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自分と竜と仮想世界  作者: 狐白
第2章 銀色少女の紡ぐ唄
27/31

改訂中

 お気に入り登録して下さった方々、感想を書いて下さった方、評価して下さった方々、だめだめでチキンな作者が書いている小説を読んでくださっている方々、本っ当にありがとうございますm(__)m


最近お気に入り件数がどんどん増えていてとても嬉しいです^^


第21話更新です!

農国祭、最終日。

都市は朝から祭りの熱気に包まれていた。その熱気の中心部分にあるのは、強者が集い、強さを競う場所、闘技場であった。


『ではどのペアもクジを引きましたね?それでは試合の組み合わせをここに張り出しておきますので、必ず確認して下さい。また、第1試合に組み込まれているペアの方たちはこの後すぐに試合が始まりますので、準備しておいて下さい。』


「・・・っておれたち、第1試合ですか!?」

「ふむ。そのようだな。」


夏葉の手の中にはBと書かれた木の棒が握られていた。張り出された紙には第1試合、A対Bと書いてある。因みに全部で7ペアなので、運が良い1ペアだけはシード枠が与えられる。残念ながら夏葉たちはシード枠ではなかったらしい。


「行くぞ、少年。」

「えっ?相手は確認しなくてもいいんですか?もしかしたらあのフードの人たちかもしれないし」

「安心するのだ。そいつらと当たるのはこの試合に勝ってからだ「全然安心出来ないんですけど!?」気にするな。あんまり煩いと、焼くぞ?」

「すみませんでしたッ!!」


夏葉は朝から機嫌が猛烈に悪かった。何故なら先ほど此処に来る前に、食堂で二日ぶりに会った夏葉の親友、基夜に逃げられてしまったからだ。その所為か、先ほどから夏葉付近の温度が夏のように急激に上昇しているように思える。

夏葉の後ろにいいもしれない黒い何かを見て身の危険を感じ取ったハークは、即座に頭を下げて夏葉に謝ったのだった。













                       ♪













『さぁさぁさぁさぁ!!!お待たせしたぜっ大会三日目、第1試合が始まるぜぇええええええ!!!』


―ワァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!


『これから第1試合で戦う2ペアを紹介するぜッ!!まず東側、何より力っ、力自慢の2人組み!!コンビ、『ハッスル野郎』のザンガとグエィラだぁぁぁぁああああ!!!そして西側は今大会に珍しい子供二人だけでここまで勝ち抜いてきた奇跡のチルドレンペア!『(ホワイト)(サマー)』のナツとハークゥゥウウウウウッ!!』


「・・・ふむ。殴り甲斐がありそうだな。」


緊張?なにそれ?という具合に夏葉は楽しそうに唇を歪ませて、筋骨隆々な相手を獰猛に切れ上がった紅い瞳で観察していた。その横で短剣を構えているハークは、夏葉とは違った意識を相手に集中させている。

司会が紹介した通り、夏葉たちの相手はどちらもものすごい身体つきをしていた。筋肉が隆々としていて、剣で斬りつけてもそう簡単に傷がつきそうにない硬さを持っている。その自慢の筋肉を見せびらかすように、上半身には防具を何もつけていなかった。余程の自信があるのだろう。


「殴り甲斐って・・・あの筋肉、ただ殴っただけでは簡単に傷つきそうにないですよ?まぁこの短剣でも傷つくかどうか分からないですけど・・・」


自分が構えている短剣に目を向けた瞬間、光が反射して眩しく目を瞑ってしまう。それから目を開けて、相手から来るプレッシャーに対抗するように気を引き締める。そして相手を睨むように鋭い視線を向けた。


「あんなものは突き詰めればただの肉の塊なのだ。」

「なかなか言ってくれるじゃねぇか!あぁ!?そんなひょろっこい体でなんで此処までこれたんだかな。ガッハハハハハッ」


夏葉側から見て右側に立っている男が大笑いをしながら、片手で持っているでかい斧を肩の上に持ち上げた。そしてもう1人の男もモーニングスターを構え、戦闘体勢に入る。


「子供が粋がってんじゃねぇぞ。これからまだ先が長いのに、こんなところで再起不能になるなんて・・・哀れだな」

「再起不能になるのはお前ら雑魚どもだろう?・・・ふむ。そんなことも分からないお前らの方が哀れだな。まぁ雑魚は雑魚らしく一瞬で沈んでもらおう」


ふっ、と鼻で相手を笑って夏葉はナックルに炎を纏わせる。


「なんかすごい挑発してるしッ!?いいんですか!?そんなことして・・・」


慌てたハークは此処が闘技場のど真ん中であることも忘れて叫ぶが、夏葉はそんなこと知るか、といった飄々とした表情でポキッポキッと首を鳴らす。どうやらもうやる気、いや殺る気満々のようだ。


