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自分と竜と仮想世界  作者: 狐白
第2章 銀色少女の紡ぐ唄
24/31

改訂中

遅くなってしまいましたm(__)m

ライフラインが全て復活してから5日経ちました。まだ水は薄茶色ですがなんとか生きていけてます^^;

ですが、今度は原発の問題が・・・(:_;)一体これからどうなるのでしょうか・・・。愚痴を零してしまってすみません;;

第18話更新です!

時間はもう既に正午を過ぎ、ちょうど日が傾いてきた頃。夜たちが出ることになっている第6試合が始まろうとしていた。

正面から見て右側には、杖を構える天使のような少年、シィーリィと、二つの剣を交差して構えている深緑の瞳を持つ青年、ヴェクスは空気まで切り裂いてしまいそうなほどの殺気を出している。そして正面から見て左側には、フードを被った性別も特定できない二人組み。1人は身の丈を軽く超えている大剣を両手で軽々しく持ち構えていたが、もう1人は何の武器も構えずにただ突っ立っているだけだった。どう見てもやる気があるようには見えない。それでもその二人組みに相対する少年と青年は油断しているどころか寧ろ必要以上に相手を警戒していた。


『いよいよ今日の試合も残すところ後2つ!!盛り上がっていこうぜぇえええ!!!エリア6で生き残ったのはこの2ペアだぁああああ!!東側、523番のヴェクス&シィーリィペアぁあああああああ!!!それに対して西側は561番!モルゲン&ナハトペアだぁぁああっ!!気合は十分かぁあいお二方!!!それじゃあいくぜ!!第6試合!レディイイイ、GO!!!』


試合開始を合図に、ヴェクスとフェリスが先行して飛び出した。フェリスは大剣を扱っている所為かヴェクスの方が幾分動きが早く、フェリスは大剣を振るった時にはもう既に彼は彼女の背後に移動していた。


―ガキャッ


勢い余って地面にフェリスの大剣がめり込む。その隙をヴェクスが見逃すはずがなかった。背後に回ったヴェクスは、一瞬動きが止まった彼女のがら空きの背中に双剣を振るう。そのときに振り返ったフェリスは笑みを浮かべていた。その笑みにぞっとしながらも最後まで双剣を振り切ろうとする。


「うふふっ、甘いわ」

「!!」


フェリスは地面にめり込んだ大剣を抜くことをせずに、そのまま前にステップを踏み移動する。その為ヴェクスの剣は空を切り、体勢を崩されたヴェクスは整えないまま、その勢いで前を走っているフェリスに追撃を加えようと膝のばねを使って彼女を追う。フェリスが向かっている先は、杖を構えて魔術を唱えているシィーリィがいる。


「シィーリィのところには行かせんっ」


視線を鋭くさせて地を蹴り、一瞬でフェリスに追いつく。そのまま剣を前に突き出すが、後ろが見えているはずがないフェリスはその攻撃が来ることが分かっていたかのように、スッと左に上半身だけを傾けて避けた。


「いくよ!(アクア)(エッジ)!!」


杖の先で水色に輝いている藍玉(アクアマリン)から出た水が刃の形になってフェリスを襲う。しかしそれすら予想していたかのように後ろに飛んで避けた。


「あっ!?」

「シィーリィ!避けろ!!」


―ヒュッ、パリィッ


そしてその避けた姿勢で懐から短剣を一本取り出し、それをシィーリィに向かって投げる。それを杖で受け止めたのだったが、短剣が偶然にも杖についていた宝石に当たり綺麗に真っ二つに割れてしまった。


「あっ、杖が!!」

「杖がなければ魔術は使えないのでしょう?ふふっ。あははははっ!!後はあなただけよ!!」


―ガキィンッ


大剣と双剣がぶつかり合う。しかし大剣の重みは半端なく、ヴェクスが受け止められたのは双剣を微妙にずらして衝撃を軽減することが出来たからだろう。


「・・・くっ」

「あはははははっ!このままひれ伏せッ!そして地面に沈めっ!」


正面で向かい合う二人。仮面の裏に見える澄み切った瞳は、深緑の鋭い殺気に満ちた視線を捉えながらも余裕で満ちていた。ほんのり色付く桜色の唇は楽しそうに笑っていて楽しんでいる雰囲気さえ漂っている。しかし一瞬ピクッと眉を動かすと、優勢だったのにも関わらずフェリスは剣を引き、後ろへバッと引き下がる。


