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自分と竜と仮想世界  作者: 狐白
第2章 銀色少女の紡ぐ唄
20/31

改訂中

お気に入りに登録して下さった方々、ここまで読んで下さった方々、

改めて感謝の気持ちを込めて、ありがとうございます!!

出来れば一言でもいいので感想や、こうしたほうが良いところなどご指導して下さると嬉しいです^^

『本番はそうはいきませんが、仮面が嫌でしたらフードマントだけでも被ってください。』


(そう。仮面はつけていない。ただフードマントを被っているだけだ。・・・なのに・・・なのに・・・)


「なんでこんなに目立ってんだ!?(一応小声)」

「何ででしょう・・・?フードを被っている人、結構いると思うんですが・・・(小声)」


頭の上にクエスチョンマークを三つほど浮かべて、フェリスは首をかわいらしく捻った。その隣で眉を顰めている夜。

二人は昼食を取った後、すぐに闘技場に向かったわけではなく途中人影の少ない路地に入って、フェリスに手渡しされたフードマント(因みにフェリスのは白、夜のは黒)を被って顔を隠すようにして此処、闘技場にまで歩いてきた。・・・はずだったのだが、二人は思いっきり目立っていた。道行く人全てが、二人が近くを通るたびに振り向いてくるのだ。フードを被っている人が珍しいわけでもないのに、何故このような現状に陥っているのか、夜にはちっとも分からない。

そんな彼の横でちょっと嬉しそうに彼女は話す。


「あ、後もう少しで受付の順番、回ってきますね。それにしても、このフードマント、かわいいですよね!(小声)」

「そうだなー・・・ってはぃ!?(途中から叫び声)」


夜は此処に来るまで、顔がばれないほうが良いと彼女が言っていたので、顔を上げずに地面だけを見て歩いてきたが、今の彼女の意味深な発言を聞いて思わず顔を上げて、彼女のフードに目を向けた。すると、彼女のフードにはかわいいうさみみがちょこんと立っているではないか。そしておまけといわんばかりに、彼女のマントの方にはうさぎのまん丸尻尾。とってもラブリーです♡


「・・・・・って待てよ。(もはや普通の声)」


そしてはたっと気がついてしまった。もしや自分のにも何かついているのではないか、と。そしてその推測は当たる。


「ヨルさんの猫耳もなかなかかわいいですよ?尻尾もいい具合にたれていてそのやる気のなさがGoodです!(こちらも普通の声に)」


条件反射でスッと頭に被っているフードに手を伸ばす。なにか尖ったものに出会う。そして両端に何か針金のようなものも三本ずつ生えていた。そして後ろ。尻の少し上の部分に何か細長いものがぶら下がっているのが分かった。一瞬夜の動きが止まる。それから思いっきり突っ込んだ。


「これじゃあ目立つに決まってんだろうがコンチクショウ!!(悲痛の叫び)」


悲しさが羞恥心を上回り、夜はずぅぅんとした重い雰囲気を纏わりその場で泣きたくなる気持ちを堪えるので精一杯だった。しかしフェリスは違う。寧ろ幸せいっぱいです♪というふうに頬をほんのり赤く染め、目を輝かせて自分のフードについている耳を触っている。

これではっきりした。

あの着ぐるみは絶対彼女の趣味だということが。


背後に暗い色の縦の線が何本か入っている夜が今にも倒れそうなときだった。


「順番がやっと回ってきました。ヨルさん、行きますよ!」


受付の順番が回ってきたようで、フェリスに腕をものすごい力で掴まれてまるで人形のように引きずられていく。もう抵抗する気力すら失せてしまったようだ。


「えっと、一応確認しておきますがペアの部参加者ですね?」

「はい、そうです。」


分かりました、と言って受付の人はこちらに羽ペンと紙を渡してくる。


「それにお二人のお名前、チーム名をお書き下さい。」


因みにこの紙に書くのは勿論偽名だ。顔を隠しているのに名前でばれてしまっては意味がなくなってしまう。それも路地裏で確認しておいた。因みにフェリスはモルゲン、夜はナハトという偽名だ。モルゲンはドイツ語で朝、ナハトは夜を表す言葉だ。チーム名は聞かれるとは思っていなかったので決めていなかったが、まぁ彼女が適当に書いてくれるだろう、と特に気にしていなかった夜だったが、それを後に後悔することになる。しかしそれはもう少し先のこと。


「はい。承りました。あなたたちの番号は561番です。明日、朝9時にまたこの場所へとお集まり下さい。因みにお部屋の番号もそれと同じ561番になります。食事は朝と夜のみ出ます。細かいルールなどはこちらの紙をご参照下さい。」


