回想
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「艦長!スタンダード(対空ミサイル)発射許可を!!」
「ダメだ、上からの許可は降りていない」
「では艦長は"ましゅう"を見殺しに?」
着弾まで残り4分11秒、残された時間はもう無い
「航海長よりCICへ、何やってんだ!はやく追撃を!!」
「CICから航海長へ、追撃は許可されていません」
「くそっ!……」
航海長も苦渋を飲んでいるのだろう
「艦長!上に任せてはいけません、現場でしか解からないことです
さぁ、はやく発射許可を!!」
「瀧瀬……」
艦長も明らかに混乱している
艦長はフゥと息を吐き、コンソールに息を吹きかけた
「艦長より乗員諸君へ心から聞いて欲しい。現在我が海上自衛隊は
創設以来最大の危機を迎えている。我々はあくまで上層部の指示を
従おうと思う……」
まさか……見殺しに?
「艦長!あなたは間違っている、あなたが目指していたフリート・イン・ビーイング(戦わざる海軍存在する事に意味がある)の集大成がこれなら憲法を無意味に盾としている哀れな負け犬でしかない!」
「着弾まで30秒!!」
「艦長!発射許可を!!」
艦長は黙ってこちらを見ている。おそらく艦長の思考回路が壊れたの
だろう。虚ろな目でこちらを見ている。こうなればダメだ今の艦長に
判断をする力は無い
状況を打開するために、俺は上を見て深く息を吸い込み号令をかけた
「対空戦闘用意!」
「方位20度、仰角70度。飛来するハープーンに備え」
「スタンダード(対空火器)用意」
「アイ・サー!後部VLSハッチ稼動よし」
斎藤が稼動状況を確認して声を発した。斎藤は本当によい軍人だ
この状況で訓練どおりにできる奴はそうそういない
「いいか、必ず落せ!!」
激しくコンソールに声を吹き込む
「着弾まで21秒!!」
これが海上自衛隊初の反撃となる
「撃ち方!よーい」
大きく息を吸い込んだ、むせるぐらいに。じゃないと攻撃という重圧
から逃げたくなるからだ
「撃て―っ!!」
「ならん!!」
それは艦長の声だった。さっきまでの虚ろな瞳ではなく強固な意志を
もった瞳をしていた
「撃ってはならん。撃ってはならんのだよ」
「し、しかし艦長!このままでは"ましゅう"の乗員の命が…」
今まで黙っていた先任海曹までが口を開いた
「ちゃ、着弾まで5秒……」
5秒、誰もが今悟った
終わりだ……
ドンッ!!
天地がひっくり返るような音だった
艦長が俺の手から落ちたコンソールを拾い、声を出した
「被害を確認する。試験段階中だが使わない手は無い。LINK14起動!
衛星からの映像をすべて"ましゅう"にフォーカス(集中)!」
大きなディスプレイに徐々に被弾した"ましゅう"の映像が出てくる
"ましゅう"は左舷側に大きく傾いており、乗員が退艦するために
海へとダイブしている
「ハープーン2発をく喰らって無事なわけが無いか……」
日本の領海内…いや、海上自衛隊に初の戦死者が出た
1人2人という数では無く、50人以上の死傷者はいるだろう
誰もがそのことを受け入れ、ほとんどの乗員が涙を流している
「う……ぐっ!……」
泣いているのは先任海曹だ、大柄だが無骨で優しい先任海曹のことだ
訓練でよく会う補給艦の乗員の死を受け入れれなかったのだろう
「後方艦に打電、負傷者ヲ救助セヨ」
艦長の声は至って変わりが無く、冷静な顔だった
「艦長!!」
何故か許せなかった。部下に誰よりも優しかった艦長、
何故、見捨てるような真似を……
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