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自分と竜と仮想世界  作者: 狐白
第2章 銀色少女の紡ぐ唄
26/31

改訂中

相変わらず余震は続く一方でチキンな自分は怖くてトイレも長く入れません・・・orz 早く収まって欲しいです;;


第20話更新しました!


―ガタッ


「私、デザート取りに行ってきますけど、ヨルさんは何か持ってきて欲しい食べ物あります?」

「俺も一緒に行く。持ってきてもらうのはなんだか悪いしな。」


椅子を引いて、皿を片手に持ちながら立ち上がる。フェリスも夜の後に続いて料理を取りに歩いていった。


「・・・シィーリィ。」

「ん?もぐもぐ・・・ごくっ。何、兄ちゃん?」


大食堂に来て一回も喋らなかったヴェクスがフォークを皿の上に置いて、シィーリィの方に深緑の瞳を向ける。シィーリィは首を傾げながら聞き返した。


「あのフード、何処かで見覚えがないか?」


ヴェクスの視線の先には、夜と一緒に楽しそうに料理を選んでいるフェリスの姿があった。フェリスは変わったデザインの茶色いフードマントを被っている。彼女が動くたびに一緒に揺れ動く、あの先っぽだけが白く染まっている尻尾はとてもかわいらしい。

シィーリィは彼女に目を向けながら、チョコレートシロップがたっぷりかかっているミニトマトにフォークをプスッと刺す。


「あの尻尾と犬耳、すっごいかわいいよね!あれぼくも欲しいなぁ・・・」


―パクッ


口の中でもごもごとミニトマトを転がしている能天気なシィーリィを一瞬うらやましく思いながら、ヴェクスは弟に気づかれないようにため息をついてフェリスに鋭い視線を向けた。


(・・・シィーリィが気づいていないならあまり下手に言わないほうがいい。・・・それにしてもあのヨル、とかいう青年はまるでトラブルメーカーだな。アイツが近くに居るだけで懸念が倍増する・・・)


そしてフェリスの隣にいる夜に、疲れ果ててしまったような雰囲気の瞳を向ける。そんな兄を見つめて、シィーリィは何が面白かったのかクスッと面白そうに笑う。そしてその笑い声を聞いて怪訝な表情をしたヴェクスは、瞳にシィーリィを映した。


「兄ちゃんも、なんだかんだ言って結構ヨル君のこと認めてたりするよね。」

「何を言うかと思えば・・・」


呆れたようにため息をついて、先ほど皿の上に置いたフォークを手に取りサラダに突き刺す。


「だって兄ちゃんさ、もし本当にヨル君のこと嫌ってたら、ぼくがどんなに頼んでも2回目は部屋に入れたりしなかったでしょ?それに今が典型的な例だけど、兄ちゃん、フェリスちゃんのこと嫌いなの?兄ちゃん、嫌いな人がいると絶対口を開かないもんね。」


サラダを口に入れるのも忘れて、ぽかんとシィーリィの顔を見つめるヴェクス。それから気まずいのか視線を逸らして、眉間を人差し指で押さえた。


「やっぱそうでしょ?兄ちゃんのことなんかお見通しなんだからね!」


自慢げに胸を反らしてえっへん、と笑うシィーリィ。ヴェクスは気を取り直すようにサラダを口に運んで入れた。

そこへ夜とフェリスが帰ってくる。


「あ、おかえり!じゃあぼくもデザートにチョコレートでも取ってこようかな」

「ってまだチョコレート食べたりないのか!?」


夜は驚いてつい突っ込んでしまったが、椅子から立ち上がりながらシィーリィは夜が持っている4枚の皿に盛られた料理を見て言う。


「それはヨル君もでしょ?じゃあ行ってくるね!」


いってらっしゃい、とフェリスは皿をテーブルに置いて手を振る。それから椅子に座って、苺ケーキにきらきらと輝く目を向けながら苺にフォークを刺して、パクッとおいしそうに食べる。


