7 裏話 11
約束の日の話です。
おかしい。
何でだ?
おかしいぞ?
俺は前に店に来た時、次に来るのは今日だと伝えたはずだ。 彼女もそれを聞いて、『待っている』と言ったはず。
なのに何故だ。
薬屋の扉には『閉店』の表示看板がかかっている。
あれ? 俺、日にち間違えた?
……いやいや、そんな事はないはず。うん。だって俺の誕生日の次の日だから、伝え間違いは、ないはずだ。
……と言うことは彼女の聞き間違いか?
どうしよう。俺一人でケーキ食うの? なんか色々と面白そうなのあったからいつもより多めに買っちゃったのに?
……うわぁ……寂しいな、おい。
あ、でも、もしかして看板かけ間違えただけで実は開いてるとか?
……うん、その可能性に賭けよう。
そしてこの扉が開かなかったら俺は泣いて帰る。
そう思って店の扉の取っ手に手をかけると、すんなりと開いた。
……あれ、やっぱり看板のかけ間違いか?
店の中に一歩足を踏み入れると、彼女はいつもの場所に少し緊張しながら立っていた。
あれか、友達と約束するのなんて初めてだから緊張してるとか、そう言うやつか。
子供かよ。
「待て、そこで止まってくれ」
店に入り、扉を閉めると彼女はそう言った。
止まれって、ここで?
「どうしたんだよ、扉の看板が『閉店』の表示になってるぞ? 今日は午前中は休みか? 今日は前に言ってた野菜のケーキだぞ? ニンジンのシフォンケーキが一番人気らしくてさ……他にも面白そうなのがあったからいくつか買ってきたんだ」
――嬉々――拒否――
あれ? どうした。思ったより食い付きが悪い。この前はケーキの話をしただけで嬉しそうにしてたのに。
「……一つ、聞きたい」
「何だよ急に……」
ずいぶん緊張してるな、どうしたんだ……本当に。
…………………………ちょっと待て、これはまさか!!
いや、でもそう言うことなのではないだろうか?
このタイミングでこいつがこんなに緊張感を持つなんて、そうとしか思えない。
それで『閉店』の表示が出てるのに鍵が空いてるわけか……
「ははーん、誰かから聞いたな? だからお前この間『次はいつ来るんだ』なんて聞いてきたんだろ」
閉店表示が出ていようが何だろうが、俺が扉を開けようとする事もお見通しだなんて恐れ入る。もう以心伝心の間柄と言っても過言ではないんじゃないか!
本当に誰だ? 言ったヤツ。
ロディか? ダイスか? じいさんか?
誰でもいい、ありがとう!
「そう、ご存じの通り、俺の誕生日なら昨日だ!」
お祝いありがとう、ケーキもあるぞ!
あ、プレゼントはワ ・ タ ・ シ で結構です。
ウェルカムばっちこい!
この両手はおまえを迎える為にある!
「その、なんだ……それは知らなかった……おめでとう」
えええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………………………
「知らなかったのかよ。ありがとう」
何それぇ……俺、今一瞬で天国から地獄に真っ逆さましたぞ……
……まぁ、それもそうか。変に期待した俺が悪かった。
少し冷静になって考えてみれば分かることだ。
彼女に限って誕生日なんてものに興味は無いだろうしな。
少し離れた場所にいる彼女が、困っているのが分かる。
いや、おまえが困るのも分かるけど俺は恥ずかしい。もう今の会話は水に流して忘れてくれ。
「……何だよ黙りこんで……近くに行っても良いか?」
気を取り直してそう言えば、彼女から待ったがかかる。 ……何で?
「聞きたいことがあるんだ」
神妙な面持ちをしている。 何だよ?
「その、その距離からでも……私の考えていることは……分かるのか?」
………………。
……これは……どう取るべきだ?
彼女の事だ、たぶん他意はない。そのまま、ただの質問として受け取るべきだ……と思う。
「……ああ、今何となくおまえが困ってんのかなーくらいなら分かる。ただ、外を歩く人がいると混じって分からなくなるな。少し離れるだけで変わるもんだ」
思うが。
「……そうか」
何だか強ばっていると言うか、身構えている彼女の態度は気になる。
「……俺のこと、気持ち悪くなった?」
「ち、違うっっ」
離れていても強く響く否定の気持ち。
……良かった、これ以上落ち込まなくて済みそうだ。 でも、なら……
「そっか、じゃぁ近付いて良いか?」
「ちょっと待て……」
ワン。
じゃなくて、どうも俺はここにいないとダメらしい。
「……そのまま……少し、聞いてほしい話がある」
彼女の言葉と同時に伝わってくる妙な緊張感。
何だろうな。
キタァ(゜∀゜)ァァ( ゜∀)アァ( ゜)ァア( )ァァ(` )アア(Д` )ァア(*´Д`)アァン
↓ それは知らなかった。
(o´・ェ・`o)




