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 parte.20 名前はもう無い


「・・・・・・・・」


私は見ていた。


ボロボロになったトラックに近付いて這い出た倉橋を助けた彼を、


やがて彼は立ち上がると、こちらを向いて歩いてきた。









「・・・・・・・。」


彼は私から少し離れた所で立ち止まり、笑みを浮かべて言葉をかけてきた。


『よかった、君を・・・

 みんなを救えて』


「・・・・・・・。」


『ん?』


彼は何かに気づいて後ろを振り返る。


半壊したトラックに警察官が何人か集まりだしてきたのだ。


『そろそろ時間かぁ』


彼は頭をポリポリとかいて苦笑いをした。


そして、私に向き直ってフッと笑い直す。


「じゃあ、、、、

 元気でな恵美ちゃん」


――やっぱり・・・


私を知ってたんだね。


でも、どうして貴方は・・・・


しかし、彼は私の想いに気づかずに姿勢を少し沈むように屈んでいた。


まるでこの場から飛び去るように、


「待っ・・・・!」


私が叫ぼうとした時だった!









「紘平君!」


彼の後ろからタックルをして飛び込む人影があった。


『あらっ!?』


彼は反応していたのか急に後ろを振り向いてしまった。


そして――――









ボフッ!!


飛び込んだ彼女を抱きかかえる形になってしまう。


なんとか彼はその体格差を生かして踏みとどまった。


「さ、紗弥加・・・!」


それはあの時

連れ去られた私の大切な妹、紗弥加だった。


服は何故か黒っぽい長袖を来ているが、

彼女は小柄のためか袖は何回も捲られて服も下のスカートを半分も隠してしまう 長さになっていた。



「ぐすっ・・・・!

 今まで私寂しかったん

 だからぁ〜〜!」


そう言って彼の胸の中で泣きじゃくる紗弥加、


だが・・・・・


抱きつかれた彼はなんだか様子がおかしかったのだ。


『あ゛・・・・・

 え゛・・・・・・

 い゛・・・・い゛・・』


「やっぱり、

 変わっていないわね」


私はニッと笑って変わらない彼に昔を思い出していた。



昔の記憶を辿ると・・・・


彼は確か女性が苦手な筈だ。

昔、いとこのお姉さんに四六時中抱き締められたお陰で、

手を触れるのはおろか抱き締められると完全に硬直してしまう。


特にそのいとこのお姉さんが豊富な胸だったので、紗弥加のような胸はある意味彼の天敵だったのだ。









「でも、私

 マキちゃんから聞いた時は

 信じられなかったんだよ!









 あの時の水害で

 紘平君も死んだって聞いて」


「―――――――!?」


そうか・・・・

だから紗弥加はあんなに悲しそうな顔をしてたんだ。


私はやっと納得していた。


あの時、紗弥加は有井君の死を思い出していたから、同じ様に死んだと聞かされていたこの人―紘平君―を思い出していたのだろう。



彼は最初は固まっていたが、その石化状態をなんとか脱して、くっついてくる紗弥加をゆっくり離すと2、3歩離れて私達から遠ざかった。









『ごめん、誰かと勘違い

 してないかな?』


「「えっ・・・・?」」


私と紗弥加が異口同音て呟いてしまう。


『僕はただの自由人さ、


 名前はもう・・・無いよ』









「そ、そんな・・・」


紗弥加の顔がまた沈む。


「そんなわけ・・・

 ないじゃない!」


私は大切な妹を暗くさせる彼に言葉をぶつける。


『ごめん・・・・・


 今はまだ・・・・・


 二人の下には戻れない

 んだ。』


もの悲しく、それでいて切ない表情を浮かべる彼に私は声をかけようとした。


でも何かを言おうとした時に周囲の異変に気づいた。


こちらに気づいた警察官が何人か駆け込んでくるのを、







彼は後ろから駆け寄ってくる警官達の足音に気づくと、ポケットから何かを取り出した。


『これ、渡しておいて

 くれるかな?』


そう言って彼は私に取り出したモノを差し出した。


それは金色のカードだった。表には赤い色で“F”と描かれていた。


「これは・・・?」


『おそらく中西警部が

 来ているハズだから

 渡してあげて』


「こ、紘平君・・・!」


紗弥加が彼に行かないでと懇願しようとしたが、


彼は後ろに飛び退いて私達から距離をとっていた。


まるで、私達から拒絶するように


離れた間隔に目に見えない地割れでもあるかのように、


『じゃ!2人とも元気で!!










もし・・・・・・


僕が答えを見つけたら、


戻ってくるから!!』


そう言って彼の姿は忽然と私達から消えてしまった。


私が最後に見た彼の表情は・・・・・



どこか嬉しくも

どこか物悲しい・・・


そんな表情だった―――――――





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