「フェリスは苺が好きなのか?」

「はぐはぐ・・・ごくっ、苺も好きですよ。でも一番はアイスです!アイスはこの世で1番おいしい食べ物です!!」


頬に手を当てて、以前食べたアイスを頭に思い浮かべてうっとりするフェリスを面白そうに眺めながら、夜は口の中に入っているウィンナーを飲み込んで相槌を打った。それから、無言でコーヒーを飲んでいるヴェクスをチラッと見る。なんとなくだが夜は、ヴェクスがフェリスを警戒しているような雰囲気を感じ取っていたのだ。


「・・・ヨルさん?どうかしました?」

「いや、何でもない。それよりフェリス、そのケーキ少しだけ食べてみてもいいか?」


フェリスが、料理を食べずにボーっとしていたのを不思議に思って聞いてきたのを苦笑しながら首を横に振って、誤魔化すようにフェリスが今食べているケーキを指差した。


「あ、いいですよ。」

「じゃあいただきます。」


フォークでケーキを少しだけ分けて口に放り込む。それから数秒間、黙って咀嚼しゴクンッと飲み込んだ後、幸せな表情をして、


「・・・うまい。」


と周りにピンクの花を咲かせながら呟く。それを見たフェリスは顔を真っ赤にしながら、胸の上で手を組んで、夜の幸せそうな顔を眺めていた。そこへシィーリィがチョコレートシロップを、原型が何か分からなくなるまでかけた食べ物が乗っている皿を持って帰ってくる。


「ただいま~」


シィーリィの声で我に返った夜は、お帰りと返事をする。それから喉が渇いたな、と炭酸水が入っているコップに手を伸ばし、飲もうと口に含んだときだった。


「あっ、そういえばヨル君、なんかさっきそこで君の親友だって人と会ったから、ほら。」

「うむ。案内ごくろう少年。夜、久しぶりだな。」


―ごふっ


「げっほ、ごほっ・・・」


炭酸特有の喉をせりあがるかんじを感じると共に、口の中に含んだ飲み物をもれなくコップの中へ全て返却した。外に噴出さなかっただけマシだろう。


「だ、大丈夫!?」

「ヨルさん!?」


咳き込む夜の背中をフェリスが叩いていると、収まったのかため息をついて、嫌々顔を上げる夜。そこには目が覚めるような紅い髪を持つ青年、夏葉とその隣で目を大きく見開いて驚いている少年、ハークがいた。


「ヨル!!今まで何処にいたんだよ?心配したんだからなっ!!」


そして夜の脇まで歩いてきて、腕を組んで顔を真っ赤にしながら叫ぶ。そんなハークの頭に手を乗っけて、


「悪かったな。心配かけて・・・ハーク。」


と苦笑しながら謝る夜。


「別に、ヨルが2日間帰ってこなくたっておれは平気だったんだけどな!////」

「はいはい。ハーク王子様はお優しいございますねー」

「ば、馬鹿にすんなっ!ヨルの臆病(チキン)野郎!!」

「なんっ「夜、お前図書館に調べ物に行く、と言ってたな?」


場の空気が凍った。


夏葉のニコリとも笑っていない絶対零度の瞳と、夜のあー面倒なのが来た的な雰囲気の瞳がシィーリィの頭上でぶつかる。シィーリィにとってはいい迷惑だ。そしてその沈黙をかき消すように口を開いたのは夜だった。


「言ったが?」

「それだけだったと俺は記憶しているのだが?そのまま2日間帰ってこない、なんて言ってなかったよな・・・?」


(・・・まずい・・・。夏のあの無表情、見るのは何年ぶりだ?これ以上怒らせたら絶対まずい・・・)


夏葉の背後から凄まじい量のどす黒い、何かおどろおどろしいものが見えるのは自分だけなのだろうか、と夜は頬をひくっと引き攣らせる。一歩、一歩とこちらに歩いてくる夏葉には絶対に捕まるな!と本能がそう告げていた。夜の顔が夏葉との距離が縮むにつれて青白くなっていく。


