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記憶  作者: 一之瀬 輝
11/15

回想

 「くそっ!!」


 

 先任海曹が壁をおもいっきり殴った



 その拳には血が流れており、殴った拳を先任海曹はただ見つめていた



 CICは沈黙した。機会熱だけがうるさく聞こえる



 


 










 「こ、こ、航げ海長よりCICへ水中から発炎を1確認!距離8000!!」




 「斎藤!レーダーに感は?」



 

 艦長がまさかというような顔をして斎藤に聞いた



 

 「現在確認中……」



 斎藤はレーダの周波数を上げたり下げたり偵察衛星からの情報を集めている




 艦橋ブリッチにいる航海科の科員たちも双眼鏡を使い情報の収集を

 している




 「おかしい……艦長、レーダーに感、ありません」




 「そんなことがあるわけ無いだろう、フェーズト・アレイ・レーダーに

  映らない事なんかあるわけ……」




 艦長も明らかに動揺している。艦長だけではなく、全員に言えること

 だった




 「艦長、ヘリを出しましょう。そうすればおのずとわかるはずです」




 艦長も納得した表情でよしと口を開こうとしたときだった




 「キャノピテーションノイズ(水中推進音)確認。あ、注水音です

  これは……中国海軍原子力潜水艦"漢"級です」



 

 「"漢"だろう、捕捉できなかったのか?」




 艦長が怪訝な顔で問い出した。何故なら"漢"級潜水艦の排水音

 はうるさく、黄海を走っているのに佐世保基地のソナーに

 引っかかるというありえない潜水艦なのだ




 「"ましゅう"の圧壊沈没音でソナーの効率が一時的に落ちたので 

  恐らくそのときでは……」



 

 俺は少し考えてみた




 発射元が割り出せない、水中からの発炎、敵原子力潜水艦……




 「サブロック!?」




 ほとんど全員が同タイミングで声を出した




 斎藤が声を出した




 「レーダーに感1!ホップアップで漸く捕捉出来ました、潜水艦からの

  攻撃を確認、ハープーン1基」




 「何故だ?」




 「!?」




 斎藤の目が勢いよく開かれそして絶望したかのように天を仰いだ




 「ま、まさか"ましゅう"にとどめを?」




 斎藤は首を横に振り、声を出した




 「目標は……本艦です。アクティブレーダーが本艦に反射を確認。

  敵ミサイル巡航速度800km

  相対距離2000、衝突時間2分30秒」




 「艦長、どうしますか?」



 

 艦長は下を向いたまま口を開こうとはしない




 「艦長!!」




 「敵ミサイル最終突入体勢に入りました!着弾まで30秒!!」




 「艦長!指示を!!」




 艦長はこっちを向いて口を開いた




 「……総員衝撃体制用意……」




 斎藤が声を発した




 「艦長!このままでは衝突コースは艦橋です、主に第二甲板です」




 「操舵員以外は退避、繰り返す、総員衝突用意……」




 「艦長これでは我が艦にも死傷者が出てしまいます」




 これではクルーの命が危ない。艦長は何を考えているのか




     ゴオッッ





 近づくミサイルの音、間違いなく自分の心拍数が上がっている




 なぜなら今は見ている側ではなく受ける側であるからである




 迫り来る恐怖に俺は初めて死の恐怖を感じた




 「斎藤、反撃……」




 「ダメです砲雷長。スタンダード(対空火器)の有効射程は切りました」



 

 「航海長よりCICへ、衝突まで時間が無い、早く反撃を」




 「艦長……」




 「くっ、CIWS(近接戦闘火器)用意、これはあくまで最低限の防衛手段である」





 「艦長、いいですね?」




 艦長はこれには了承したようで顔を上下に振った




 「よし、CIWS自動追撃開始コントロール・オープンオープーンファイアー(撃ち方始め)!!」




 「アイサー、攻撃開始」




 20mバルカンが火を噴き、敵ミサイルへと攻撃を開始する




 「着弾まで300メートル!」




 

 「総員衝撃体勢をとれ!!」




 











 その後はあまりよく覚えていない。どうやらミサイルは残り200mで

 撃墜したらしいが、破片が艦を襲った




 俺は辛うじて意識を保っていて周りを見た




 艦長は意識は保っているようだが頭から血を流している。副長は

 完全に意識を失っており、この中で最高将校である俺はやるべき事を

 やった




 「ダメージコントロール!艦内各部の損傷を報告せよ」




 「はっ、左舷対空レーダー故障。それ以外は全て正常に稼動しています

  しかし、第二甲板は火の海です。極度の混乱により正確な被害集計は

  不可能です。現在消火班が第二甲板に急行しています」




 「了解」




 推進・操舵系にダメージは無い、艦はまだ生きている。




 俺は艦長に駆け寄り声をかける




 「艦長、身体は大丈夫ですか?」




 「大丈夫だ。それより乗員は…?」




 「第二甲板は火の海のようです。操舵員は全員戦死しました。現在

  代員を急行させています」




 「そうか、クルーに死者がでたか……」




 そのときCICの外からタドタドタと足音が聞こえた




 「何処の馬鹿だ!戦闘中に無許可で動いているのは!!」




 俺がそう叫ぶのと同時にCICの扉が開き、そこには数人の人間に

 辛うじて持たれかかっている人がいた




 それは血まみれになっていた航海長であった





 「航海長!!」



 

 


 

 



  




 



 

 

 

 

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