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自分と竜と仮想世界  作者: 狐白
第2章 銀色少女の紡ぐ唄
31/31

改訂中

 前回の投稿から大分間が空いてしまいましたorz

また元のペースに戻れるように努力はしていきますm(__)m



「・・・ここまでくれば取りあえずは一安心・・・か?」

「ふむ。おそらく大丈夫だろう。だが念のため休んだら即出発したほうが良い。」


夏葉の言葉に首を縦に振る。


あれからなんとか都市を抜け、追っ手を撒きつつ来た姿を隠せる森の中で休憩中である。夜と夏葉はまだまだいけるようであったが、ハークの速度が目に見えて落ちているのに気がつき、取りあえず休憩を取ろうということになったのだ。

ずっと夜にお姫様抱っこされていたフェリスは疲れている様子は皆無で、森が珍しいのかキョロキョロと楽しそうに周りを見回している。今まであまり城の外に出たことがなかった彼女にとって、外にあるものは何から何まで珍しいのだろう。


適当に場所を取って円を描くように座る。夜が城で騒動を起こしている間に、夏葉とハークが水や食料を用意しておいてくれたのは大いに助かった。今もエネルギー補給のためにハークは固形栄養食をもそもそと不味そうに食べている。此処で焚き火を起こすことが出来ていたなら、夜が固形栄養食をアレンジしてスープなどにして食べることが出来たのだが、煙が立つと居場所が特定されてしまう故我慢してそのまま食している。


「で、夜。弁解の余地はないと思うのだが・・・?」


夜が珍しそうに周りを見回しているフェリスを面白そうに眺めていると、対角線上にいる親友に鋭い目線を向けられた。どうやら忘れていなかったようだ。

内心舌打ちしながらもそれに答えた。


「・・・悪かった。内緒で闘技場に出てたのは謝る。」

「俺が聞きたいのはそれじゃない。何故今まで戦えるのを隠していたのか、ということだ。」


不穏な空気が流れているのを肌で感じ取ったのか、フェリスは不思議そうな表情をしてこちらに戻ってくる。


「?・・・どうしたんですか?」

「いや、なんでもない。気にしないでまだそこら辺探索していていいぞ?」

「・・・私、迷惑ですか?」


そういう意味で言ったわけではなかった。しかし彼女は何を勘違いしているのか、上目遣いで眉根を寄せて寂しそうに唇を噛んでいる。

彼女のそんな顔を見てしまってから“あっちに行け”とは言えなかった。だって可愛すぎる。


「・・・全ッ然迷惑じゃない。別に此処に居てもいい。」


夜がそう言うと、彼女は顔をぱぁぁあっと輝かせて彼の隣に腰を下ろす。内心ため息をつきながら、夏葉に視線を向けて先ほどの話を続けた。


「今まで戦えなかったのは本当だ。嘘じゃない。ただ今回があの魔具があったから戦えたんだ。」

「・・・魔具、だと?」


その言葉に反応したのは夏葉だけでなく、固形栄養食を不味そうに食べていたハークも目を見開いてこちらの話に耳を傾ける。


「あ、私が貸した魔具のことですか?」

「あぁ。あの魔具はフェリスがつけていた仮面と対になっているんだったよな?」


確認するようにフェリスに問うと、肯定するように縦に首を振る。


「俺がつけていた仮面は感情を抑制する。だから戦うことが出来たんだ。あれがなければ俺は戦えない。」

「・・・ふむ。つまり、言外に“あの仮面がないからこれからも俺は戦闘には参加しない”ということなのだな?」

「まぁ、そう取ってもらって構わない。それから闘技場に居たのは、フェリスに頼まれた・・・いや脅された?いや脅迫されたから・・・か?」

「ヨル!!誤解するようなこと言わないで下さい!!別に脅迫なんてしていませんっ!!」


顔を真っ赤にしてぶんぶんとものすごい勢いで首を横に振って、違いますアピールをするフェリス。実は態と言い直したのだが、夜は言いなおした甲斐があったと面白そうに彼女を眺めて薄っすらと笑みを浮かべていた。