「わ、悪かったって。だからそれ以上こっちに来るな触るな近づくな!なんだその手に持ってる縄っぽいものは!?待て、夏、早まるな!俺には輝く明るい未来が待っているんだ!」

「問答無用☆大人しくお縄につくのだこの不良野郎ッ!」

「誰が不良だッ!あんただけには言われたくないっ!」


―タッ


本能に身を任せ、夜は夏葉の縄から逃れるためにそこから思いっきり飛んだ。


(・・・って予想に反して飛びすぎたッ)


今夜たちが座っていた場所から食堂の入り口まで約10m。そこまで飛ぶ気はなかったものの、つい勢いだけで入り口付近に綺麗にストッと着地してしまう。最初こそ驚いて固まっていたが、夜はハッと気がつくと、夏葉が動き出す前に、と急いで何処かに走っていってしまった。余程夏葉が怖いらしい。


「・・・ふっふっふっ・・・俺から逃げられると思うな。お前の行動なぞお見通しなのだっ!!仏の顔も三度まで。一回ならともかく三回目は許さんっ」


残された夏葉は急に俯いて不気味な笑い声をその静まり返った食堂に響かすと、獰猛な牙を口からのぞかせてその場から飛び上がり、入り口まで一気に移動する。それから罵詈雑言を吐きながら夜の後を人間とは思えない速さで走っていった。


「「「・・・・・。」」」


まるで嵐が去っていった後の静けさがこの食堂を支配すること数秒、何もなかったかのように食堂はまた騒がしさに包まれた。話題はさきほどの騒ぎについてがほとんどなのだろう。

そしてその一部始終を1番近くで見ていた4人は、各々違う表情を浮かべていた。


(・・・あぁ、せっかくヨルさんと一緒の食事でしたのに・・・この後会える、といっても戦闘時は記憶がないわけですし・・・。もう少し隣でお話していたかった・・・)


フェリスは憂鬱そうに小さくため息をつきながら、残っているケーキをもそもそと食べている。フェリスの場合、最初に夜と会ったときにもう既に先ほどのようなジャンプを見ていたので、驚きはしなかったようだ。それともただ単に彼女の神経が図太いだけなのか。


「ってこんなところでボーっとしてる場合じゃ・・・せっかくヨルを見つけたのに、あの人はッ」


本当に疲れた顔をしてハークは人目を気にせずに半ば自暴自棄になりながら叫びつつ、二人を追う為に転移魔術を展開して、その場から一瞬で風のように消え去った。

因みに転移魔術はそう簡単には使うことが出来ない超高度な魔術だ。それを知ってか知らないのか、簡単に使うあの少年は一体何者なのだろうか、とシィーリィは珍しく真剣な表情をしていた。そしてその脇で重そうに頭を抱えているヴェクスを、誰でもいいから優しく慰めてあげて欲しい。


(・・・疲れた。)













                        ♪













(・・・なんとか夏を撒いてフェリスの部屋の前までたどり着いたが・・・)


肝心の部屋の鍵を所持している彼女が帰ってきていなかった。結構な時間食堂に居たのでもうそろそろ帰ってきてもおかしくない頃だと、そこで待つことにした夜は周りを警戒するように見回す。すると、その行動を不思議に思ったレーヴァテインが声をかけてきた。


《ご主人様?一体何をそんなに警戒していらっしゃるんですか?》


(あ、あぁ、レンか。あの馬鹿夏が俺の居場所を嗅ぎ付けて、ここにやってくる前に逃げるためだ。)


《あの方は古代竜(エンシェントドラドン)ですからね。竜は基本的、知能が人間のそれを上回っていますから逃げるのは大変だと思いますけど・・・》


暗にレーヴァテインは自分に“諦めろ”と言っているのだろか。しかし俺は諦めない、と左拳を作って顔の前まで持ち上げる。


(大変でも何でも俺は絶対に逃げ切らなくてはいけないんだ。あれに捕まったら間違いなくデットエンドだ。)


《大丈夫ですっ!!私がご主人様には指一本触れさせません!もし指一本でも触れたらいかに魔物の頂点である竜だとしても(マナレベルに)分解しますっ「それはやめてくれッ!」


