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自分と竜と仮想世界  作者: 狐白
第2章 銀色少女の紡ぐ唄
29/31

改訂中

お待たせしました;

後編です^^

(・・・で?これなんていう危機的状況!?何で夏が本気の目で攻撃してきてんだ!?)


そして何故自分は剣を夏葉に向けて構えているのか。もう何もかもが分からず、頭の中は軽い混乱状態に陥っていた。その時、頭にリンッと鈴のような声が響く。


《ご主人様!避けて下さい!!》


「!!」


―ゴォッ


レーヴァテインのおかげで間一髪、横にステップを踏んで夏葉の拳を避ける夜。頬すれすれを通っていった炎が熱く、避けたにも関わらずチリッという微かな痛みを感じた。取りあえず相手(ナツハ)もこれ以上攻撃してくる気がないらしく、距離を取って一息つく暇くらいはありそうだ。


(・・・ふー・・・ありがとな、レン。)


《いえ。それにしても、意識がお戻りになられたのですね!》


(あぁ。で、説明してもらってもいいか?こうなるまでの経緯を)


汗を拭うようにして先ほど掠った部分をさする。急に動いた所為なのか、それとも炎が掠ったからなのか、そこの部分だけが熱を持っているように感じた。


《あ、はいっ》







―ガキャッ、ガキィンッ、ガガガガガガッ


「あはっ、あはははははははっ!!ひれ伏せ!!」

「ちょっ、やめっ、やめろぉッ!!死ぬって!!しかもなんか怖ひ!?」


視界の端で、豹変したフェリスが持ち前の馬鹿力で振り回す大剣を、間一髪で避けているハークを映しながら夜は成る程、と呟いた。


(・・・もう弁解のしようがない、と。・・・まぁ、そりゃ夏が怒るわけだ・・・絶対説明しろって後で迫られるよなぁ・・・)


《ッ!!ご主人様、来ます!!》


「ふむ。そちらから来ないのならこっちから行くぞ!」


レーヴァテインの声と夏葉の声が被り、風を切る音とともに拳が迫る。それを後ろにステップを踏んで避け、もう片方の拳が届く前に3mほど距離を取るために後ろに跳ぶ。しかし夏葉は追撃をかけるためにその場から弾丸のように飛び出し、炎を纏った拳を左右同時に振るった。


―ガッ、ギィンッ


(あ、あっぶねぇ・・・危うく左右から挟まれて丸焦げサンドにされるところだった・・・)


左手にはレーヴァテイン。そしていつの間にか右手には、以前武器屋で夏葉にもらった短剣が握られていた。


(さんきゅー、レン。ってか絶対あいつ今の殺る気だったッ)


内心、俺心臓バクバクです、といわんばかりに息切れを起こしている。そして今は戦闘に集中していて気づいていないが、もし冷静になって今の自分の状況をきちんと把握していたのなら、観客に見られている緊張でこんなには動けなかったことだろう。


《はい////あ、ご主人様、落ち着いて下さい。ご主人様なら相手が竜だって、今の時点でもなんとか勝てるはずです。先ほどまで記憶がなくても、体がその動きを覚えているはずです。よく思い出してください》


(なんとかって・・・至極曖昧だな。まぁフェリスの為にも負けるわけにはいかないよな。というか、夏に負けるのはプライドが許してくれなさそうだ)


拳を防いだ剣杖と短剣を横に薙いで払い、リーチが恐ろしく長いレーヴァテインで相手を牽制する。


「というか夏!あんたさっきから態と気づかないふりしてんだろ!?俺ちゃんと意識ありますけどぉッ!!」


―ブンッ


瞬間移動でもしたのか、というほど素早く夜の後ろに回りこみ、後頭部を狙われたのに感覚的に気がついた夜は寸でのところで避ける。

因みに当たってたら間違いなく即死です、はい。だって避けたときに掠った髪の毛がパラッて、鋏で切ったときみたいに落ちたんだものッ(泣)


「人が話してる最中に拳握んな!!しかも今の本気だったろ!?」

「ははっ、馬鹿言うな夜。一遍殴られろ。」

「お前は鬼か!?」


会話終了と同時に夏葉の浮かべていた笑みがスッと消える。どうやら夏葉はマジ切れ状態のようだ。こんな状態のときは放っておくに限る。というか打つ手なし。


(それに、このままじゃ確実に俺、こいつに殺される!!)