(・・・絶対今日の朝の怒り、ぶつけるつもりだ・・・絶対)


隣からものすごい量の殺気を感じて、顔面蒼白になりながらハークも戦闘体勢に入る。


『両者、口喧嘩じゃなくてそろそろ拳で語っていこうぜぇぇえええ!!!それじゃあ行くぜ!!第1試合、開始ぃぃいいいいいいッ!!!』


―ヒュッ、バキッガキャッ


「な!?ガハッ!!」

「グハッ!!・・・な、なんだと・・・?」

「ふむ。やっぱ雑魚だったか。あまりにつまらなさすぎて怒りが収まってしまったではないか」


―バタッ、バタッ


試合が始まって数秒、夏葉の姿が一瞬ぶれて見えなくなったかと思うと、いつの間にかもとの定位置に戻っていた。そして、それと同時に先ほどまであったプレッシャーがなくなるとともにずぅうんという低い音がしたかと思うと、眼前の男二人が一瞬にして地に伏した。


「えぇええぇえええ!!?ちょ、ちょっと!!何してるんですか!?おれの出番が全くないじゃないですか!!」


(((突っ込む所違うだろっ!!?)))


観客席にいる全ての観客の声が見事にシンクロした瞬間だった。


『おおおぉおっと!!!これはすごい!!なんと、試合始まってから数秒も経たないうちに大男二人を一瞬にして伸してしまったぁぁあああああ!!圧倒的!!勝者、『(ホワイト)(サマー)』のナツ&ハークペアだぁあぁあああああああ!!!』


―ワァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!


司会が勝者を告げるとともに割れんばかりの歓声が闘技場に響く。

何もせずに終わってしまったハークは短剣を仕舞い込み、呆れたように半眼で夏葉を睨んだ。


「もうあれで怒りは収まったんでしょう?次の試合はこんな一瞬で終わらせるなんてこと、しないで下さい!おれだって力試ししたいんですから。」

「うむ。おそらく次の試合では少なくとも一瞬で終わる、なんてことはないだろう」

「・・・あのフードの二人ですね。でもあのフードが勝ち上がってくるか分かりませんよ?」

「・・・ふむ。」


夏葉はそれ以上は何も喋らずに、控え室に帰っていった。






「あの、怪我とか全然してないし、控え室に行く必要ないんじゃ・・・」


控え室には次の試合に出る予定の人たちの集合場所であって、試合が終わった人は控え室に戻ってくる必要はないはず、とハークは不思議に思いながら夏葉のあとをついていく。


―ガチャッ


「もうそろそろ第2試合が始まります。CとDのクジを引いたペアの方々は試合場に来てください。」


係りの女性が入り口から入って声をかけてからまた外へ出て行った。次の試合に出るペア、つまりCとDのクジを引いたペアが動き出す。先ほどまで椅子に座って話していた仲が良い男女の二人組み、それから壁に寄りかかっていたフードの二人組みは夏葉たちと入れ替えに外へ出て行く。


「・・・・・。」


夏葉の隣をフード二人組みが通り過ぎるその瞬間、夏葉の瞳は側められ、気をつけなければ分からないほどの殺気を飛ばす。それに気がついたのか、背が低い方のフードは、


「ふふっ」


と可愛らしい声で笑い、隣を歩いている背が高いほうのフードの腕に自分の腕を絡ませながら歩いていった。


「・・・・・。」

「どうかしました?」


歩みを止めた夏葉が気になって声をかけるハーク。すると、夏葉はふむ、とだけ答えると控え室にはもう用がない、とでもいう風にさっさと出て行ってしまった。後に残されたハークは訳が分からず、不思議そうに首を傾げながら出て行く。


「次の試合、見なくていいんですか?」


どうやら今夏葉が向かっているのは観客席ではなく、自分たちの部屋のようだ。今からおそらく次の試合に当たるだろう相手が出る試合が始まるというのに、何故見に行かないのだろうか。ハークはそう思って眉を顰める。