かわいい声でそんな物騒なことを言わないで欲しい。思わず声を出して叫んでしまった夜は慌てて辺りを窺う。それから人の気配がないと分かって、息を思いっきり吐いた。

ただ、レーヴァテインが夜を思ってくれているのはよく伝わってくる。そんな思いがくすぐったくて夜は苦笑しながら、でも少し嬉しそうに、


(・・・ありがとな。レン)


と、そっと呟いた。


《はい・・・////》


彼女もとても嬉しそうに返事をする。それを、温かい気持ちで聞いていた夜だったが、ふと気がついたようにレンにある質問をした。


(そういえば、レン。俺が試合のときにつけてるあの仮面について何か知ってるか?)


《あの、対の仮面の形をした魔具のことですよね?》


夜が縦に首を振る。


《あれは彼女が言っていた通り、感情をコントロールする為の魔具です。激情の仮面は感情が昂り、冷酷の仮面は感情が抑制されます。特に危険性はないので大丈夫ですよ。》


(あれをつけてる間だけ記憶が飛んだりするのも危険じゃないのか?)


すると彼女が首を傾げるような雰囲気と共に、声が聞こえてくる。


《記憶が飛ぶ・・・ですか?あの魔具にはそんな特性ないと思ったんですが・・・。じゃあ仮面をつけている間のことは覚えていらっしゃらないんですか?》


(あぁ。・・・レンが言ったことだし嘘だとは思えない。だとするとそれとも何か別の原因があるのか・・・?因みにあれをつけた後に眠くなるってのは・・・)


《ないです。》


きっぱりとしたレーヴァテインの声が頭の中に響く。

では何故、昨日も一昨日もあの体験したことのない強烈な眠気に襲われたのか。仮面をつけている間だけ記憶がないのか。余計訳が分からなくなってしまった夜が唸りながら頭を抱えていると、後ろから優しく肩を叩かれる。


「ヨルさん?」


気がついて振り向くと、食堂から帰ってきたフェリスに、シィーリィとヴェクスがそこに居た。


「フェリス。ごめんな、先に帰ってきちゃって。」

「いえ、気にしないで下さい。それより、待っていて下さったんですよね?今すぐ鍵開けますから!」


フェリスは本当に気にしていない様子で、寧ろすごい輝く笑顔で部屋に迎え入れてくれた。心なしか頬が少しだけ赤く染まっていた。それに疑問を覚えながら、シィーリィの方に向き直る夜。


「シィーリィも悪かったな。」

「ううん、だいじょーぶ!それより今日の試合、見に行くからね!頑張って勝ってね!そしたら何処かでパーティーやろうよ!」

「・・・そうだな。応援頼んだ!」


シィーリィと夜はお互いにグッと親指を立てて笑い合う。それからヴェクスが嫌味っぽく鼻で笑いながら部屋に入っていった。


「了解ッ!!じゃーねー」

「・・・まぁ精々頑張るんだな」


―バタンッ






「・・・ふぅ・・・疲れた・・・」


夜はソファーに寄りかかるように座り、ぐてーっと寝転がる。捕まったらデットエンド追いかけっこ(注 良い子も悪い子も、遊び盛りな子も真似をしてはいけません)をして相当精神的に消耗したようだ。


「ふふっ、ヨルさん、今からのほうがもっと大変ですよ?」


犬耳つきのフードマントを脱いで、きちんとたたみベットに置いたフェリスは、試合のときに被る仮面とフードマントを持ってくる。


「・・・ただ戦っている間記憶がぶっ飛んでるから何がどう大変なのかいまいち分からないんだがな。」

「それは私も同じです。それよりも、今日で決まります・・・全て。・・・ヨルさん、精一杯頑張って優勝しましょう!!」


一瞬影を落としたフェリスの表情を見て、夜は目を側めたが、その後すぐにいつも通りの笑顔に戻った彼女を見た夜は微笑んで、


「おう!」


とフェリスの頭に手をぽんっと置いた。





                           第20話 終わり


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