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僕と彼女の探偵日記  作者: ポン酢
第一章『騒がしいジンジャーエール』
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~僕と彼女とSDカード~


彼女が、先ほど取り出したビデオカメラの電源を入れた。僕がそれに、会議室のテレビとの接続ケーブルをセットする。

「みなさん、この会議室の電灯が、いくつか切れている事に気がつきましたか? 実は昨日のうちに、女ネボの部室に設置されていた改造誘蛾灯と、この会議室の蛍光灯を入れ替えておいたんです。」

ええ!? と場がどよめいた。悲鳴を上げて胸元を手で隠す女子もいる。僕はその赤くほてった恥ずかしそうな顔を楽しみながら、テレビのスイッチを入れた。彼女の持つビデオカメラの映像が、テレビに映し出される。

「でもご心配なく。この部屋には赤外線カメラはコレしかありません。そしてこのカメラも、ナイトビジョン機能を入れなければタダのカメラです。それに、今皆さんが着ているカーディガンやブレザーといった冬服は、赤外線を強力に防いでくれます。仮に、肌がこんがり焼けるほどの赤外線を照射したとしても、透けるのは精々ブレザーだけです。」

彼女が僕の方にカメラを向けた。ナイトビジョン機能を入れていないため、まったく普通の映像が映し出される。ぼくはカメラの方を向き、きおつけの姿勢をした。テレビには、ブレザーを脱いでYシャツ姿になった僕の姿が映っている。

「そして、ひとたびナイトビジョンを入れれば・・・ほら。」

おお! と場がどよめいた。

テレビに映っていた制服姿の僕が、ナイトビジョン機能のスイッチを入れたとたん、体育着姿に変化したためだ。僕がYシャツの下に体育着を着ているため、制服が透けたことで体育着が見えるようになったのだ。

「このように、改造誘蛾灯と赤外線カメラを使えば、実際に服を透けさせる事が可能なんです。今、生徒会長は制服の下に体育着を着ているため、地肌も下着も映っていませんが、ネットボールのユニフォーム一枚では・・・・」

彼女が、ふうっと息を吐いた。

「下着、いえ、地肌が映ってしまう事は十分に考えられます。事実、このSDカードには・・・・まあ、そういう映像が記録されていました。」





「てめぇ! ふざけんじゃねえよ!」

女ネボの部員の内の一人が、数浦さんにつかみかかった。

「こんな卑劣な事しやがって、覚悟はできてるんだろうなあ!?」

今にも殴りかかりそうな勢いだ。僕はあわてて彼女を数浦さんから引きはがした。

「・・・申し訳ありませんが、関係者以外の方々は一度部屋から出ていただけますか? これより、被害者である部員を交えた上でのこのSDカードの中身の確認作業を行ないたいと思いますので・・・」

彼女が言うと、関係の無い一般生徒や教員達、神妙な面持ちで退室し始めた。普段下ネタを言い合って喜んでいる生徒達も、いざ実際の『性犯罪』に立ち会ってしまうと、気分が沈むらしかった。

部屋に残ったのは、僕と彼女、沢沼先生、部員数名だった。部員達の大半は、映像を見ることを拒否して出て行った。彼女達の複雑な心境を考えれば無理もない。僕はドアの鍵を閉め、窓のカーテンを閉じた。

「会長も、SDカードのセットが終わったら沢沼先生と一緒に部屋から出て行ってくれ。それと、事が事だから、沢沼先生と相談して警察へ連絡を。」

「わかった。」

僕は手を伸ばし、彼女の手からマイクロSDカードを受け取った。そして、机の上に置かれた生徒会用のノートパソコンにセットしようとした。その瞬間だった



SDカードが消えた。いや、奪われた。あっと思ったときには、もう遅かった。



「ちょ!? 先生なにして!?」

SDカードを僕の手から奪ったのは、沢沼先生だった。先生はSDカードを口の中に入れると、そのまま奥歯でかみ砕いてしまった。

「これでいいんだ・・・これで・・・」

沢沼先生が、息を荒らげながら言った。

「甘いぞ沢沼あ!」

彼女が、僕たちの背後で叫んだ。沢沼が彼女の方を睨む。その目は獣のように赤く血走っていた。

「お前が隠しカメラをセットする場面。数浦さんがそれを見つける場面。彼女が隠しカメラを持ってお前の元へ相談に行く場面。そして、お前が着替えの映像をネタに彼女を脅す場面。お前自身が仕掛けたカメラはみーんな記録していたぞ! このSDカードになぁ!」

彼女がポケットからもう一つのSDカードを取り出した。何の事はない。いま沢沼先生がかみ砕いたのはダミーだ。

「くっそおお!」

沢沼が彼女に飛びかかる。もはや理性のかけらも感じられなかった。

「それをわたせえええ!」

すると、今までイスに座り込んでいた数浦さんが突然立ち上がり、沢沼に殴りかかった。

「どおおおおりゃあああ!」

沢沼自身の運動エネルギーと、彼女のこぶしの運動エネルギーが重なり、その膨大なエネルギーが彼の股間の一点に集約された。

「ゴフ!?」

作用と反作用のマジック。股間を自分の体重の数倍の力で殴打された沢沼が、その屈強な身体をのけぞらせ、地面に倒れ込んだ。口から泡を吹き、身体をぴくぴくと痙攣させながら、白目をむいて気絶している。最悪片方つぶれたかもしれない。

「やった! 作戦成功ですね!」

「ああ! 良いパンチだった! さすが都大会準優勝チームのキャプテン!」

彼女と数浦さんが、股間を押さえてうずくまる沢沼の横でハイタッチした。僕は激痛にもだえる沢沼を、少しだけかわいそうに思いながらロープで縛った。


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