表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/26

 parte.18 一閃


「はぁっ、はぁっ・・!

 ど、どこに行ったの?」


私は息を切らせながら道の真ん中で半ば震える脚を手で支えるように抑えていた。


こういう時にスーツは向かないわね。

私は履いているパンプスを忌々しく見つめた。



私が会場から出た時にはあの人のわずかな後ろ姿しかなかった。


とにかく追い付かなきゃ―――!


私は一目散に走り出していて、、、、



気がついた時にはこの場所にいた。


確かここは市民会館から近い大通りのはず、地元から離れた何年かですっかり町の様相が変わってしまい

元いた会館にもすぐに戻る事ができなかった。



「・・・・・・あの人、

 どこに・・・!」


そう私が辺りを見回した矢先だった!









ブウウウウウウゥゥ!!


どこからか聞こえてきたエンジン音に私は振り向いた。


大通りの一方からトラックがこちらに向かって暴走してきている!


それはよく町で見かける運送会社が使う小柄なトラック

――2tトラックというのだけど――


が重低の唸るエンジン音を響かせながらどんどん迫ってきていた―――!!









「くっ・・・・!」


私はとっさに身体を投げ出して道の端に転がる!


私の元いた場所をトラックが轟音と共に通り抜ける。


だが、その時に履いていたパンプスが脱げてしまった。


「あっ!」


私は思わず立ち上がろうとしたが、足に走る痛みにおもわず顔をしかめる。


「痛っ!!」


脱げたパンプスはトラックの後輪に道の反対側に弾かれてしまった!


そんな僅かの間に暴走するトラックはすぐさま離れた所で起用にも反転させて

また私に突っ込んできた!!



反転した際にスピードが緩んだ時に私は運転席を見て驚く。


「く、倉橋・・・君!」


こんな時でも教師の癖が抜けないのか“君”付けにしてしまった私を自分自身で恥じる。


だが、私にはもう思考する時間が残されていなかった!









もう私とトラックの間隔は5メールもなかったから!!


「死ねぇぇぇぇぇええ!!」


倉橋の口からはそんな呪詛を流しているように私には見えた・・・・・・・・・・









『恵美ちゃん!危ない!!』


突然、突風が私めがけて吹き抜けたと思った瞬間!


私は誰かに抱き寄せられていた。


彼は器用にも全身のバネをかけて体勢をくるりと回し、


両足で地面に着地した!




ズシャャャャァアアア!!!




地面を彼の靴が引き裂く音が鳴り響く!


私が気づいた時には通りの横にある芝生にいた。


芝生には二本の先が私達に向かって続いている。










『大丈夫、立てる?』


「えっ?」


私を抱き寄せていた彼がのぞき込んでくる。


「・・・・・う、うん」

距離が近いのか私は少し顔を赤らめて応える。


『・・・・!

 そ、そう・・(汗)』


彼も気がついて顔が朱くなる。


――ホント、女の子には苦手なんだから


少し苦笑する私をゆっくり優しく降ろしていった彼は


やがてある方向を見つめた。


それは大通りであれだけ暴走していたトラックが私達のいる芝生を踏みつけてこちらに向かってき始めていた。


『もう・・・・・

 自らの憎しみ・・・・


 執着を断ち切ることも

 出来ないのか、、、』


そう呟く彼はバッと後ろに飛び退き、背後に立てかけていた鉄の棒を引き抜いた。


それは大井町の成人式に植樹する際に植えた樹を保護するために周りを取り囲む柵の一つだった。


彼は鉄の棒を手に取り、器用に槍を回すように片手でブンブンと回すと・・・・









突然、回転を止めて構えをとった。


それはよくオリンピックで見るような槍投げの選手の構えと同じだった。


彼の顔が急に真剣になっていく。


まるで全身の感覚を研ぎ澄ますように


私の周りの空気が、

周辺の空気の圧力が彼の構える棒――いや槍――に集まっていく!!



もうトラックはどんどん唸り声を上げながらこちらに突っ込んでいく!!









「くたばれぇぇ!!」


何故だかそんな倉橋の声が聞こえた気がした。


『お前が自分の憎しみを

 断ち切れないなら!!』



ズッ!!


彼は構えた左足を摺り足で地面に刻む!


『僕は・・・・

 全て吹き飛ばす!!!』


そして、彼は右足を踏み出して―――!









構えた槍をトラックに向けて投擲した!!!


『いっけえええぇぇぇええ!!!!!』









「なっ!?」


運転していた倉橋は驚いた!


まさかトラックに鉄の棒を投げつけてくるなんて事を彼は考えもしなかったのだ。


彼から放たれた棒は瞬時にこちらに向かっていき―――!


そして―――!!!









ガッシャャァアアアン!!!


トラックのフロントガラスを突き割って倉橋の右肩に刺さった!!!


「ぐあっっっつつ!!!」


突然、身に走る激痛に顔を歪ませた倉橋は


「がっ・・・はっ・・?」


信じられない光景を目にした。









浮いていたのだ。


自分の運転していたトラックが!


地面から数メートルも浮いていた。


やがて痛みのせいで知覚が鈍くなった倉橋は


すぐさま時間の知覚が戻っていく。


まるでスローから再生へと移るように、、、









ドォォォォオオオン!!


その瞬間、

倉橋は全身が後ろに流される感覚と、、


激しくトラックごと地面に叩きつけられる激痛を感じたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