ダ・・・」
ダメイドが何やらプルプルと震えているが知ったことか、お前がやらかしたことはそれだけ重いんだよ!
「ハァ・・・。よっこいしょと」
「コ・・・コモリ様、何を?」
「ああ?故郷に帰る」
「故郷へ?でもここがコモリ様の城で・・・」
「ここは確かに俺の城だ、聖域だ、誰にも侵されることのない俺の楽園だ」
「・・・コモリ様、何を」
ウイイイン
俺は机の上にあるパソコンを起動し、ディスクを入れる。
「だが俺の故郷はのん○んだ、異論は認めない」
あ~、癒されるなぁ・・・ここでは仕事しなくていい、グータラ生活、いくら不健全な生活を続けても太らない。うん、やっぱここ天国だろ。
俺は一度日本で死んでいる。原因はなんてことなかった、単なる交通事故だ。ただ運転手が薬をキめてたらしくてその運転に俺が巻き込まれたってわけだ。そりゃ確かに死んだら天国行くのかなぁとか地獄は嫌だなぁ、とかは思った。残してきた両親にも申し訳ないとは思った。だが俺は昔から切り替えが異常に早かった。どんなにへこんでも一日寝れば治った。起こってしまったことはしょうがない。あるがままを受け入れて、そこからどうするかを考えればいい、それが日蔭小守の信条だった。
だが何の因果か知らないが俺は生まれ変わった。いや、これは異世界転生ってやつなんだろう。
発言から見て分かる通り俺は日本のサブカルチャーが大好きだった。アニメから始まりゲーム、マンガ、ラノベ・・・全て好きだった。勿論一次小説だって読んでいた。一次小説には大きく分けて4通りがある。
一つは異世界転生物。これは異世界に主人公が何かのはずみで転生してしまうものだ。大体は前世の記憶持ったままだったり途中で前世の記憶を思い出したり。転生中には何か理由があって神様にチートもらったり気づけばチートだったり強さにも様々なパターンがある。俺のはこのタイプ。
一つは異世界転移物。これは主人公が異世界に転移してしまって勇者様!とか言われて勇者になって悪の魔王を倒してハッピーエンド。大体はお姫様と結婚したりハーレム作って仲良く幸せに暮らしたり、日本に戻ったりする。
一つは集団異世界転移物。これは最初の異世界転移物の亜種のようなもので主人公のクラスメイト達と転移させられて勇者様!パターン。大体は主人公は虐められてて異世界行ってもスキルやら魔法やら持って無くて無能扱いを受けるが基本チートになる。チートのなり方はそれぞれの作品によりけり。
一つは元々異世界物。これはラノベに近く、その世界オリジナルの設定や物が多々出てくる。これは結構多岐にわたる。元々チートだったり、無能だけど一転あってチートになったり、努力して強くなったり、様々だ。
まあ少し路線がズレたが俺は一つ目に説明した異世界転生した。チートもばっちり持っていた。気づけばチートでしたパターンだな。それで俺のチートはと言うと・・・
「のど乾いた」
パチンッ
指を鳴らせば手元にはあの有名な某炭酸飲料、ゼロだけどね。俺、ゼロの方好きなんだよ。
このように魔法でとにかく何でも創る事が出来る。それは最強の兵士だったり、魔獣だったり、とにかくなんでもだ。俺はこの力を利用し異世界に転生した当初、そりゃやりたい放題した。転生した時は貧弱な魔物だった。だからまずは護衛の最強兵士作って警護させて、辺り一帯更地に出来るスイッチ作って更地にして、城建てるスイッチ作って、絶対に壊れない城とか作ってたね。んで気が付いたら魔王とかに任命されてしまっていた。何でも、いきなり魔界に城が現れたとかで各地の魔王が攻め込んできたらしい。しかしそこは俺の想像で作られた城、破られるはずもなく最強の兵士10体に魔王は蹴散らされた。しかしこれでは諦めず何度も何度も攻め込んだが結果は惨敗、一度も俺の姿を視認出来ずに結局魔王達は諦めたらしい。因みにこの当時、俺は食って、寝て、アニメ見て、ゲームして、ラノベ読んで、遊びつくしてた。そしてここに転生して体感半年後、ようやく城から外出する。ちょっと自分が住んでる所がどういうところかようやく見てみたくなったのだそして城から外に出てみると・・・
「!?」
「あいつか!?」
「出てきた、出てきたぞ!!あいつがこの城の城主だ!!」
ダッシュで引き返しました。そりゃ家出てみていきなり鬼やら豚顔したやつやら全身緑色のやつやらが城の前にぎっしり集まってるの。そりゃ逃げない?