今ので一気に場の雰囲気が壊れてしまったような気がして、ハークは当事者でないのについ聞こえない程度にため息をついてしまう。


「成る程。・・・まぁ戦闘になったら俺と少年でなんとかなるからいいだろう。それから、今度勝手に何処かにふらりといなくなったら・・・分かっているな・・・?」

「・・・いえす、さー」


今度こそ命はないと思え。

そう台詞の中に含まれているものを感じ取った夜は、背中に冷や汗をかきながらも震える左手を額につけて返事をした。


「そういえばさ、ヨル。あのチーム名何一体?」


話の区切りがついたのを見計らって、ふとハークは聞く。

しかし聞かれた本人はその質問の意図が掴めずに首を傾げた。そしてそのとき、夜は何か良からぬ予感が頭を過ぎっていくのを感じ、その源だと思われる夏葉に恐る恐る目を向ける。


「たしかにあのチーム名はない。・・・たしか、“ラヴリーうさにゃん”・・・だったか?」


超フレッシュな笑顔で言いやがりました。


「待て夏。なんだ、そのファンシー溢れる乙女チック全開の言葉は・・・」

「あっ!それ私たちのチーム名じゃないですか!」


(お前の仕業かフェリスよッ!!)


「本当は“ラヴリーねこぴょん”と迷ったんですけど、やっぱりそっちで正解でした。とっても可愛い名前ですよね!」


(迷うとこもそこじゃないだろ!?フェリス!!)


完全に石化している夜を、ニヤニヤと黒い笑みを浮かべて夏葉は言う。


「乙女な趣味に走ることは悪ではない。夜よ。この茨の道を選んだのなら最後まで突き進め。そして極めろ」

「えっ!?この名前ってヨルが決めたの!?」


その言葉に反応するハーク。その表情は単純に驚いているだけ、というわけではなく微妙に苦笑いも含まれていた。


(違うんだハーク。俺は何も聞いていない・・・!!)


「ふふっ。とっても可愛いでしょう?私と夜さんの(フードの形の)合作なんですよ!」

「待てフェリス!合作じゃないだろ!?」


フェリスは何故か嬉しそうに話す。そして言葉が足りない。

即間違いに突っ込む夜だったが、その素早さがかえって首を絞めることになる。夏葉とハークには、夜が必死で真実を隠そうとしているようにしか見えないのだから。


「ふむ。合作とは・・・なかなかやるな。」

「合作・・・どこら辺がそうなの?」

「僭越ながら“ラヴリー”と“うさ”は私ですが、“にゃん”はヨルです。」


何故笑顔で言う!?


(だから言葉が足りない!!)


このままではどんどん坂から転がり落ちていくように誤解が深まっていくばかりだ。フェリスはこれを素でやっているのだろう。邪気は一切感じないのだから。


そら恐ろしい。


夜はそう思いながらも、自分抜きにしてどんどん広がっていく(主にフェリスが原因)誤解を解くのに精一杯で、いつも肩に乗せている猫のぬいぐるみが一緒にくすくすと笑っていたことなど知る由もなかった。












                      ♪













「・・・ふ~ん・・・で?」


この世界の何処かにある、ある大きな城の中で、ある一人の少年とある一人の青年が話していた。少年の方は闇に紛れていて、どういう容姿をしているか分からないが、青年の方は漆黒の長い髪を腰まで下ろしていて、その銀色の瞳には狂気の色を映していた。その青年はとても楽しそうに、台座に座っている少年に話す。

それに対して青年の話を聞いている少年の瞳は剣呑な光を宿し、誰がどう見ても彼の機嫌が悪いのは目に見えて明らかだった。


「もしかしなくても城から出れなくていらいらしてるのか?」

「・・・アシュテカが“彼”のことを楽しそうに語るから、なんかむかついてきちゃった。」


台詞からして軽そうに聞こえるが、実際ものすごい威圧が少年から出ているのをアシュテカは微笑を浮かべて受け流す。


「大丈夫だ。ちゃんと約束は守っている。」

「知ってる。・・・それからディリースィ呼び戻して。」

「ん?ディリースィか?そういえばアイツ頭を気にしてたな・・・呼び戻してどうするんだ?」


ディリースィとはアグリキュル国に潜伏しているアシュテカの部下の1人だ。“彼”をちょこっと見に行ったときついでに会いに行ったのだが、冗談で言った“はげるぞ”という一言は彼にとっては冗談では済まないようでものすごく気にしていたのを覚えている。