先ほどから徐々に髪の毛が焦げてきている気がするのは、決して気の所為ではない。そして角に追い詰められている気がするのもおそらく間違いではない。さらにだんだん頬に掠るようになってきたのも勘違いではないのだろう。


―チリッ


「ッ・・・」


《ご主人様!!》


もろに当たったわけではないものの、少し掠るだけでも焼け付くような痛みが頬を襲う。剣で防ぐ隙を与えず、夏葉の拳は一切の容赦なく迫ってくる。夜の今のような状態のことをピンチというのだろう。


(・・・仮面被ってたときの俺は一体どうやってこんなのと戦ってたんだ!?レンはリーチが長すぎて接近してくる相手に上手く当てることが出来ない。短剣なら辛うじて振れるがその隙がない。・・・かといって合成獣(キメラ)を出すのは何かやばいような気がするな・・・)


レーヴァテインが持っている能力の1つ。剣杖で斬ってマナレベルに分解したものは生物無生物問わずに召喚することが可能になる。

先ほど突然夜の右手に現れた短剣は、予めレーヴァテインでマナレベルに分解してあったから、何もないところから短剣を出したように見えたのだ。そして以前、マナレベルに分解した合成獣(キメラ)も勿論召喚することは可能だ。しかしそれを今此処でやってしまったら、恐らく良くないことが起こる。本来、召喚術などというものは、在ってないようなものなのだ。その召喚術が存在していて、尚且つ恐ろしい魔物や魔獣までも召喚出来てしまうと世間に知られてしまった場合。夜には間違いなく良くない、少なくとも幸せにはなれない未来が待ち構えていることだろう。


(・・・と言っても、このまま追い詰められてたら意味ないんだがな・・・)


「ちょっ・・・もういい加減にしてッ!!というか助けて下さいよ!!おれがその黒フード相手にしますから!」

「断る。俺は此処で夜を一発殴らないと気が済まないのだ」

「まだ朝のことで怒ってるんですか?・・・ってヨル!?その黒フードが!?」


此処から少し離れたところで、必死にフェリスの攻撃を避けているハークは素っ頓狂な声を上げる。どうやら黒いフードが夜だと気がついていなかったようだ。大剣を避けるのに精一杯でそんなことに構っていられる余裕など、全くといって良いほどハークにはなかったのだろう。


「よっ、朝ぶりだな、ハーク」


一瞬視線をハークに移して笑みを浮かべながら、短剣を持っているほうの手を振る。


「ふむ、まだそんな余裕があったのだな。ならそろそろ本気を出すとするか」

「待て夏!思いとどまれ!それ以上本気出されても俺が困る!というかさっきまでのは本気じゃなかったのか!?」

「10分の1も出していないな「この鬼畜野郎ッ!!(少々泣き声)」


一瞬隙があった夏葉の拳をなんとか短剣で受け止め、それを力の限り思いっきり跳ね返して距離を取る。


《やはりそうでしたか。》


レーヴァテインの深刻な雰囲気漂う声が頭に響いてくる。


(・・・つまりその心は?)


《もしあの方が本気を出していましたら、拳一振りでここの地面パックリ割れてます♡》


「・・・さて、行くぞ。夜」

「俺の死因は生まれたときから老衰と決まっているんだッ。三十六系逃げるに如かず!」


これは戦略的撤退だ、と夏葉から逃げようと後ろを向いたときだった。


「きゃあっ!?」

「フェリスッ!?」


何処から湧いて出てきたのか、真っ白な鎧に真っ赤なマントをつけている青年が、フェリスの仮面を取って空いているもう片方の手で、彼女の手首を握っていた。それはフェリスの馬鹿力でも逃れることが出来ないほどの強い力だった。

