6 薬屋 1
物心ついた頃から、他人の感情が耳鳴りのように頭の中に響く事がよくあった。 ただ、周りの人達もそうなんだろうと思って、深く考えることもなく幼少期を過ごした。
人の考えていることが分かればいいのにと思ったことはないか。 俺はある。
昔、近所に住む女の子に『好きなやつとかいるの?』って聞いたとき。照れながら言葉を濁す彼女が何を考えているのか、すごく気になって、気になって、気になった。たぶんその時すごい集中したんだろうな。
頭の中に響いたのは隣の家に住む、コリンと言う名の俺の幼馴染みの名前。
「おまえコリンのこと好きだったのか!?」
「え、なんでわかったの?!」
ちなみにこれが俺の初失恋。
その時彼女に『頭の中にコリンの名前が響いてきた』と素直に言ったら、俺は次の日には近所中の女の子たちに変な目で見られるようになった。 ほんと泣くかと思ったよ、うん。 取り合えずその発端になった女の子に、あれは冗談だったと苦しい言い訳をしてシラを切り通すと、改めて自分の頭に響く他人の感情について考えた。
もしやまさか、普通は他人の感情が頭の中に響くような事は無いのかと思い、両親にそれとなく聞いてみたところ、母親には『下らないことを言う暇があれば家の手伝いをしろ』と怒られ、父親には『物書きでも目指すのか』と首をかしげられた。
取り合えずこの事は二度と他人には言うまいと心に決めて、俺は妙に勘の鋭いただの子供として、すくすく成長した。
働ける年になって、父親が街の警備隊に所属していた事もあり、同じ道に進んだ。
生まれ育ったこの町は俺が守るぜ! みたいに思ってたんだけど、配属されたのは生まれ故郷から離れた街。 あの時はちょっとガッカリしたな……
まぁそれでも気持ちを切り替えて、その街のためになるように頑張ろうと決めたわけだな。街のチンピラどもをちぎっては投げちぎっては投げ……と言うのは誇張表現だ。でも街のチンピラの喧嘩仲裁とか無銭飲食の常習犯を改心させたり民家に押し入った強盗捕まえたり、結構頑張ってたんだぞ?
で、なんやかんや前の街でそれなりに成果をあげた俺は、別の大きな街に配属になった。
それがこの街。
たぶん信じないと思うけど、一応栄転なんだ。
で、ここからは前に少し話したな。
この街の警備隊に配属されて、はりきった俺は少し調子にのり、街のごろつきを取り押さえようとした。そのときに思いっきり頭に怪我をして、治療に使われた薬がおまえの作った薬だったって。
……思い出さないか? ほら、頭に包帯巻いたかっこいいお兄さんがこの薬屋を訪ねて来ただろう?
おいおい、そんな今までに見たこともないようなスピードで首を横に振るのはやめたまえ。お兄さんが傷つくから。
そうだな、じゃぁ少しでも思い出してもらえるように思い出話をしようか。
嫌な顔するなよ。悲しくなるだろ? つまらなかったら寝てていいから。
あ、なんなら添い寝しながら……いえ、何でもないです。




