parte.6 襲撃
「いやぁっ!!やめてっ!!
引っ張らないで!!」
「紗弥っ!!
いったいあなた達
何をする気なの!?」
私は謎の男達に連れ去られようとする紗弥加を助けようと彼女に向かって駆け出していく―――!!!
でも、突然脇腹に重い衝撃を受けて私はあの子の下にたどり着くことが出来なかった。
「あうっっ!!!!」
突然の痛みと衝撃で私は床に崩れ落ちていった。
痛みをこらえて姿勢を崩したまま顔を上げる・・・・・・
見ると謎の男達のひとりが拳棒で私のお腹を殴りつけてきたのだ。
「塩原さん!!
お、お前らぁぁぁぁああ!!」
近くで見ていた佐古川君が私を殴りつけた男に殴りかかってきた!!
でも――――!!
バキィィ!!
「があっつ!!」
まるでドラマで使う効果音が響き渡り佐古川君も倒れてしまった。
だが佐古川君を殴りつけたのは私を殴った男じゃない・・・・
「センパイ〜
お久しぶりですね〜。」
佐古川君を殴りつけた男は周りの男達に命令して彼を数人掛かりで拘束し、彼の顔を自分に向けさせた。
男達のボス(でいいのだろう)は被っていた覆面を取り外した。
「お、お前・・・・!!」
佐古川君はボスの素顔を見て驚愕の眼差しを見せていた。
「そうっすよ~。
可愛い後輩の顔を忘れる
なんてことないっすよね~
センパイ♪」
「く、倉橋・・・!!」
そこには・・・・
佐古川君の知っている後輩がいた。
禍々しい笑みを浮かべながら・・・・
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――――――
あの時、
私と紗弥加は会場から聞こえる叫び声を聞いて、
すぐに会場に駆け込んでいった。
だけど、それは浅はかな考えだった。
中には拳銃やライフルなど映画やドラマでしか見たことない武器を持っていた覆面の男達が同窓会会場にいた人全員に武器を突きつけていたのだ。
近くにいた男に気付かれてしまって
私と紗弥加も拳銃を突きつけられて会場の隅に追いやられてしまった。
だが、男達の中の独りが紗弥加の腕をいきなり引っ張ってどこかに連れ去ろうとしたのだった―――
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―――――――
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「く、倉橋・・・・・!!
お、お前
何を考えて・・・!!」
男達に拘束されながらも
佐古川君は必死に体を動かしながら抵抗していた。
「復讐っすよ」
「なに!?」
男達のボスである倉橋は佐古川君を見下ろしながら憮然と言った。
ただ、私は彼の眼を見て少し震えを覚えていた。
――口調は軽いようにみえるけど、すごい冷たい眼をしてうる―――
私は無意識にも彼らから遠ざかってしまっていた。
まだ痛む脇腹を抱えながら、
「俺や妹が味わった痛みや
苦しみをアンタらに
味合わせてやりたくて
やりたくて・・・・」
そういって壊れたような笑みを浮かべた倉橋の手には何かが握られていた。
折り畳み式の金属の警棒、さっき襲いかかる佐古川君を殴ったのもソレだろう。
「やっと願いがかなった
んだよおぉぉ!!」
警棒を振り上げた倉橋は佐古川君の頭を言葉と共に殴りつけた!
ガッッッ!!
「ぐうぅぅ!!!」
「佐古川君!」「あっちゃん!!」「篤っ!!」
周りから同級生達が心配そうに呼びかける。
「へっ・・・・・
まずは妹の分を受けて
もらうっすよ。
おい!!
・・・・たっぷり
楽しんでこいよ♪」
「おうっ」
倉橋の命令を聞いた男は紗弥加の腕を引っ張って何処かへ連れ去ろうとした。
「いやぁっ!!
エミお姉ちゃん!
佐古川君!
助けてぇーーー!!!」
「お前らぁ!」「古山さんに非道いことしないで!!」
同級生達の何人かが紗弥加の下に駆けつけようとした!!
バララララララッ!!!
「きゃあ!!」「ぐわぁ!!」
空気を切り裂くように聞こえる発砲音に彼等も身を竦ませてしまう。
彼等と紗弥加の間にいた男の1人が銃を撃って牽制したようだ。
「く、倉橋・・・!
麻里ちゃんの事は
俺が悪いと思う。
罰なら俺が受けるから!!
だからこやま〔バンッ!!〕
・・がああぁぁっ!!!」
話している途中で佐古川君は脚を押さえて苦しみだす。
まだ痛い脇腹を無理に押さえつけて私は倉橋の方を見た。
彼は佐古川君に向かって拳銃を突きつけていた。銃の先からはうっすらと煙が見えていた。
「バ〜カ♪それじゃ妹の分の
復讐にはならないっしょ。」
銃を下ろしてにこやかに微笑みながらしゃがみ込み佐古川君を覗き込む倉橋、
「知ってるんですよ。
センパイが紗弥加ちゃんの
こと好きだったことぐらい」
「!!!」
脚の激痛に耐えながら佐古川君の眼が見開くのが私にはわかった。
「それに〜♪
お前も、お前も、お前らも!!
俺の復讐の為に全員
死んでもらうっす」
そう言った倉橋は会場に置いてあったテーブルにかけてあるクロスを荒々しくめくった。
その下には・・・・
素人の私にもわかるような・・・・・
何百もあるダイナマイトに繋がれた爆弾があった。
「く、くらは・・・し!!!」
「センパ~イ
既に警察も気付いて
包囲してるみたいだけど、
1人でも踏み込んできたら
コレ、爆破するっすよ♪」
出血と激痛で朦朧とする意識を必死で保とうとする佐古川君を無邪気で、それでいて残酷な笑顔で口を歪ませながら・・・
倉橋は彼を見下していた。
「(紗弥加・・・・!)」
連れ去られた親友を救い出せない無力さに
私は悔しくて目を閉じるしかなかった。