結果 コモリ初の家から異世界外出時間2秒と少し。
「コモリ様・・・」
先程までプルプル震えていたダメイドが遂に笑顔を浮かべていた。でも、何でだろう。笑顔なのにすっごく怖いの。腰までスラッと伸ばした銀の髪に琥珀色の瞳。顔の造形は美の神が手ずから粘土で作ったような美しさがある。ちなみにこのメイドはメアリ、という。
メアリと出会ったのは偶然によるところが非常に大きい。
ある日とあるアニメの影響でバイクに乗りたくなってかっ飛ばした時があった。勿論玄関からは出ず、裏口から出てね。そして初めてバイクに乗ってテンションが上がって結構飛ばしてた。その時にとある廃村に入ったようで少し停車して見て回ろうと思った。何かあったら全力で逃げに徹せばいい話だしね。その廃村は廃れてから大分経ってたみたいで幾つもの瓦礫が目についた。
数ある瓦礫の中に一人の少女が蹲っていた。最初は触らぬ神に祟りなし、と思い無視してまたバイクでツーリングをしていた。気の済むまでバイクはかっ飛ばせたのでそろそろ帰ろうと思い帰路につこうとした時、蹲っていた少女を思い出した。本当はそのまま帰る事が出来たが、気になって仕方なく見に行くことにした。今思えばこの時の俺は会話に飢えてたのかもしれない。
廃村の瓦礫の中に蹲っていた少女はまだ蹲っていた。
「あの・・・大丈夫?」
「・・・・・」
ファーストコンタクト、失敗!しかし諦めてなるものか、もう一声!
「えーっと、どうしたの?」
「・・・・」
セカンドコンタクト、失敗!
「お父さんやお母さんは?」
「・・・・お父さんとお母さん、帰ってこないの」
お、サードコンタクトは反応が微弱ながらあり!
「帰ってこない?」
「うん・・・」
うーむ・・・情報が少なすぎるなぁ・・・あ、作ればいいんだよ、相手を知る道具を。そして俺は一つ指を鳴らすと某有名な漫画に登場した戦闘力を図るあの機械が手にあった。少し仕様は変わってるけどね。
「ふむふむ・・・」
見てみた所、簡単に言うとこの子の両親は死んでいる。昔あった戦争に行って、戦死している。どうやらこの村は子供がこの少女しかいなくて村全員の奴らは戦争に駆り出されて戦死ってことか。ていうか相当前の話だぞ、これ。十年ほど前からこの子の両親は死んでるのか。
「何で、何で帰ってこないんだろ・・・」
「ん~・・・」
言っていいものか・・・ま、言っちまうか。
「君のお父さんとお母さん、死んじゃったよ」
「!?」
そう言った瞬間少女は俺に飛びかかってきた。逃げようと思ったときにはもう遅い。俺は少女にマウントポジションを取られる。
「何で!!何でそんなこと言うの!?」
「・・・」
「お父さんとお母さん、帰ってくるもん!絶対帰ってくるって言ってたもん!!」
少女は涙を流しながら俺の胸を叩く。あんまし力ないけどな。
「いや、死んでるって」
俺ははっきり言う。こういうのは下手な気休めを言うよりハッキリ物事を言った方がいい。
「う・・・うあああぁぁ」
少女は俺の胸の上で泣き崩れてしまった。
俺はマウントポジションを取られて動けないため動くに動けない状態だ。まあこれ以上襲ってくる雰囲気ないし、いいか。
それから1時間くらい泣きじゃくって落ち着いたのかようやく胸の上からどいてくれた。
「もういい?」
「あ・・・、あのすみませんでした」
「いいよ、別に怪我させられた訳でもないし」
「・・・」
「さて、じゃあ俺は帰るよ」
「あ・・・はい」
少女の表情は未だ晴れない。これからの不安で一杯ってとこだな。
「・・・」
「・・・」
お互いに無言。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「はぁー・・・」
「っ」
少女はビクっと体を竦める。しかし思いついてしまった以上しょうがない。乗りかかった船ってやつだ。
「一緒に来るか?」
「え?」
「別に大したこと出来ないけど、飯と服と住処くらいは準備出来るけど、来るか?」
「は、はい!」
その時に微笑んだ少女の笑顔を俺は未だ覚えている。
「そういえば、名前まだ聞いてなかった」
「め、メアリです」
「メアリね。了解」
「あの、貴方は」
「日蔭小守」
「ひかげ、こもり?」
「言い難いならコモリでいいよ」
「は、はい!コモリ様」
そこから俺とメアリの生活が始まった。メアリはそれはもうよく学んだ。俺が適当に作ってやった教材からどんどん知識を吸収していった。まあ俺はこの世界で生きる術、みたいなあやふやな想像で本を作ってそれを渡してやっただけなのだが・・・