水滝(スプラッシュ)!!」


フェリスの行動とほぼ同時にシィーリィの声が聞こえてきて、先ほどまで居た真下から水がものすごい勢いで吹き上がってきた。もし当たっていたら無事では済まなかっただろう。


「避けた!?何で!?」

「シィーリィ!!驚いている暇はない。」


先ほどフェリスはシィーリィの要であった杖を破壊した。普通だったらこれで魔術師は魔術が使えなくなるはず。しかしシィーリィは元から魔力量が高かった為に要なしでも魔術が使えたのだ。それが相手にとって予想外のことであったならばさっきの攻撃を見切るのは相当難しい・・・はずなのに何故彼女は避けることが出来たのか。


「う、うん!分かった!」


取りあえず今は戦いに集中するべきだ。兄の言うとおりだ、とシィーリィは頭の中で魔術を構成し始めるが、そのとき視界にチラッと黒いフードが映った。


(・・・試合が始まってから、まだ一回も動いてない。一体何をしてるんだろう・・・魔力を練っている様子もないから詠唱しているわけでもない。・・・って今は構成に集中しないとっ!!)


シィーリィの足元に水色に輝く陣が浮かび上がる。


シィーリィが魔術を構成しているとき、フェリスとヴェクスは再び刃を交えていた。ヴェクスはフェリスの大剣を正面から受け止めることをなるべく避ける為に、素早く動き大剣の短所である動きの重さを利用してフェリスを端に追い込んでいく。


「・・・成る程。ふふっ」

「何がおかしい?」


追い詰められているのは彼女なのに。笑っていた。

眉根を顰めて鋭い眼光を緩めずに相手を見据える。しかし彼女の意図は何も見えてこなかった。ヴェクスは攻撃の手を緩めずにフェリスを追い込んでいく。


―キィン、ガキィンッ


(・・・くっ・・・重いっ。だがコイツ、何を考えている・・・?)


「何を考えていても貴方には関係のないこと。だって、貴方は此処で終わるんですからッ!!」

「兄ちゃん!!避けて!水の王者よ!氷の王女よ!その冷たい手を結び、目前の敵を永遠に屠れ!!氷結洪水(フラッドオブアイス)!!」


フェリスの言葉に重なるように、シィーリィの綺麗な声が魔術の詠唱となって高らかにその場に響く。そしてその魔術が発動する瞬間、今まで動かなかった夜が動いた。

日の光に反射して輝く銀色の剣がいきなり夜の手の中に現れ、黒い残像を残して魔術が発動する瞬間を狙って夜は剣を振るう。


―パンッ


「!!?えっ?」


シィーリィの間の抜けた声が聞こえる。

何かが割れるような耳を劈く音と共に、発動するはずだった魔術は黄緑色に輝く粒子となって消失した。


―ガキィンッ


「余所見は禁物、ですわッ!!」

「!!しまった!」

「兄ちゃん!!」


一瞬動きを止めてしまったヴェクスの隙をついてフェリスは思いっきり大剣を振るったのだ。その為、油断していたヴェクスは間一髪でフェリスの剣を受け止めて折れてしまった剣と一緒に場外に吹き飛ばされる。


『試合、終了ォォオオオオ!!!561番!!』


―ワァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!


終了が告げられた瞬間、観客席から盛大な歓声が上がった。それとほぼ同時に場外に飛ばされてしまったヴェクスの下へ走り出すシィーリィ。


「兄ちゃん!!」

「ゴホッ・・・すまない・・・油断した」


折られてしまった二本の長剣と共に、上半身を起こして悔しそうに顔を俯かせているヴェクスがぼそっと呟く。シィーリィは涙目になりながら首を横にぶんぶん振って、


「また怪我させちゃった・・・えぐっ、ごめんなさい、兄ちゃん・・・」


と半泣きで先ほど大剣で勢いよく殴られた横腹の上に両手を置くと、無詠唱の水属性魔術で治療していく。そのとき本部から治療係りの白い服を着た魔術師が2,3名やってくるが、治療はこれで間に合っている、とヴェクスが言って追い返す。魔術師たちもシィーリィの手際の良さを見て大丈夫だと判断したらしく素直に帰っていった。


