拝啓、貴方へ
拝啓、貴方へ。
届かない手紙を、送ります。
お元気ですか
あなたが居なくなってからこの世界は変わりました
もう私を苦しめるものもありません
私は自由です
ですが、仲間が欲しくて、未だに私はあの場所に居ます
もう私を脅かす銃はありません
追ってくる大人もいません
あなたは私にこう言いましたね、
僕が君を想うのは、僕があいつのクローンだからと。
でも、私は違うと思うのです。
あいつは、私のことを実の娘のように慈しんで愛してくれました
でもあなたは、私が恐怖に震えた夜、一晩中温めてくれました。
私が泣けば、泣き止むまで一緒に居てくれ、私が笑えばあなたも微笑む。
私は、それが幸せでした。
なにより、たまに私が寝ている時に感じた唇の、暖かくて柔らかい感触。あの意味を、私は後で調べてみました。
だから、あなたはクローンだから私を想ってくれたわけじゃない、あなたは立派な一人の人間です。
あなたのミコト、という名前は、私が付けました。命を、あなたの命を純粋に大切にして欲しかったのです。
私が必死に生きようとした時、あなたは私に知識をくれた。
あなたと初めて出会った日、あなたと初めて行った祭、あなたと初めて行った公園、あなたと初めて見た流れ星。
私の、世界の糧です。
私が言える事じゃないけど、いままでありがとう。
あなたにこれからの世界を出来ることなら見せたかった。
あの時、あなたは私に光を与えようと、ミズキのふりを最期にしてくれたのですね。
完全に、ミズキを演じようと。
あなたの事、世界中の誰が忘れても、私だけは絶対に忘れない。
だから、絶対にまた私に会いに来て下さい。
生まれ変わったら、今度は幸せな世界を見せるから。
こそこそと地下で生きなければならない人生ではなく、堂々と陽の下を歩ける人生に、私がするから。
私は、想い人が居るから、あなたと同じ気持ちであなたを想う事は出来ないけれど、誰よりも、あなたの事を想います。
私は全て断ち切って、今度こそ笑顔で、創達と前に進みます。
だから、心配しないで。
あなたが会いに来れるように、私は変わらずここに居ます。
[拝啓、貴方へ。]
end.
拝啓、最愛の君へ
ありがとう、
どうか、幸せになって下さい