序章「ネオン街ととんこつラーメンバリカタ」04
日刊更新小説
男はそれを片手で軽々と投げた。
手裏剣の如く回転して少年へと向かっていく。
先ほどのボールとは違う。回転し、対象も大きい。これをどう捌くのだろうか?
少年は再び居合の構えを取る。
しかし、今度はすぐに抜き上段の構えを取る。
「とぉりやぁああ!」
右脚を大きく踏み込み刀を振り下ろす。
またしても一刀両断であった。石畳は真っ二つになり、少年の後方の壁にぶつかった。右と左から大きな音が聞こえた。
キンッ。
少年が刀を鞘に収めた。
「嘘……だろ……」
男は眼を見開いた。
間違いない。きっとあの刀がスキルだ。
恐らく物を斬るスキルだ。聞いたことないが、世界中に無数に存在しているスキルの中にはきっとそういうものもあるはずだ。
そうなるとどうする?
こうなったら……!
「それならば!」
男は地面を蹴って少年へと駆けて行く。
スキルによる遠距離戦が上手くいかないのなら肉弾戦だ。相手はガキだ。戦闘のプロではないのならこちらに勝機は十二分に存在しているはずだ!
「これで!」
隙のないコンパクトな動きで右腕を少年の顔面目掛け突き出すために近づく。
あと一歩踏み出せばというところで、少年が右手を突き出した。何をしてくるかわからないが、もう遅い!
「落ちろやあああ!」
「はぁあ!」
少年の右手から電撃が放射された。
真っ直ぐではなく若干蛇行しながら放射された電撃は突き出した男の右腕へ触れた。
「ぐああああ!」
男の腕を通って全身を電撃が撃った。
苦悶の叫びを上げる。
「何だと……!?」
スキルは刀ではなかったのか?
男は更なる追撃を避けるため、バックステップで距離を取る。ダメージは受けたものの、これぐらいで倒れる程ではない。
「てめえ、その刀はスキルじゃなかったのかよ……」
撃たれた右腕を抑えながら男は言った。
「当たり前だ。誰がそんなことを言ったんだよ」
少年は呆れながら刀の鞘で肩を叩いた。
事実、少年のスキルは先程の電撃攻撃である。
「まあ、だからと言って!」
少年は今度はこちらの番だと言わんばかりに男の方へ走り出す。
きっと至近距離からトドメを差すつもりだ。そう感じた男は右脚を大きく踏み出す。
先ほどの石畳手裏剣の応用編だ。畳返しのように目の前に大きな壁が現れた。これなら少年の進路を防ぐことができる。
しかし、男はたった数秒前の出来事であったはずなのにもう忘れていたのだった……。
「そいはさすがに甘かやろっ!」
少年は走りながら刀を抜き、一閃!
男を守る壁であったはずの石のそれは斜めに二分された。慄く男の顔が少年の眼に映った。