序章「ネオン街ととんこつラーメンバリカタ」05
日刊更新小説
次で多分人物名だすと思います
「糞が!」
男は近くの壁に手を伸ばそうと左腕を動かそうとしていたが……。
それよりも早く刀を握った少年の右手が男の胸元へ届いた。
「喰らえ!」
少年の拳が青白く煌めいた。雷撃が男の胸を貫いた。
「が……あ……」
背筋を無理やり伸ばし、両腕をピンとおろし、無理やり直立したような姿となる男。
白目をむき言葉にならない唸り声を上げている。
少年の発した電撃による光に少女は顔を覆う。
どさっという音と共に、その眩しさは止んだ。
「ふぅ……」
ゆっくりと視線を戻すと、少女の目の前にはうつ伏せに倒れた男と、刀を鞘に収め頭上の月を眺め一息ついた少年の姿が入った。
とりあえず、驚いた。
ついさっきまで絶体絶命のなんとやらだったのにも関わらず、少年がやってきたと思ったら形勢逆転。遂には男は倒れていたのだ。
さて、どうしよう……。
少女はゆっくりと男の近くへ向かう。ピクリとも動いていないが……もしかして……。
「安心しろ死んどらん。気絶しとるだけたい」
この街の言葉が少女の頭上から聞こえてきた。顔を上げるとちょっと疲れた顔の少年がいた。
急いで立ち上がると、
「ありがとうございます!」
少女は慌てて頭を下げた。何をしたらいいかわからなかったがとりあえず、助けてもらったのだお礼はするべきだ。
彼女の素早い動きにポカンと呆気に取られた少年は頭をかいた後、その右手の行方に悩みながら、とりあえず制服のポケットに突っ込んだ。
「いや、別によかっちゃけど……。まあ、こがんところに女の子一人でおるとは危なかけん帰らんね」
そう言い残し、少年は路地から出た。
「へ……?」
その後ろ姿を少し眺め、彼が角を曲がる直前で、
「ちょ……ちょっと待って下さい!」
少女は叫び少年を追った。その声に少年も反応しビクッと肩を震わせると面倒くさそうに彼女の方を向いた。
「なんね?」
ほんの数メートルの距離だったのですぐに追いついた。
「お礼!」
「は?」
「助けて貰ったんですから、お礼をしなければなりません!」
それは彼女の両親の教えであった。その真摯な言葉に少年は刀の鞘で自分の肩を叩く。
「いや、別にお礼とかよかっちゃけど……」
「よくありません。この世界はギブアンドテイク! えっと……」
そう言って少女はスカートのポケットから長財布を取り出した。ひと目でわかるブランド品だ。
「すぐに金銭というのは下品ですが……今はこれで……」
差し出された額に少年は思わず後逸した。それは十六歳の少年が手に入れるにはあまりにも高すぎるものだったからだ。
いくらなんでもこれは受け取れない。千円ぐらいなら、まあ考えてもいいかな? レベルなのに……。
「そ、そがんいらん!」
「え……で、では……どうしたら?」
まさかの拒否に困惑する少女。どうやら彼女は何が何でも少年にお礼をしたいようだ。
ううむ……。少年は腕時計を見る――そうだ。
「わかった。なら飯ばおごってくれ。そいで手ば打つけん」