四つ折に畳まれた紙と、この隣に隣接して建てられている宿の部屋の鍵も渡され、受付は難なく終わった。

夏葉とハークが受付に行ったときには大会のルールを受付の人が説明してくれた、といっていたが説明してはもらえなかった。それはおそらく後が沢山いるからだろう。ペアの部は飛び入り参加OKといっても結局それは大会が始まるまでのことであって、明日から大会が始まる為か、受付にはすごい人が並んでいたのだ。それでもここまで早く来れたのは、受付がいくつもの数に分かれていてはけが良いおかげだろう。


二人は闘技場から出て隣接している宿屋に向かい、部屋に入ってからフードマントを脱いだ。因みに部屋は大分夏葉たちの部屋と離れていたので鉢合わせする、ということはまずないだろう。


「・・・やっと・・・やっと脱げた・・・」

「なんですぐ脱いじゃったんですか?かわいかったのに・・・」

「あはははははは・・・・はぁ。」


(もう疲れた・・・羞恥心で今すぐ死ねる・・・というか今すぐ死にたい・・・)


部屋の中にあるベットにぐて~っとうつ伏せに寝転がり、夜は精神的な疲れを癒していた。フェリスはというとそのフードマントが余程お気に入りなのか、まだ被っている。因みに、それの下には勿論白猫の着ぐるみを着ている。よく受付の人は一ミリも顔の筋肉を動かさず受付できたなぁ、と感服する。あれを見て動じないなんてあの人何者!?ってかんじだ。


(俺だったら間違いなく即顔が引き攣る。もしくは距離を置く)


「夕食は今から大体あと二時間ぐらい後ですね。場所は1階の大食堂です。もし眠いんでしたらその時間に起こしてあげます?」


流石に部屋では着ぐるみを着ているのは疲れるのか、フェリスは猫の頭を取って夜が寝転がっていないもうひとつのベットの方に置く。


「あ、俺は別のところに宿泊場所があるから大丈夫。今からそっちに戻ろうと思ってたし。」


上半身を起こして乱れた髪を軽く整える。


(それに流石に若い男女がふたりきり、というのもなんだかな。)


すると彼女は少し焦ったようにこちらに歩いてくる。


「えっ・・・此処で別にいいじゃないですか!」

「いや、戻るのが遅いとあいつらに迷惑かけるし、悪いな。ちゃんと明日、此処に来るから。」


フェリスが少し顔を赤くして言うのを聞いて、内心驚きながら夜はベットから立ち上がる。もしかしたら彼女はこの状況をいまいち理解出来ていないのかもしれない。どう考えたって男女がふたりきりで部屋に泊まるのはまずい。外面的にも、精神的にも。

寂しそうな顔をするフェリスの頭の上に手をぽんと置くと、夜は部屋から出て行った。


「・・・別に、此処でいいじゃないですか・・・。私は・・・二人っきりだって気にしないのに・・・」


残されたフェリスはそうポツリと呟いて、フードマントを取ってベットの上に置いた。







―ガチャ


「ただいまーって・・・まだ帰ってきてないか。」


夕食までまだ二時間ある。それまで特にすることも、しなくてはいけないこともない。風呂に入るには時間がまだ早すぎる。此処には暇つぶしするものがない。せめて何か本があれば暇つぶしにはなったのかもしれないが、この部屋にあるものといったらベットとテーブルにちょっとだけ高級感を味わえるソファーのみ。さしてやることもないときにすることといったら、ひとつしか選択肢はなかった。


「・・・寝るか。」


結局この結論に至り、夏葉たちが帰ってくるまで夜は昼の疲れを癒すように寝ていた。












                        ♪












―ガチャ


ドアが開く音がして夜は目が覚めた。どうやら二人が帰ってきたようだ。


「おかえりー」

「また寝てたの~?いいよなーヨルは暢気で。」

「あんた・・・どうしたんだその格好?」


二人がこの部屋に入ってくると同時に何か焦げ臭さを感じたのだ。ふと視線を二人に向けてみると、夏葉は別れる前と全く同じ格好だが、ハークの格好は以前と違ってぼろぼろになっていた。所々焼け焦げている場所がある。どうやら焦げ臭さの原因はハークの服にあったようだ。


「ふむ・・・少しやりすぎたか?」


夏葉は全く反省していない口調で言う。一体どんな特訓をしたらこのようになるのか。ハークだって風の魔法が使えて、決して弱いわけではないだろうに。しかし夜はふと親友が竜だったことを思い出してひとりで納得したようだ。


「時間的にもう夕食の時間だからいくぞ。」

「えっ・・・ちょっとだけ休みを・・・「少年よ」はい!!すみません!今すぐ行きます!!」


(本当に、夏葉こいつに何やったんだ!?)


