-chiusa-
「まったく、、、
颯爽と出てきて
後始末は全て俺任せ
・・・・か」
そう言って彼は手で弄んでいたカードを机に放り投げた。
カードはカランっと音を立てて机の上でしばらく踊る。
やがてカードは動きを止めて、その表面にあったFの文字を示していた。
ここは大井町警察署の捜査一課のある分室の一つだ。
その中でも一番の出世頭である中西警視、彼が先程まで口ごちていた男である。
彼はとある事情を経てここに転属となった。
かつては警視庁に勤務していたが、ある内部政変に敢然と立ち向かって警察の正しさを貫いたのだ。
だが、その余波も大きかった。そのために地方のこの警察署に左遷されてしまった。
しかしながら彼が警視の階級にいる事が自らの正しさを証明していた。
かつて、警察に存在した驚くべき事実。
その際に彼はあの自由人と出会ったのだ。
『ま、このカードがあれば
報告書なんていらないがな
顛末もすべてこうやって
送ってくるし、』
そう言って彼は机にあった封筒を取り出す。
それは真白い封筒だった。宛先は大井町警察署、差出人には“とある自由人より”とだけ。
その封筒の中身は今回の大井町人質籠城事件の全てが書かれていた。
「まったく、いい加減なのか
几帳面なのか、
アイツはまだ・・・
引きずっているのか。」
そう言って表情を沈ませる中西警視だった。
―――――――――――――
警察は封鎖された市民会館が開いた瞬間に踏み込んで、犯人グループの男達を確保した。
もっとも、先に警察病院に全て搬送しなければならない状況だったのだが、、、
それでも、犯人にも人質にも死者1人も出さなかった事が救いだった。
犯人グループのうち、会館の外側を見張っていた連中は警察が周囲を取り囲んだ中で次々と倒されていった。
―そう、彼の手によって――
そこから警察は会館に踏み込むことが出来たのだが、警官の1人がトラップに気づいた為、全て解除して犯人グループを確保・救助するのに時間がかかってしまった。
彼らは警官病院に搬送されたが、幸いにも命に別状はなかった。
また、会館にいた犯人グループの男達は全員爆発に巻き込まれた外傷を受けていたが、どうやら治療を受けていたのか外見より軽傷で済んでいたという。
だが、犯人グループのうち2人は重傷を負っていた。
古山紗弥加を襲い乱暴としようとしていた亀山は、警察官が駆けつけた時には瀕死の状態であったが、
警察官が運び出そうとした際に彼が現れ、命だけを助けたという。
だが、いまだに意識不明の状態にあり
医者の話では脳波がかなり微弱にまで落ち込んでいる事から、
今後、目覚める事はないだろうと推測しているという。
そして―――
主犯格の倉橋 友彦はあの時に爆弾や部下を運び込んだトラックを暴走させ――
彼に再び止められた。
倉橋は右肩から腕を断裂されていたが、彼の治療により一命を取り留めていた。
今でも警察病院で治療中である―――
だが、倉橋は全ての事件は自分が主犯であると容疑を認め、
「あの時、できなかった“生きる事”をやる事でいつか家族達の墓を作って、祖父や父のしてきた事を償うまで諦めない
。」
と、潔く服役すると私に話してくれた。
―――――――――――――
「―――誰一人、
命に関わる犠牲を
出さないまま、、か。」
そう言って中西警視はフッと笑ってタバコに火を点けた。
「これがお前の答え
・・・・か」
タバコをくわつつ部屋の窓へと歩いていった中西警視は窓口に佇んでいた。
「あの事件からもう数年、
自由人としてお前は
世界を旅しているのか?
あの時、俺に言った答えを
探すために・・・・
浦上紘平・・
いや・・・・・・
かつてfinalarwinと
呼ばれた自由人よ」
紫煙で辺りを曇らせながら、中西警視は口にあるタバコを手にとり、
ふーっと息を吐いた。