そしてその青年とフェリスの周りを、同じような装備の兵士十人が囲う。


「皆さん、落ち着いてください!!神聖な大会中、申し訳ありません!どうか、この聖騎士、グランディア・カリーナの名に免じて、お許しいただきたい!」


フェリスの手首を握っている青年が、この闘技場全域に聞こえるように、でも怒鳴り声でもなく、寧ろ清清しく感じるような声音で叫んだ。すると、観客席が騒然となる。


「あの方はあの有名な聖騎士、グランディア様じゃないか!」

「何故、グランディア様がこんなところに!?」

「あぁ////なんて綺麗な水色の瞳なんでしょう・・・」

「太陽に輝く金髪もまるであれ自体が太陽のようだ・・・」

「グランディア様!!グランディア様!!」


「・・・あの騎士、どうやら有名なようだな」

「えっ?知らないんですか!?グランディア様のこと」

「あぁ。ハークは知ってるのか?」


夜と夏葉は、興奮して目をキラキラと輝かせているハークを眺めながら、興味なさそうに聞く。すると、待ってましたと言わんばかりに体を乗り出して熱く語る。


「グランディア様は、この国の第一皇女の護衛をしている聖騎士なんだ。あの通り美系で、そして勿論強く、剣で敵う人はおそらくこの国にはいないと思う。女性にも男性にも人気で、国民の憧れの的なんだ!勿論おれも憧れてるうちの一人なんだけど・・・なんでこんなところに・・・?普段は皇女の護衛で滅多に外に出たりしないって聞いてたんだけどな」


不思議そうに首を傾げて、試合場のど真ん中に立っている青年、グランディアを見つめるハーク。

夜はふーん、と呟いて怪訝な表情で青年を眺める。しかしどうしてもその青年を好きになれそうになかった。


「取りあえずその“グランディア様”とやら。フェリスの手、離してくれ。」


短剣とレーヴァテインを消し、青年とフェリスに向かってゆっくり歩き出す。すると、二人を囲んでいる兵士十人のうち二人がこちらに走ってきて、威嚇するように剣をこちらに向けてくる。どうやら答えはNOのようだ。


「黙れこの大罪人!」


青年が視線を鋭くこちらに向け、フェリスを夜から守るように肩を抱き寄せる。フェリスは抵抗していたが、やはり男性の力に少女は勝てないのか、振り払うことが出来なかった。


「・・・大罪人?誰が?」


何か嫌な予感がした。

とてつもなく、嫌な予感が。


そしてその予感は見事命中する。


「アグリキュル国、国王の娘、フェリンシア・テルカ・レーゼリアス様を誘拐した大罪で、お前を捕縛する!!」

「・・・は?」


―ガシャンッ


「っていやいやいや、ガシャンて・・・俺かよ!?誘拐なんてしてねぇし・・・大体姫様なんてそんなお偉い人、こんなところにいるわけない・・・だろ・・・?」


手首を鎖で縛られた夜の視線の先には、涙目になってこちらを見つめているフェリス。彼女のその表情を見て、何か嫌な予感が駆け巡る。

周りの兵士等によってフードを外された彼女の蜂蜜色の髪は、蒼穹の空には眩しい太陽の光に照らされて、美しい金色に光り輝いていた。その神々しい光に一瞬魅入られて、漆黒の瞳を側めてしまう。


「・・・まさか、あんた・・・」


彼女の意を決した瞳を見て、その時夜は確信した。


「私は・・・・・・アグリキュル国第一皇女、フェリンシア・テルカ・レーゼリアスです。・・・ヨルさん、今まで黙っていて、ごめんなさいっ・・・ひっく・・・」


フェリス、いやフェリンシアの透明な涙が彼女の頬をつたう。夜はその涙と何か他の物も一緒に、零れ落ちてしまったような気がした。






第22話 ~後編~終わり


感想を書いてもらえますと、今ならもれなく作者が大喜びして咽び泣きます。

そして評価してもらえますと、作者は地震の恐怖をひと時忘れて、楽しい時間を過ごすことができま(殴


昨夜も大きな地震がありましたが、今日も午後の授業中、震度5強の地震がありました;;

もう本当に怖ひです・・・orz



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