1話
どうも、ケットシー@です。
展開早かったらすみません。
俺が目を覚ましてまず目にしたものは、飛びっきりの美女の乳房だった。
(…はっ!?)
生まれてこの方20年、女性の身体なんて生で見た事が一度も無い年齢=彼女いない暦の童貞様の寝起きのサプライズにしては余りにもインパクトがありすぎて、俺のただでさえ寝起きで曖昧な思考は一瞬で破壊された。
「ほーら、おっぱいの時間ですよー」
優し気な声で俺をひょいと担ぎ上げ、自分の胸へと持っていく美女。え、ちょっと待って。まだ心の準備が。
だが、俺は混乱する内心とは裏腹に俺の身体は勝手に動き、直ぐにその乳房に唇を付け、何かを飲み始めた。
それが『乳』である事に気付くのに、俺は数十秒の時間を浪費した。
え、ちょっと待って待って。俺はいつの間にこんな美女とそんな関係に!?赤ちゃん授乳プレイとかマジで変態どころの話じゃねえぞ!
ーーーそもそも、この女の人、今俺を何の苦もなくひょいと持ち上げたよな。
俺は改めて美女の顔を見上げる。
目は緑色、髪の毛は金髪。優し気な目にすっと通った鼻。まさに絶世の美女がそこにはいた。
だが、俺は違和感を覚えた。何って、その大きさにだ。
彼女の身体は、俺の何十倍もの大きさだったのだ。体つきは完全に美女そのものだが、いかんせん巨大すぎる。まるでゲームやアニメで出てくる巨人の様だった。
俺は一体自分の身に何が起こったのかを懸命に思い出そうとしながら、女性の乳を吸いつづける。数秒掛けて思い出そうとして、ここであのショタ神の憎たらしい可愛らしい笑顔が脳裏に浮かんで、やっと俺は思い出す事が出来た。
ーーーーそういえば、俺は死んだんだった。そしてショタ神に転生させてもらう事になったんだ。
つまり、俺は今赤ちゃんからスタートしてるってことなのか。そうだとすればこの状況にも納得出来る。どうしてってこの美女のお姉さんが俺の母親で、俺が子供。それで俺に授乳している真っ最中に『俺』という意識が目覚めたという事が推測出来るからだ。どうしてここで目が覚めたし。
さて、そんな訳で異世界に転生して来た訳だが。
授乳が終わり、俺はやっと美女によるありがたい視界ジャックから解放され、今いる部屋の中を確認する事が出来た。
部屋はまるで中世ヨーロッパの様な感じの内装だった。テーブルにソファー、そして暖炉。電気家具などの存在は一切無い。窓から太陽の光が溢れている所から見て、今は昼過ぎ辺りだろうか。
「あなたー。ちょっとマークとお散歩にいってくるわー」
女性が俺を両手ですっぽり抱いたまま、ドアを開けてそう言う。すると向こうの方から『分かったー。気をつけて行ってこいよー』という男性のくぐもった声が返って来た。マークって犬の名前なんかな?
俺はそれから女性に色々な所に連れ回された。部屋の内装から予想はしていたのだが、俺が生まれて来た家は結構裕福な家だったらしく、豪邸とも言える大きさだった。メイド服の様なものを着た家政婦さんが掃除をしながら女性に挨拶をしてきた事を見るに、多分中流かそれ以上の階級の家なのだろう。
庭もそれなりに広いらしく、中くらいの公園くらいの広さがあった。草木で美しく彩られており、まさに中世ヨーロッパの家の庭そのまんまだ。ここは庭師の男が1人で作業していた。
それと、『マーク』はやっぱり俺の名前だったらしい。庭師が挨拶する時、やけに甘ったるい渋い声で『マーク坊っちゃまもお元気そうで〜』といないいないばあしてきたのだ。鬱陶しかったので全部無視してやった。
今世の俺の名前はマークなのか。…なんと言うか、前世が日本人の御陰か凄く違和感を感じる。
初の異世界初日は、女性の腕の中で揺られながら、初の異世界の風景をゆったり眺めて終わった。
結局今日一日で分かった事は、
1、自分が裕福な家に生まれた事。
2、家族構成が父親、母親、俺の三人である事。
3、使用人は1人で、一緒に暮らしている事。
4、庭師は帰ってしまったので、多分日雇いの庭師だろうという事。
の、4つだけだった。
ちなみに俺は今生後1ヶ月の乳幼児であるらしい。言葉は喋れないし、自分で移動する手段も無い。成長するのを待つのみだ。
そう言えば、ショタ神が最後に言っていたあの言葉は、一体どういう意味だったのだろう。
『君の良く知る世界』と言われたが、俺は実際、こんな所は始めて来たし、心当たりも無いのだが。
…まさかゲームやアニメの世界に転生したとか、そう言う事は無いよな?…ない、よな?
