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魔女話  作者: ゆきむら
魔女語り
1/45

1 水

 信じる信じないは自由だ。

 鼻で笑ってくれても構わない。

 途中で立ち去ってくれてもいい。

 それを私は止めやしない。

 むしろ当然と受け入れるだろう。




 弱く、無知で、浅はかで、罪深く、強欲で臆病。

 それが私の知る、人間という生き物。


 そんな生き物として世に生を受けて二十年程。


 理由も分からず私は死んだ。


 殺された、と言いたいところだが、私は自ら死んだのだ。




 俗にいう魔女狩りだ。

 私は小さな村の外れに暮らす、何の変哲もない女だった。

 贅沢をした覚えも、悪さをした覚えもなかったが、いきなり家に教会の男たちがやって来て『魔女はお前か』と私を村の広場へ引きずっていった。

 何度違うと叫んでも、その声が教会の男たちに届くことはなく、広場に転がされた。


「魔女でないというならそれを証明せよ」


 そう言われて全身の毛を剃られ、体に焼きごてを当てられた。

 何と喚いても助けてくれる者はおらず、傷だらけにされても、痛くても苦しくても私の体は生き続け、とうとう腕の関節を外されてしまった。


 少し弱気になってしまったのだろう。

 いや、もう考える力など残っていなかったのだ。痛くて苦しくて辛くて。

 正直、楽になりたかった。


「お前は魔女か」


 拷問のさなか小さく呟かれた言葉。


「認めれば楽になれる」



 楽に、なりたかった。



「はい。私は魔女の集会に参加し、魔女となりました」



 囁いた者はニヤリとわらい、私が魔女であることを認めたと高らかに宣言し、速やかに処刑の儀式準備をはじめた。


 目の前に大きな蓋つきの水瓶をつき出されたとき、そう、有り体に言うなら私は絶望した。

 その水瓶に、目の前でたくさんの水が注がれ、最後に教会の男が懐から取り出した小瓶の水を一滴垂らし、何かを唱える。



「この聖なる水に魔女の体のすべてを浸し蓋をして、浄化を行う」



 体のすべて。

 

 足、腹、胸、腕、首、顔。

 すべてを七日間、衆人環視のもと浸し続ける儀式。


「魔女よ、さあ自身の体を水瓶に沈めよ。神に許しを乞い、その身を浄化するのだ」




 人の命はあまりに脆い。


 水の中では生きられない。


 そして私は死んだのだ。

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