閑話
村の外れに住む女には親がいなかった。
女が子供の時分に亡くなったのだ。 女は家で人形を作っては、町まで売りに行っていた。中々に手先の器用な女の作る人形は、町の子供に人気があった。
ある日、女は村の木陰で倒れてしまう。
それを助けたのは、村の若者。若者はふらつく女を支え、背負おうとしたのだが、女はそれをかたくなに拒否する。
仕方なく若者は女に肩を貸し、家まで送ることにした。
人が人を助けるのは当たり前の事。
これのどこかに不幸があるとしたら、若者に思いを寄せる別の女が、それを見て何かを勘違いしてしまったこと。
この森は魔女の森。
入ってしまえば死ぬまで外には出られない。脱走すれば魔女に狩られる。
奇妙な噂の流れる森に、小さな木造の小屋があった。 森の中にあって土の上に建つその小屋の存在を知る者は少ない。
この小屋には難病に侵された人間が集められ、定期的に燃やされる。
それを知るのはこの小屋を管理する小男と、町外れに住む医者と、神に祈りを捧げる教会の牧師のみ。
他の健康な者への病気感染を防ぐためには仕方のないことである。
ただ、小屋が燃えていることに気づいてしまった患者の母親が、その身が焼けるのも構わずに炎に飛び込んだのも、母としての気持ちを慮るならば、仕方のないこと。
女性に必要なのは家柄と金と容姿。教養など二の次。
顔にアザがあり、卑屈で教養のある女など面倒くさい。それが当時の評価である。
彼女の不幸は、全てをアザのせいにして人と関わる努力を怠ったこと。
女は人並みの幸せを欲するが、それは叶わなかった。
妹の死をきっかけに女は嫁ぐこととなるが、夫となった人は彼女を愛さなかった。
やがて女は病に倒れ、孤独のうちに死に、静かに送られた。
夫は、妻と同様に病に倒れたが一命をとりとめた愛人と、その後も仲むつまじく暮らす。
仲の良い双子の姉弟は、手を繋いで星見をする。
上ばかりを見上げる姉に気づかれないよう、弟はよくよく手を握る相手の事を見ていた。
姉弟の星見を知った父親は、その様子を覗き見て弟の視線に気づき、姉弟を離すべきと感じる。
数年の後に姉は修道院に入り、弟は騎士となった。
教会のために王のためにと働く二人は年を重ね、それぞれの決断をする。
姉は僻地の教会へ、弟は生きて帰れるか分からない戦地へ。
その際弟は家督を全て末の弟に譲り、家との縁を切った。
その後二人は戦の中で消息を絶つ。
なぜ人は生きる。 汚く醜く。 こんな世界で生きる必要があるわけがない。
女は売春宿からの解放を願った。足抜けなどと、その後の事を考えないやり方よりも、確実で結果の見える方法。
女が悪であったのは、それに他人を巻き込んだこと。
ひとつの希望を作り、その希望にすがった男女が命を散らすを見て笑っていたこと。
そんな己に失望して、けれど肯定もする。
やがて女は報いを受ける。いや、それは彼女が望んだことだったのかもしれない。
最後に赤い花を散らす彼女は笑っていたのだから。