メアリは自分に出来ることをしっかりと弁え、どうやら戦闘以外を担当することにしたらしい。俺はグータラ生活してメアリに言われた教材を適当に作ってやっていただけなのに気づけば俺は魔王に任命させられていた。何があったのか問うとどうやら話術で家の前にいた魔人やら魔物と交渉し他の魔王を呼び出して話し合いをしていたらしい。余談だがこの時俺は確かドラ○エシリーズを制覇することに燃えていた。
そしてある日
コンコン
「ん?」
「コモリ様、メアリです」
「なんだよ」
「お部屋に入っても?」
「ん」
「失礼します」
ガチャ
扉が開きメアリが入ってくる。これまた余談だがメアリはいつの間にやら俺の使い魔とやらになっていて俺の魔力を吸って成長するようにしていたらしくこの時には既に立派な女性になっていた。
「ほう、ヌシがこの城の主か」
「え?」
全く知らない声がして見てみれば荘厳な格好をしたいかにも強そうな奴がいた。
「こんな若造がこの難攻不落の城、ウロボロスの主とは・・・」
「ウロボロス?何だそれ」
「この城のことですよ、コモリ様」
「俺そんな名前付けたか?」
「ハッハッハ!本人に自覚なしときた。この城は我ら魔王が総出しても落とせなかったことから永遠に難攻不落の城としてウロボロスと名付けられたのだ。それにしてもこの我を前にしても一つも物怖じせず発言するその度胸、気に入ったぞ!」
「いや、あんたのこと俺知らないし」
テレレテーテーテーテッテテー
「お、レベル上がった」
「む?其方は何をしているのだ?」
「ゲームだよ」
「ゲーム?」
「あ~・・・娯楽だ」
「ほう、娯楽とな!」
そこからこの荘厳な格好をした奴は俺の隣にズカズカ寄ってきて俺のゲーム画面を見る。
「何だ、この遊具は!?見たことないぞ!!」
「え、ゲーム知らないのかよ」
そう言ってそういえばここは異世界だったと思い出す。
「まあいい、教えてやる。ちょっと待ってろ」
そこから俺はセーブして電源を消して荘厳な格好をした変な奴に向き直る。そこでよく見ればこいつには角が生え悪魔みたいなやつだと気づく。まあ異世界だしいいや、と思い説明を開始する。
「まあゲームというのはだな」
カクカクシカジカ説明を終え、実際に二人でゲームをするとそりゃ見事にこいつはドハマりした。
「む、この!」
「甘いわぁ!」
画面の中で二人のキャラが吹っ飛ばし、吹っ飛ばされていた。
久しぶりに二人でゲームをして俺も少し楽しかった。俺はこいつが気に入ってゲームを何台か作ってプレゼントしてやったらいたくよろこんでいた。そして帰る時になって名前を聞いていないことに気づく。
「あ、俺あんたの名前聞いてない」
「む、そうであったな。我が盟友コモリよ。我が名はサタン!この魔界を総べる王よ!!」
「サタンね、了解・・・って魔王かよ!?」
「うむ。それも大魔王だな」
「えー・・・俺、敬語使った方いいか?」
「構わん、そのままでよい!それと、今度我が城に招待しよう!」
「ああ、いつかな」
そこから1年ほどして俺はサタンの城に呼ばれて正式に魔王任命される。俺も最初はいいかなーと思っていたがとんでもなかった。仕事が多いわ、夜会とやらに呼ばれまくるわで趣味に没頭する時間がなくなってしまった。
そんなことがあって今に至るって訳だ。
「コモリ様、ダメイドとはもしかして私の事でしょうか?」
「お前以外にいるか、俺の宝物壊しやがって」
「コモリ様、少々お話が・・・」
「あー、今忙しいからま」
「知りません」
「おいこらメイド!主人を敬え!!」
「ちゃんと城の外に出てお仕事をなさってから言ってください」
「その話ならもうやめたはずだぞ!俺は魔王を引退したんだぞ!」
「知りません。私がサタン様に交渉して元に戻しておきました」
「あ、あの野郎・・・もうゲームは貸してやらないぞ!!」
「まあお説教は今夜にするとして、ほら行きますよ」
「いや、だってまだのん○んが・・・」
「知りません」
「のおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
こうして俺の一日はメイドに引きずられて始まる。
「俺の本職は、引きこもりだあああああああああああああああ」
最後まで読んでくださってありがとうございます。
この作品は本当に作者の適当なノリです。作者にコメディー系統が書けるかどうかの試も入っています。そのため設定も話も話の流れもグチャグチャです、プロトタイプ(笑)です。書きたいことを書き連ねただけの落書きですが最後まで読んでくだされば幸いです。
また、『有無の騎士』から来てくださった読者の方には多大な感謝を。