「もう大丈夫だ。・・・立てるか?」

「うん。ぐすっ・・・だい、じょうぶ。・・・あの、兄ちゃ「行くぞ。」

「・・・うん!」


立ち上がって闘技場を見回す。

もう先ほどまで此処に居た二人組みは何処にも見当たらなかった。


「・・・シィーリィ?」

「あっ、ううん!なんでもない!!」


ヴェクスが動こうとしない弟に声をかけ、それで我に返ったシィーリィは何かを払うように首を横に振って、兄の後を追っていった。













                        ♪













「アイツのことだ。おそらく眠気に負けて何処かで寝てしまったのだろう。夜は基本的何処でも寝られるある意味うらやましい体質の持ち主なのだ。今日辺りひょっこり部屋に帰っているだろう。」


観客席の一番後ろに、目が覚めるような紅い髪を持つ青年と焦げ茶色の髪を持つ爽やかな雰囲気の少年が並んで座っていた。


「いくら自分たちの試合が終わって取りあえず今日はもうやることないからって、のんびり観客席で試合観戦してていいんですか?・・・ヨル大丈夫なのかな・・・」

「大丈夫だ。そこら辺で野垂れ死ぬなんてことは・・・ないとは言い切れんが、いや寧ろその可能性は十分に有り得るかもしれんが、もう今日の試合はあと一試合だけだ。もし探すとしてもこれを見終わってからなのだ。」


ハークは思いっきりため息をついて、横に座っているパートナーを呆れた目で見つめる。そして心の中でふと呟いた。


(何であの二人って仲良いんだろ・・・。本当に親友なのか?)


「・・・ふむ。何か言いたげな視線だな。なんだ少年?」


絶妙なタイミングで夏葉がハークに視線を寄越す。ハークは驚いて心臓をばくばくさせながらも平静を装って、


「な、なんでもないです。」


と視線を逸らした。すると夏葉はまたふむ、と頷いてグラウンドに視線を戻す。


(この人エスパーかッ!!)


内心そう叫び、この空気をどうにかする為にハークは違う話題へと話を繋げる。今の心の声ももしかしたら夏葉には聞こえていたかもしれない。


「それにしても、先ほどの試合、すごかったですね。」

「うむ。・・・・・。」

「どうかしました?」

「いや、なんでもない。先ほどの試合、あの二人組みが少し気になってな」


一瞬紅の瞳を側めて何かを考えていた夏葉は、ハークの声で我に返る。それから先ほどの試合を思い出しているように何処遠くを見つめ、夏葉はそう言った。


「そうですね。あれ、一体何が起こったのか・・・」


(・・・なんかあの光、前に一度見たことあったような・・・あれ?でもそれって・・・)


二人して難しそうに眉を顰めていると、次の試合の始まりをハイテンションな司会が告げるのが聞こえてきて、二人して同時に顔を上げる。


「始まったようだな。さて、どちらのペアが勝つのやら。」


(・・・あれの光って前に要をヨルと見に行ったときに見たものだよな。・・・でもあんな剣は持ってなかったし、違うか。う~ん・・・取りあえず試合を観戦するのに集中しよ)


夏葉は先ほどまで難しい表情をしていたものの、試合が始まるとそちらに集中していたようだが、ハークは何かが引っかかり気持ち悪いまま試合を観戦する羽目になった。













                       ♪













今度は気がついたらフェリスの部屋の前だった。

仮面もフードも被っておらず、いつの間に着替えたのか普段の格好に戻っていた。肩にもご丁寧に猫のぬいぐるみが乗っかっている。そして、この場にフェリスがいないのが不思議だった。


(・・・今度は一体何があったのか・・・。ってか今更だが、あの仮面、もしかしてすっごく危険な物なんじゃ・・・)


つけている間だけ意識が飛んでいる。これでは仮面を被っている間、自分が何をやっていたのか全くわからない。そしてその記憶が飛んでいる間何をやっていたか唯一聞ける相手は、普段から戦闘時は記憶がぶっ飛んでいるという。


(いや、取りあえず明日までだ。フェリスと約束したんだ。・・・それにしても、またか。)


昨日とは比べ物にならないくらいの睡魔が襲ってくる。今日こそは部屋にたどり着く。そう決めて歩き出したはいいものの、


「・・・やっぱ、無理・・・か」


体が大きく傾く。


―ゴンッ


何かデジャビュを感じながらも意識は深く沈み、それと同時に瞼が閉じられた。





                          第18話 終わり


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