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自分と竜と仮想世界  作者: 狐白
第2章 銀色少女の紡ぐ唄
21/31

改訂中

以前の話と間が結構開いてしまいました;;申し訳ありませんm(__)m

地震の影響でこの通り、更新が不定期になりがちです。


やっとのことで第15話更新です。


間が開いてしまったので、一応前回のあらすじを・・・


フェリスと昼食を取った後、闘技場に来て変に視線を感じながらも登録する二人。その後、夜は疲れを癒す為に自分の部屋に戻り眠りについていたが、特訓をしていたという二人が帰ってきたときの音で目が覚める。ハークの服が焼き焦げていたのを不思議に思いながら、三人は食堂に向かい夕食を取る。部屋に戻り、明日のために早く寝てしまった二人の後を追うように夜も眠りにつく。それと同刻、フェリスは恐怖や不安を胸に眠りにつくのだった。

―トントン


「フェリ・・・じゃなかった。モル、いるか?」


大会当日。

早めに朝食を食べた後、夏葉とハークは45分も前に集合場所へ向かっていった。二人がこんなに早く部屋を出たのは、おそらくそのまま直接集合場所に行くのではなくて、何処かで体を動かす為だろう。その為、思ったより早くフェリスの部屋に来ることが出来た。彼女にこの部屋に何時ごろに来る、と昨日伝え忘れてしまったのを少し後悔しながらノックをして声をかける。すると、数秒後このドア壊れるんじゃないか?というほどの勢いでドアが開いた。後少し体を引くのが遅かったら、間違いなくドアの餌食となっていただろう。


「ヨルさんっ!!」

「(あっぶねぇ・・・)おはよう。」


引き攣る頬をなんとか抑えながら挨拶をする。これを天然でやっているというんだから彼女は本当にある意味すごい。もし当たっていたら、を想像してしまい一瞬動きを止めてしまったものの首を振って忘れ、元気に挨拶を返すフェリスの後に続いて部屋の中に入る。


「おはようございます!別に断りを入れなくても・・・。ここは二人の部屋なんですから。」


流石に今日は大会当日の為か着ぐるみは着ていないようだ。薄ピンク色の短めのワンピースを着て、その下には黒いスパッツを穿いている。靴は動きやすそうな焦げ茶色のブーツで、以前髪を結んでいたリボンはワンピースに合わせてピンクで、とても彼女の雰囲気に合っている。

奥に行くとテーブルの上に綺麗に畳まれたフードマントと二対の仮面が置いてあるのが見えた。フェリスは満面の笑みを浮かべながら、黒いフードマントと仮面を手にとって夜に手渡しする。


「はい、ヨルさん。」

「あ、さんきゅー。」


何の抵抗もなくフードマントを被る彼女は何処かひどく勇ましかった。


(・・・これは仕方がないんだ・・・。三日間だけ。そう、たった三日間だけだ。)


「・・・?ヨルさん?」

「(えぇいッこうなったらヤケだ!)何でもない。大丈夫だ。」


今から戦うことを考えるとなるべく動きやすいほうがいい。そう考えた夜は普段着ているコートを脱いで、黒いTシャツ姿になってからフードマントを被る。そして勿論その肩にあった黒猫のぬいぐるみもコートと一緒にソファーに置く。そして手に残っている黒い仮面に胡乱気な目を向けた。

冷たい感触のその仮面からは、相変わらず冷たく無機質な雰囲気が感じ取れる。まるで暗闇に閉じ込められた氷のようだ。

少し力を入れて握る。すると、目元にある青い模様が怪しく揺らめいたような気がした。


「あの・・・。」

「あ、あぁ。大丈夫。早く行かないと遅れるな。行こう」


フェリスが心配してくれているのが手に取るように分かり、夜はなんでもないような表情で笑って彼女の頭を軽く叩く。それから彼女が部屋のドアを開けて出るのを合図に、二人同時に仮面をつけた。


その瞬間、夜の思考は真っ黒に、そして氷のように冷たく染まっていった。













                        ♪













「ふむ・・・。どうやら個人の部とペアの部は同時に行うようだな。」

「はい。闘技場を二つに分けてやるそうです。おれたちが行くほうは正面から見て右側のエリアになります。これ、間違って反対のエリアに行っちゃったりするやつとかいるかもしれませんね。」