いや、だが面白いからと俺を転生させたあのショタ神の事だ。そういう可能性も充分に考えておかなくては…。
赤ちゃん用のベッドに横たわりながら、うつらうつらとそう考え、俺の異世界最初の一日は睡魔によって強制終了したのだった。
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この世界には魔法が存在するらしい。
その事に気付いたのは、俺が目を覚ましてから10ヶ月が経った時だった。
いつの間にかはいはいが出来る様になって、家中を毎日這い回っていたのだが、俺は偶然見てしまったのだ。
「光の妖精よ、集い、全てを照らす灯りとならん。『ライト』」
夜中。丁度今世の俺の父親の部屋の前に通りかかった時だった。ドアが小さく開いていて、覗き見た俺は信じられない光景を目の当たりにした。
父親がちょっと厨二臭い呪文をいきなり唱えたかと思うと、いきなり父親の顔の横に光球が現れたのだ。
この世界の文明力はどうやら前世程では無いらしく、電気すら通っていない。よって夜はろうそくなどで明かりを灯すのだが…。
俺は父親が生み出した光球を唖然と眺める。父親はそんな俺には全く気付かず、光球を灯したまま机へと向かった。
ななな、何だありゃあ…!?一体父上は何を生み出しやがりやがったんですかぁ!?
もしかして魔法なのか!?魔法って普通の人間でも使えるものなのか!?っていうか、そもそも魔法なんて存在すんのかーーーー
ーーーーつか、ここ異世界だから、魔法くらい当たり前か。
一瞬パンクしかけた脳が一気に冷える。この世界が俺の知らない理が蔓延る異世界である事を思い出すと、すとんと納得出来たのだ。
それにしても、魔法あるのか、この世界。ゲームのキャラクターの様に魔法使えるのか。
じゃあきっと俺もーーーと、考えた辺りでひょいと身体を持ち上げられた。
「マーク!こんな所にいた!」
「あうー」
俺の今世の母親だった。
「ん…?どうしたんだい、ジェシカ」
母親の、ジェシカの声を聞いて父親が右に光球を引き連れてドアを開ける。
「あなた…マークがベッドにいないと思ったら、1人であなたの部屋の前まで来ていたの。びっくりしたわ」
「ほお?」
父親は俺に顔を近づけて、嬉しそうに笑う。
「そんなに俺に会いたかったのかい。しかも一人でなんて、中々骨のあるやつに育ちそうじゃないか」
「もう…そんな事を言って。マークが危ない所に行かない様に、ちゃんと叱ってあげないと」
「まあまあ。男の子なんだから、これくらいが丁度良いのさ」
そう言うと父親はジェシカを引き寄せた。
「見てご覧、ジェシカに似て綺麗な碧眼だ」
「ええ…でも、あなたの顔に少し似てるわ…」
「当たり前さ。俺たちの子供何だから…」
「あなた…」
そう言って、胸に抱いた俺を放って2人で見つめあう両親。この2人は一緒だと何時もこんな感じなので、10ヶ月も一緒にいるしもう慣れたもんだった。けど間近でリア充されると少し童貞の部分が疼く。リア充爆発しろ。
その後、2人は空気を呼んで寝た振りをした俺をベッドに寝かせると、そっと部屋を出て行った。その後何があったのかは俺はあえて知らない存じないの体をとらせてもらう。親のそう言う事情なんて知りたく無い。
…妹かな、弟かな。俺的には妹が良いんだが。
話を戻すが、魔法である。
俺は銃を撃ち合うガンシューティングゲームや人型の機械のパイロットになって操縦したりするSFゲームよりも、魔法や剣で戦うファンタジーゲームの方が断然好きだった。所謂RPGゲームと言われるジャンルで、俺はこのジャンルだと乙女ゲーだろうがギャルゲーだろうが関係なくプレイした。それほど好きだったのだ。
小説なんかも何気にファンタジーものが多かったし。俺は生粋のファンタジー好きだと言う事になる。
そんな俺が、魔法のある世界に転生。あのショタ神の意地悪い笑顔が目の前に浮かんで見えてくる。今だけはこの笑顔に感謝だ。
転生、異世界、魔法。この三つのワードが揃えば、その答えは勿論チート。では、チートイコールなんだ?
超金持ち?
美少女?
いや、全部だ!
…うん、決めた。折角転生したんだ。俺はこの世界で、魔法を極めてやる。そしてチートを使うだけ使い放題して、美少女を集めて俺だけのハーレムを作る!
ハーレム王に、俺はなる!
「くふふっ…くっふっふ…」
元大学生で童貞様が将来の爛れた夢を決めて、赤ちゃんの姿で到底赤ちゃんらしく無い含み笑いを続ける姿が、そこにはあった。
勿論俺だったが。
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