「少年は観客席に行っても良いぞ。俺は疲れたのだ。部屋に戻って少し寝る。」

「疲れたって・・・あれで疲れたとは思えないんですけど・・・。分かりました。おれは観客席に居ます。」

「うむ。集合時間になったら控え室に行く。」

「了解です。」


ハークは内心ため息をつきながら、もと来た道を引き返していった。ハークが視界から消えるまで見送った夏葉は、紅い目を閉じるとその場から一瞬で姿を消した。













                       ♪













「おぃっ、ユシル!お前はあの後ろにただ突っ立ってるだけの黒い奴を狙え!!」

「OK!じゃあ援護よろしくね!行くわよ!」


ユシルと呼ばれた女性は長剣を片手に、夜の方を狙って飛び出す。どうやら女性が前衛で、男性が後衛のようだ。

第2試合、夜たちの相手であるこの二人は昨日の試合で夜たちの試合を観戦していた。その試合で戦力分析をして二人で考えた作戦は、“後ろにただ突っ立っている奴を集中狙い”であった。二人にはフェリスが戦えない(あくまで予測)夜を守っているのではないか、と考えたのだ。しかし、そこでフェリスが邪魔になってくる。ユシルの役割はフェリスの攻撃を掻い潜って、夜を撃破すること。ユシルは威力よりスピードに秀でている。それを自分で知っているので、彼女はフェリスの攻撃を掻い潜れると確信して向かっていく。


「ふふっ」

「笑っていられるのも今のうちよ!モルゲンさん!!」


フェリスの大剣が大きく前に突き出される。その瞬間、彼女は後ろに避けることはせず、逆に前に進みフェリスの攻撃を避けた。


「抜けた!!」

「そのまま行け!ユシル!火よ飛べ!火球(ファイヤーボール)!!」


男が突き出した杖の上に、その名の通り火球が三つ姿を現し、動きを止める為にフェリスの方へものすごい勢いで飛んでいく。


(行ける!!これで、私たちの勝利は確実!!)


「・・・なんてことは思わないほうがいい。」

「え!?」


何かを相手が呟いたが、ユシルには聞こえなかった。しかし、そんなことは勝利の前には些細なこと、と言わんばかりに表情を元に戻し、思い切り剣を振り下ろした。剣は吸い込まれていくように黒いフードに突き刺さっていく。


―ドゴッ、ドゴドゴッ


それと同時に火球が地面に着弾し、鈍い音とともに地面が焦げ砕ける。それを余裕の表情で上に飛び、避けるフェリスの表情はパートナーの危機だというのに、何故か楽しそうに笑っていた。その笑みを視界に捉えた男は背筋に悪寒を感じ、黒いフードに剣を突き刺しているパートナーに目を向ける。


(勝った!!)


確かな剣が刺さる感触とともに、ユシルは勝利を確信した。


「・・・え?」


―ドゴォッ


確信した瞬間、視界が反転する。一瞬何が起きたのか分からず、黒いフードの方へ目を向ける。先ほどまで自分の手の中にあったはずの長剣が相手の左手に収まっていて、何かを蹴った後のように右足を高く上げていた。


「かはっ」

「ユシル!!?」


男の悲鳴じみた叫び声が聞こえる。それで彼女はやっと気がついた。


(私が、あの人に蹴られて、場外に吹き飛ばされたんだ・・・)


黒いフードの右足がゆっくり下がる。飛ばされる寸前、彼女は仮面の奥にある無機質な漆黒の瞳と目が合い、今まで感じたことのない底知れぬ恐怖を覚えた。

ユシルが地に体を打ち付けて気絶すると同時に、毎度おなじみハイなテンションの司会が試合終了を告げる。


『試合終了ぉぉぉおおおお!!勝者、『ラヴリーうさにゃん』のモルゲン&ナハトペアぁぁぁああああああ!!!』


―ワァァァァアアアアアアアアアアアア!!!


「ユシルッ!!」


彼女の元へ治療係の魔術師とパートナーの男が駆け寄る。魔術師が言うには彼女の命に別状はないようだ。それを聞いて彼は気が抜けてはぁ、とため息を吐く。それから何かを考え込むように男は黙りこくって、気絶している彼女を視界に映していた。






その頃夏葉は試合が良く見える、ある高い場所に立って試合を眺めていた。夏葉の瞳は、出口に向かって歩いているフード二人組みに向いている。


(・・・たしかにあの剣は黒フードに突き刺さっていた。しかし、次の瞬間にはあいつの左手の中に収まっていた。・・・次の試合、本気でいかなければやばそうだな。)


紅い瞳の中にある瞳孔が縦に切れ上がる。鋭く獰猛な牙を口からはみ出させるように、彼は唇を三日月型に歪ませた。


「ふむ。次は楽しめそうだ」


その日の空には火の粉が舞っていたという。






第21話 終わり


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