夏葉とハークは10分前にこの集合場所である受付場に来た。10分前、ということもあって大体のペアは集まっている。ペアの部の参加者が集まっている所為かとても人数が多く、一歩も動けない状況で、この状態がずっと続いたらストレスが溜まって喧嘩でも起きそうな雰囲気だ。


「しかしこの人数だと・・・最初は混戦になりそうだな。」


夏葉は面白そうに唇を吊り上げる。それを見て、ハークは背中に得体の知れない悪寒が走り、少しだけ夏葉から距離を取った。


(何で混戦になりそうとか言って楽しそうに笑ってんの!?絶対またなんかある・・・。気をつけないと・・・。)


ハークは身の危険を感じて腰に挿してある短剣をぎゅっと握り締めて、そう心の中で呟いた。


『今からペアの部、武闘大会を開催します!参加者は正面から見て右側のエリアへお進み下さい。』


無属性魔術で拡張された女性の声が聞こえてくる。すると今まで騒がしかったこの場が一気にしんと静かになり、開催が宣言された途端に雄たけびを上げる者を始めとしてまた騒がしくなった。その声に従って此処に集まっていた参加者はぞろぞろと闘技場へ移っていく。

夏葉も例外でなく、それを聞いた途端獰猛な笑みを浮かべてその波についていく。竜の血が騒ぐのか、唇が吊り上ったときに見えた牙はとても鋭く何処か危ない雰囲気を漂わせていた。

全員が移動し終わると、またさっきと同じ女性の声が聞こえてくる。


『このエリアはまた7つに分けてあります。1~99の番号の方は1のところへ、100~199の番号の方は2のところへ、200~299の番号の方は3のところへ、300~399の番号の方は4のところへ、400~499の方は5のところへ、500~599の番号の方は6のところへ、600~691の番号の方は7のところへ移動してください。ルールはいたって簡単で、そのエリアから出ないで最後まで立っていた2ペアのみ、次のステージへ進むことが出来ます。因みに、ペアの片方が倒れても失格となりますのでご注意下さい。ですから次のステージに進めるのは合計14ペア、ということになりますね。』


闘技場には観客席が沢山設けられているが、一日目はこのような形式で戦う為か観客はあまり見られなかった。夏葉とハークは地面に白い文字で5と書いてある場所へ移動する。


「ふむ。やはりそういう形式の試合になるのだな。俺たちは481番だから、5のエリアか。」

「・・・これ残るのってかなり難しくないですか?」


ハークが心なしか顔を青くして周りを見回しながら怖気気味に聞いた。しかしそれとは真反対の、好戦的な雰囲気の夏葉は何言ってんだ?というふうに縦に割れた瞳孔をハークに向ける。その人間とは思えない瞳を見て、ハークは息を飲んだ。


「難しいからこそ盛り上がるのではないか。・・・久しぶりに思いっきりやれそうだ。最近雑魚しか相手にしていなかったのでな。色々と溜まっているのだ。」


夏葉の周りの温度が上昇していく。ハークは何か危ないものを感じ、夏葉から一定の距離を取る。それに応えるように周りの参加者たちも武器を手にとって、雰囲気を一変させる。ハークも短剣を手に取って構えた。


『移動は終わったようですね。それでは、試合開始!!』


そして試合開始の合図がなった。


―ギャンッ、ドゴーンッ「「うわぁぁぁぁあああああっ!!」」


「!?」


合図とほぼ同時に、隣のエリア6からものすごい音と悲鳴、そして土煙が上がった。一瞬誰もが動きを止めてそこに視線を向ける。しばらくすると土煙が晴れてきて、二人分の人影が浮かび上がってき、ハークはそこに意識を集中させる。


「あははははははははっ!!ひれ伏せ!愚民共!私の前に跪け!!」


死屍累々の頂点に立っているのは、うさみみがついている可愛いフードマントを被っている、背丈と声からして少女のようであった。その少女は血に濡れた身の丈ほどの大剣を握っていて、下に倒れている敗者の背をグリグリと踏みつけながら、恍惚の表情で笑っていたのだ。

