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 parte.19 生きる事


「がっ・・・・はっ・・・」


運転席が半壊したトラックに倉橋は血を吐きながら横に倒れていた。


右に横倒しとなったトラックから完全に割れたフロントからゆっくりと抜け出そうとしていた、



だが、彼は右肩に本来あるはずの感覚が無いことに気づいた。


激痛で気づかなかったが、本来あるはずの存在感が無かったのだ。



やがて、激痛がなくなってしまった。もう身体が脳を守るために痛覚をシャットダウンさせてしまったのかもしれない。


「あ・・・・・あ・・・

 あああ・・・・・」


もはや瀕死の重体だった。

それほど、あの自由人の一撃は凄まじいものだったのだ。


『まだ、わからないか?』


その時、近くにジャリッという足音と共に近くに誰かがいるのを知覚する倉橋だったが、


「………………………」


もはや言葉を明確に紡げない。

激痛、疲労、恐怖・・・

それら全てが綯い交ぜとなってしまって正常な思考力を失わせてしまっていたのだ。


『お前が“生きる事”に

 頑張っていれば麻里さんも

 ああはならなかったの

 かもしれないんだよ』


「・・・・・・・ぇ」


『あの時、お前は頭を下げて

 頼み込んだか?

 恥も外聞も捨てて亮君の

 お父さんや住民の人達に

 懇願したか?』


「・・・・・・・ぁ」


『お前は絶望して頭にきて

 さっさと出て行ったんじゃ

 ないのか?』


「・・・・・・・・・」


『お前、、いや

 いまの日本人の悪い癖

 なんだよ。自分の持って

 いるカードは出さずに

 他人のカードを全て

 出させようとする。


 自分の気持ちを読んで

 下さい。いや空気読んで

 下さいなんてのたまう

 輩もいる。


 日本人は他人を神様扱い

 するのが好きなんだよ。


 でもな、僕達は神様

 じゃない。エスパーでも

 ないんだ。そんなに

 何でも読めたり

 できるわけ無いだろう?


 他人にそんな事依存せず、

 ただただ

 我が道を突き進む。

 憎しみや嫉妬、そんなもの

 全てを自分の中に

 飲み込んでね。』


「・・・・・・・・・」


『それが出来なかった

 お前は・・・・・・

 あの時、公民館から

 帰ってきた時に、、、

 麻里さんを・・・・!』


「・・・・・・・・!」


倉橋は目を見開いていた。


――な、なんでその事を!!


『兄とそんな形になって

 しまったのを彼女は

 悔いていたんだ。

 だからあの日、彼女は

 篤君を呼び出した。

 だが・・・・』


「・・・・・・ぁぁ!

 ぁぁぁぁああああああ!!」


その時、倉橋は思い出したのだ。


目の前で妹が高台の下へと消えていった記憶を―――



『おそらく、お前が

 現れたことで

 彼女は半ばパニックに

 なって――――

 その後、篤君が来たけど

 高台の下にいた彼女には

 気づかなかったんだろう』





『その後、自分が妹を

 追い込んだ記憶を失って

 倒れていたお前は、

 気が付いて麻里さんが

 自殺したのを知った。』


「・・・・・・・・・」


『お前が執着じゃなく

 生きる事に捕らわれて

 いたら、大切な妹さん

 を守れたかもしれない。


いわば・・・・・・









お前の心の弱さが

今のお前を生んだんだ!!!』


「・・・・・・・・」


もはや言葉にならなかった。彼は今まで自分のしてきた事を後悔し始めたのだ。


――ごめんな、麻里。

兄ちゃんが弱かったから

最後の大切なお前さえ守れなかったんだな・・・・・・



倉橋は涙を流していた。

あの日、両親達を失ってから流すことのない涙を、



その時、彼の頬に伝わる涙に暖かな手が触れていた。


自由人は彼の近くにしゃがみ込んで倉橋の頬に触れたのだ。



手から暖かな光が発せられる。それはあの時、紗弥加の傷を癒やした光だった。


『本当はお前の命なんて

 見捨てるんだけど・・・


 そうすれば一生後悔する

 人がいるからな。』


光はどんどん強くなっていく。


『ただし、右腕はそのままに

 させてもらう。


 それはお前が一生をかけて

 背負わなければならない

 罪だと僕は思うよ。』


「・・・・・・ぁ」


彼の右手の光が倉橋の体を包み込んでいく。


『自分がどう進むべき

 なのか、


 それはこれからよく

 考えることだね。』


光が全てを包み込んで・・・・・・


暖かな光に包まれて・・・・・・









倉橋はやっと本当の安らぎの中で意識を失ったのだった。




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