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三題噺 「香辛料」「自棄酒」「ハイジ」

作者: 苺ミルク

 ひと組の男女が居酒屋で酒を飲んでいた。

 男は顔を赤くし、完全に出来上がっていた。ほとんどうつ伏せになるような格好で机にもたれかかり、酒を飲むときだけ、少し体を起こしていた。

 女はまだそれほど飲んでいないのか、頬はやや赤みが差す程度であった。

男とは違い、きちんと座っており、男のコップが空くと酒をついでいた。

 どちらもスーツ姿であった。

「だいだいな~、部長ももう少し俺らのこと気を使ってくれてもいいと思うんだよ」

 男が愚痴をこぼす。

「なんでこんな時間まで残業しなきゃならないんだよ~。1人当たりの仕事量が多すぎなんだよ。もう少し社員を増やせばいいのにさ~」

「はいはい、そうですね」

「なんだよその生返事は~」

「愚痴をこぼすのはいいですけど、あんまり自棄酒ばっか飲んでいると体壊しますよ。ここのところ毎日飲んでるじゃないですか」

「そうなんだよ~。最近みんな飲みに付き合ってくれなくてな~。お前だけだよ、毎回俺に付き合ってくれるのは」

 話が通じないから酔っぱらいは困る。女はひとり、肩を落とした。

「なあ、知っているか? 『低燃費系少女ハイジ』でハイジの声をしているのは友近なんだぜ」

「どや顔で言うほどすごいことでもないですよ」

 起き上がり、どや顔の男をさらりと流す。

「でもお前知らなかっただろ」

 再び机にもたれ、男が言う。

「……知ってました」

「うそつけ」

「……最近、そのCM見なくなりましたよね」

「なあ、知らなかったんだろ~。素直に言えよ~」

「しつこいです」

 そういうと女は手元にあった七味トウガラシを男の顔に振りかける。

「ちょ、おま、七味はやばいって! てれ隠して領域じゃないって!やべ、目がめっちゃ痛い!! ちょっと手洗い場借りてくる!!」

 そういうと席を立ち、バタバタと男は手洗い場へ駆け込んでいった。

「香辛料、おそるべし」

 一人残った女がつぶやいた。

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