その姿を見て、ハークは背筋にぞくっと寒気を感じた。そしてそれと同時に、あぁ、あのエリアじゃなくて良かった・・・と顔を真っ青にして、彼女の近くに立っているもうひとりの方に目を向ける。そこにはその彼女の隣で同じような耳つきのフードマントを被っている、その少女とペアなのだろう人物が氷のように冷たい雰囲気を纏って立っていた。そして彼の腕に自分の腕を絡めるようにして、頬を赤く染めながら彼女は楽しそうに笑う。


「あはっ!あははははっ!あぁっ・・・もっと遊びたかったのに・・・ねぇ、ナハト。私たち、もう此処に居る意味がないわ。帰りましょう?明日は二人で一緒に遊べるわ、きっと。ね?」


彼女に腕を引かれる彼は、何の反応もせずに唯彼女にされるがままに連れて行かれる。その際、彼女は大剣を地につけてガリガリと地面を削っていた。余程その大剣の重さがあるのだろう。それを軽々と持ち上げて振り回していた彼女には驚かされる。


『エリア6、通過ペアは523番と561番。』


審判は今気がついたように慌てて右手を挙げながら宣言する。

その宣言を聞いて、少女の大剣から免れたペアがいたことにハークは驚いた。先程はあのペアに気を取られていて全く視界に入っていなかったが、比較的背の高い青年と、ちょうどハークぐらいの年の少年がそこに無傷とはいえないものの立っていたのだ。青年が少年を庇ったのか、腕から血を流している。その流血している腕を涙目をしながら治癒魔術をかけて治している少年。


(よく残れたなぁ・・・。あの人、結構強かったりするのかも。)


感心してうんうんと首を縦に動かしていると、急に襟首を掴まれてぐぃっと強引に後ろに引っ張られた。その直後、目の前を剣の切っ先が通っていく。ハークは驚き危うく叫びそうになってしまうが、それは後ろから感じた威圧に圧されて口を噤んだ。


「何をぼけっとしているのだ少年。焼かれたくなければきちんと自分の身は自分で守れ」


強引にハークを引っ張った張本人は縦に割れた瞳孔をハークに向けて、片手に炎を浮かべながら唇を吊り上げる。その姿はまさに鬼だった。あの地獄のほうがまだマシだと思える訓練を思い出したハークは一気に体勢を立て直すと、短剣を顔の前にまで上げて風の魔術を唱え始めた。


「敵を掻っ切れ!(ウィンド)(ファング)!」


不可視の風で作られた八匹の狼に、夏葉が威力を調節した炎をぶつけて狼に炎を纏わせる。それは二人の周りにいた参加者たちを巻き込んで加速していく。先程剣を振ってきた男にも狼が襲いかかり、防御が間に合わずに炎に焼かれ風で傷をつけられていき、最終的には倒れて気絶してしまった。

風で煽られて巨大化していく炎を纏う狼は周りをどんどんと喰らい尽くしていく。夏葉は襲い掛かってくる相手を炎を纏った鉄のナックルをつけた拳一撃で沈めていった。






『エリア5、通過ペア402番と481番!』


気がつけば終わっていた。周りを見回すと、倒れているどの人にも殴られて焼け焦げた後がくっきりついている。いわずもがな、夏葉がその元凶だろう。夏葉はというと、あれだけ動きまくって・・・訂正殴りまくっていたのに息ひとつ乱していることなく、つまらなそうな表情でハークから少し離れた場所に立っている。これはほとんど夏葉のおかげで生き残れたようなものだ。


(本当にこの人が味方で良かった・・・・・)


心底そう思うハークであった。


「ん?そういえばヨルはどうしたんだろう?」

「ふむ・・・あいつは今日、この都市にある図書館にいってある調べものがしたい、と夜まで帰ってこないようだ。」

「そうなんですか。」


ハークは少し寂しい気持ちになったが、首を振ってその気持ちを振り払い平気なふうを装った。しかし、夜が調べたいものって一体何なのだろうか。


(う~ん・・・ヨルもこの人もまだ合って間もないけど、謎が多すぎる・・・。)