「取りあえず呼び戻して。」

「了解。」


内心苦笑いをして殺気をかわしながらも、アシュテカは背中に意識を集中させて背中から漆黒の羽根をバサッと出す。

これ以上ここに留まっていたらその殺気に嬲り殺されてしまいそうだと危機感を少なからず感じながらも、狂気の笑みを浮かべながらコツコツと足音を立てて窓辺に近づく。


「・・・それから、“彼”に接触してきて。」


不機嫌な少年から出た予想外の台詞に、普段表情をあまり崩さないアシュテカは驚いて目を大きく見開き振り返った。その勢いで艶やかな黒髪が風に靡くようにふわりと浮く。


「勘違いしないでね。接触、といっても触っていいわけじゃないからね。」

「心得ている。接触の仕方は?」

「特になし。ただ話してくるだけでいいよ。それとなく周りのことを聞いてくるのも忘れないで」


それは至極難題だ。

会って間もない存在にそう簡単に教えてくれることではないのだから。


「時間制限はミリィーナが迎えに行くまで。」

「・・・人間相手に戦争でも起こす気か?」


時間制限を設けるのは何故?と言外に問う。


「まさか。ただもう少しで研究が完成しそうだから早めに帰ってきて欲しい。ただそれだけ。」

「・・・了解。」


これ以上何を聞いても少年は何も教えてはくれないだろう。

そう思ったアシュテカは窓を開けるとそこから飛び降りる。それから漆黒の羽根を羽ばたかせて海に向かって恐ろしい速度で飛んでいった。


開け放たれた窓を閉めようとはせず、少年はその窓から見える景色を碧眼に写す。その瞳は何かを睨んでいるように鋭く側められ、空の向こうにある何かを見つめていた。


「気分でも悪いのですか?」


ふと気がつけば普段は研究室に居て、滅多に見かけることのないリシィーナがいつの間にか入り口に立っていた。彼女が入ってきたことによって窓には霜が張り付き、息を吐けば白い、まるで極寒の地に居るかのように寒くなる。彼女が立っている場所には氷の花が綺麗に咲いていた。

肌は雪のように白く、下手すれば血が通っていないんじゃないかと思えるほど真っ白である。唇も血色の悪い紫色で、肩につくかつかないか微妙な長さの髪は色素が薄い水色で、前髪は後ろ髪同様パッツンと一直線に切られている。服は裸の上に白衣一枚、という扇情的な格好をしているものの、白衣は彼女の冷気に当てられぱりぱりに凍っていて、一種の防具のようなものになっていた。


「リシィーナ、お疲れ様。研究はどう?」


窓の外から視線を外し、にっこりと笑みを浮かべる。先ほどまでの彼の表情がまるで嘘のような表情だった。


「まぁまぁといったところです。あともう少しで完成しそうなのですが。」


冷たい響きを持つ彼女の声音は抑揚のない平坦な台詞を並べる。これが彼女の普通なので少年は特別気にすることなく話す。


「そう。じゃあ頑張って完成させてね。で?此処に来た用件は?」

「研究に必要なものがなくなったので取りに行く許可を取りたくて。」

「そっか。じゃあいいよ。大陸渡るんでしょ?」

「はい。では行ってきます。研究室には助手がいますから」


彼女は軽くお辞儀をすると、踵を返して少年の前から最初からそこに居なかったかのように一瞬で姿を消す。


「・・・・・」


少年は再び外に視線を向ける。

その青い瞳は此処にはない何かを焼ききるような勢いで虚空をただ見つめていた。





                         Answer END


 次回から第3章が始まります。

いよいよアシュテカたちもとうとう動き始めます。



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