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 parte.1 ある雨の日


その日は雨が降っていた。


無理もない。

季節は梅雨、

日本はこの時期は

雨ばかりだ。



ここはとある中学校、

時間的には授業も全てが終わり、部活動に参加していた生徒達もその殆どが帰ってしまっていた。



その中学校の登校口に一人の少年が佇んでいた。


少年は細身・・・

ではなくて、体格は少しガッシリしていた。


肩幅は広く鳩胸であるため柔道をやっていると彼が言っても信じてもらえるだろう。


そんな少年であるが、彼は登校口で立ち往生していた。


少年は自転車通学だった。


当然、この時期は

雨合羽は必需品だったのだが、、、、、


なんてことはない。

家から通学する際に着てこなかったのだ。

中学校から推奨されている雨合羽はあまりにも通気性が悪い。


おまけに少年はその体格に似合うごとく汗っかきだ。


だから、雨合羽を着て雨を凌いで学校に登校しても………

中身も汗のせいで半分ずぶ濡れでしたと、いうのも珍しくないのだった。



おまけに、

梅雨時期であることから雨合羽もほぼ毎日着ていかなければならないことになる。


少年にとっては毎日ずぶ濡れになっていかなかければならないこの季節は憂鬱だった。


そんな時に、

朝の登校時に雨が降らなかったから、、、、、



少年は解放された気分で、合羽を着ずに学校に登校して‥‥‥










で、帰宅しようとして今に至るわけである。


『くっそ~、、、

 あの時まで降ってなかった

 だろうに~。』


少年はそう愚痴を言うと登校口から空を苦々しく睨んでいた。


『でも困ったなぁ、

 この激しい雨の中じゃあ

 、、、、、』


こういう場合は、

大抵二つしかない。


一つは、

ずぶ濡れ覚悟で自転車で突っ切って帰る方法だが‥‥


この雨量ではまず確実に数分でずぶ濡れとなってしまうだろう。

それでは結局カッパを着て帰るのと変わらない。


さらに明日は風邪を引いてしまうというオマケ付きだ。


もう一つは

家に電話して迎えに来てもらう方法だったが、


少年の時代では携帯なんてものはなく、職員室で借りなければならなかった。

それだけならいいのだが、迎えに来てもらうという事は当然自転車を置いて帰らねばならず、明日の朝も学校まで送ってもらわなければならない。


以前にも

少年はそうしてもらった事があったのだが、、


ことに田舎の学校はそんな些細な事でも噂になる。


あの時は色々と言われたので、それならずぶ濡れの方がはるかにマシだった。


とはいっても、

風邪を引いて休めばその分、授業も出られないしノートも取れなくなる。


それはそれで

少年にとってはある意味、重大な問題だったのだ。


少年はあまり友人をつくらないし、人にはあまり頼らず自力で全て乗り越える性格だった。


「人に頼る前にまず自分の力

 で乗り越える方法を

 探してみろ。

 そうすればそれが自分の

 成長に繋がる。」


それが彼を育てた父親の口癖だった。










そんな訳で、

少年は今のこの状況をどう解決しようかと、考えながら雨が降りそそぐ外を眺めていた。


しばらく外の雨と周りを見渡しながら少年は考えていた。










━━━━━━━━━━━


考えた末に

少年は学校の中庭で

ギリギリまで待つことにした。


ギリギリとは、

少年の親が学校に電話してくるまで、

学校の先生に見つかるまでである。素直に先生に相談すれば最もいい解決策なのだが、

仮にそうしても

家に電話することになるだけだから、


それなら雨が止むかもしれないその時まで待ってみる事にしたのだ。









『はぁ〜、

 しっかしホントによく

 降るなぁ〜。』


少年は溜め息をつき、

外の様子をただ漠然と眺めていた。


『しっかしアイツは・・・

 アイツがさっさと解放して

 くれたなら雨に遭う前に

 帰れたのになぁ〜』


少年は肩を落としつつも、その元凶となった場所を疎ましげに見つめていた。










――だからこそ、

異変に気づいたのかもしれないのだが………


『ん?』

少年はふと

外のある部分に目を止めた。


何か光っているような感じに見えたのだ。


時間はもう夕方近く、雨雲のせいで外が薄暗くなっていたのだが、


そのおかげか地面のある所が薄く光っているように見えたのだ。


『こんな時間に、

 あんなに雨が降って

 いるのに誰かいるのか?』


首を傾げながら少年はふと疑問に思う。


時間的にはもう職員室にしか人はいない筈だ。

それにこんな大雨の中で人がいるなんて事態がおかしいはずである。










『どうせ暇だし、

 見に行ってみるかな。』


少年は中庭にあるベンチから立ち上がり、その場所に向かってみたのだった・・・・










―――――――――――



そこはテニスコートの一角だった。


中庭とテニスコートは校舎二階の渡り廊下の下を通ればある意味地続きなのだ。


少年は校舎伝いにその場所の近くに寄ってみた。


傘を持っていない少年ではそうしなければたちまちずぶ濡れになってしまうからだ。


“そこ"は確かに光っていた。


何か光が澱んでいるような………


淡い緑色の光がそこにあった。


例えるなら、

とあるゲームのセーブポイントみたいな感じのような


そんな感じの光がまるで地面の“そこ”から湧き出ているみたいだった。


『なんだろう、これ?』


少年は手を伸ばしてみた。彼は雨に濡れていたのだが、その光をはっきり見てから


まるで蛾が蛍光灯の光に誘われるように


呆然とただ漠然に

手を伸ばしていたのだった。


少年がその光に

触れた瞬間―――!









ビキビキビキッ―――――――――――









少年のいた地面は――!!


ぽっかりと無くなってしまったのだった。










少年が覚えていたのは、まるでエレベーターで降りていったような無重力のような感覚と、


引き込まれるような

下に落ちる感覚だった。




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