そう内心首を捻って目の前に立っている青年と、今は此処に居ないもうひとりの青年に距離感を感じて、ハークは言いも知れない感情に眉を寄せた。












                        ♪












気がついたらフェリスの部屋に居て、彼女が自分の目の前に立っていてその手には黒い仮面が握られていた。


「・・・ヨル、さん?」


何かを怯えるように、彼女は小さく呟くように夜の名前を呼ぶ。そんな彼女に、大丈夫だよ、と夜は彼女の頭に手をぽんと軽く乗せた。


「どうしたんだ?フェリス?」


するとみるみるうちに顔を真っ赤にして、


「こ、子供じゃないんですからそんな猫なで声出さなくてもっ////別に何でもありません!」


と頬を大きく膨らませて、拗ねたような口調で言う。夜は何故彼女が急に怒り出したのか分からず、首を傾げて彼女の頭をぐりぐり撫でながら聞く。


「何が不服だったんだ?」

「その聞き方が不服なんですっ。もうっ、心配して損しました!もうヨルさんのことは心配しませんっ」

「だからなんで怒ってるんだ?俺なんかやった?」

「別にもういいですっ。・・・////それからいい加減頭、放してください!髪の毛がぐしゃぐしゃになっちゃうじゃないですか!」

「別に減るもんじゃないし・・・「駄目です!!」はいはい。」


夜が手をぱっと離すと、少しだけ悲しそうな顔をやっぱりして、その顔を隠すように俯きながら乱れた髪の毛を手ぐしで直すのだった。そんな彼女を見て微笑んでいた夜だったが、此処に来るまでの記憶が曖昧なことに疑問を覚えて、何かを考えるように目を側める。

フェリスが、今は壁に立て掛けてある大剣を恐るべき馬鹿力で振り回して敵をなぎ倒したところまではなんとか覚えている。しかしそこら辺から段々と記憶が曖昧になってきているような気がする。


「フェリス。あんた、あの仮面をつけている間って覚えているか?」


夜は何か参考になるかと思って聞いてみたが、フェリスは申し訳なさそうに苦笑いして、こう言ったのだった。


「あ、ごめんなさい。私、実は普段もそうなんですけど、戦闘しているときの記憶がさっぱり抜け落ちているんです。」

「・・・何だって?」

「実は自分でもよくわかっていないんです。なんで記憶が抜け落ちているのか・・・。う~ん・・・謎です。」


こめかみに両手の人差し指を立てて難しそうな表情を浮かべるフェリス。その仕草はとてもかわいらしいが、何も情報が得られなかったほうに落胆して夜は肩を落とした。それから苦笑しながら、フードマントを脱いでいつも着ているコートを羽織って肩に猫のぬいぐるみを乗せる。


「そっか。じゃ、俺行くから。また明日な。」


一応口実とはいえ、夏葉たちに図書館に行って調べものをしてくると言った手前、ここで姿を見られると色々とまずいのだ。それに、調べたいことがあるのは本当だ。


「あ、あの!!」


急にフェリスが大きな声を出して、この部屋から出て行こうとする夜を呼び止めた。彼女の片手は夜のコートに巻いてある水色の布を掴んでいる。


「何?」


それに引かれるように振り返って首を傾げる。しかしなかなか彼女は言い出そうとはせずに、俯いてしばらく何かを呟いていたが、突然何かを決心した目をして顔を上げた。


「あの!一緒に・・・一緒にお祭りを見て回りませんか?」


その頬は真っ赤に染まっていて、心なしか目も潤んでいる。その姿を見て心を震わせない男がいるだろうか、いやいないッ。(反語)この顔を視界に入れることがなければ断ることが出来ていただろう。しかしもう時既に遅し。


―ぎゅっ


「・・・・・分かったよ。一緒に行こう」

「!あ、ありがとうございます!!すっごく嬉しいですっ!!」


顔を太陽のように輝かす彼女を見て、断らなくて良かったなぁと心の中で呟きながら夜は微笑む。こんなことで彼女が笑ってくれるのなら、図書館はまた後でもいい。どうせ辻褄合わせの用事だ。取りあえず今日は彼女と一緒に祭りを楽しもう。


「じゃあ早速行くか。ちょうど腹も減ってきたところだしな」


フェリスは未だ手に持っていた仮面を激情の仮面が乗っているテーブルの上に置いて、何処から出したのか青い鳥の羽根つきフードマントを出して慣れた手つきで被ると、


「はいっ!」


と元気よく返事してほとんど無意識に夜の手を取って繋いで引っ張りながら、部屋から楽しそう口を緩ませて青い羽根を羽ばたかせるように外に出て行った。







                           第15話 終わり


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