夏葉がちょっと声を出すだけでびびったように体を震わすハークは、生まれたばかりの小動物を髣髴とさせる。一体こんな時間までどんな特訓をしたのか、夜は気になったもののハークはとてもじゃないが怯えきっていて教えてくれそうになかった。







(何を取るかな・・・この唐揚げ、うまそうだな・・・ってこれはたしかジャンクダック。・・・いやっ、考えるな!生きる為には仕方がないんだ!!)


夕食は大食堂でバイキング形式で行われる。流石に大会ともなるとすごい人数で、その大人数を全て収納することができるこの大食堂は驚くほど大きかった。今日の朝、ここに来たときも三人で驚いていたのを思い出し、夜は頭の中の葛藤を忘れる為に広い空間に視線を向けた。


(それにしてもこの数。三日で本当に大会、終わんのか?到底終わるようには思えないんだが・・・)


まぁ、とりあえず今は飯だとそのことを忘れてハークたちが座っている席へ戻る。因みにこれで夜がおかわりしにくるのは5回目だ。実は今日の昼食、おいしかったのだが如何せん、夜にとっては量が少なすぎた。その反動で、このバイキングでは腹いっぱいになるまで食べるんだとか。


「うげぇ・・・まだそんなに食べんの!?おれもう無理・・・」

「いや別に合わせて食べなくてもいいんだぞ?」


ハークはもう既にダウン。おかわり2回目で腹十分目になったようだ。まぁ二回目はほとんどデザートを食べていたようなものだった気がしたが。


「うむ。俺たちが食べてるからといって少年まで食べることはないのだ。思う存分休むがいい。」

「それさっき部屋の中でいってやれよ。」


夏葉も夜に劣らずおかわり6回目だ。これでは他の人の分まで食い尽くしてしまわないか心配だ、とテーブルに頬をつけながらハークは目を瞑っている。二人がこれほどまで食べているのをみると、自分まで食べているような気がして気持ち悪くなってしまうらしい。


「で、特訓はどうだったんだ?」


ミートスパゲティを口に運ぶ。夏葉は口に中に入っているものを飲み込んでから言った。


「ふっふっふ・・・完璧だ☆このお兄さんの脳内辞書に不可能の三文字は存在しないのだ!明日は必ず上位に食い込むつもりでいるからな。そんでなければこれからが危ぶまれるのだ。」


ここまで自信満々に言う夏葉だ。相当な練習を積んだんだろう。


(・・・こりゃ明日は混戦だな・・・というかこいつらに当たらなければいいが・・・)


そうは言ってられない。勝ち進んでいけば最終的には当たる運命にある。それでもなるべくは当たりたくないものだ、と夜は内心苦笑する。


「夜、あまり食べると明日に響くぞ。観客席で倒れられても助けにいけないのだからな」

「その言葉、そのままあんたにお返ししますよっ」


でも確かに夏葉が言うことには一理ある。


(これで終わりにするか・・・。さて、デザートは何があるんだ?)


「まだ食うんかいッ!!」


ハークに突っ込まれたが、気にせずデザートコーナーへ行く夜だった。







《ご主人様!明日は久しぶりに召喚してもらえるんですよね?》


自室にて。

この部屋は基本的に二人部屋なので、ベットは必然的に二つに限られてくる。夜は明日本当なら大会に参加しないことになっているので、明日参加する夏葉とハークにベットを譲り、夜自身はその中央にあるソファーへと寝転がっていた。風呂も入り終わりそこで心地良さそうに目を閉じていた夜だったが、レーヴァテインの嬉しそうな声で目が覚める。


(あー・・・場合によるかな。でもレンの力は借りることになると思うから、そん時はよろしくな?)


《はいっ!!頑張ります!!》


(あぁ。じゃ、おやすみ)


《おやすみなさい、ご主人様!》


スッと鈴を転がしたような声が頭の中から消えていく。それを区切りに夜も、明日に備えて眠りについたのだった。












                        ♪












―パサッ


タオルをかける。

窓の外は真っ暗で、そこに潜む何かを想像させるからフェリスはあまり好きにはなれなかった。

だけど、昨日は違った。

昨日はとても楽しくて、わくわくしていて、寂しくなくて、怖くなかった。気持ちが、普段は感じたことのない感じ・・・ふわふわしていて、とても心地よかった。でも、今は違う。広い部屋にひとりっきり。ランプはつけてる。でも、何処か寂しくて、怖くて・・・。


頭まで被るようにタオルを上まで引き上げて、フェリスはぎゅっと目を閉じる。


(・・・大丈夫、です。怖くない。ひとりでも大丈夫。怖くない、怖くない・・・)


震える体を押さえ込むように、タオルに包まってフェリスはゆっくりと眠りにつく。






                           第14話 終わり


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