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 parte.14 ピリオド


『ねえ〜

 おにいちゃ〜ん、、、

 まぁ〜だぁ〜〜』


まるで幼い妹が兄に話しかけるように


座って両手を顎に乗せて

ニコニコとしながら


会場の封鎖された入口を開錠しようとしている男の背中から自由人たる彼が話しかけたが、、、


男性にしては全く似つかわしくない女性みたいな声、


――おそらく裏声だと思うのだけど――


で話しかけたので、

私をはじめ何人かの同級生は固まってしまった。


でも・・・・・・


「ぷっ、、、ふふふふふっ」


中にはこれが笑いのツボを突かれたみたいで、つい吹き出してしまう同級生もいた。


私の後ろにいる真希子ちゃんもその1人だけど、私もそれにつられてついに笑みがこぼれてしまった。



今、会場の入口は私達が拘束された時に入口の引き戸についていた取っ手を鎖と南京錠で雁字搦めにされている。


それを彼に頼まれた(脅された?)男が南京錠に鍵を差し込んで開けようとしていたが、、、、、


身体の痛みと恐怖による為か、動きが緩慢なため遅々として作業が進まなかった。


それで今は同級生の何人かの男性が手伝って入口を開けようとしていた。









(「ふふっ、そういえば

 あの人も

 こういう人だったよね。


 誰かが落ち込んでいたら、

 傷ついていたら放って

 おけない。


 こうやっておどけて

 励ましてくれたよね

 ・・・・・・」)


私はこの人の姿にある人の姿を重ねていた。


(「もしかして・・・・」)


私が何かを確信しようとした時には

彼の姿は目の前から消えていた。


「えっ・・・・・・?」


私はすぐさま辺りを見回して彼の姿を探した。









彼は私の後ろ側にいた。


彼は座り込んだまま放心していた男の目の前に立っていた。


男は焦点を床に向けていた。

口は少し半開きとなり手には黒い機械を握っていた。


全身はボロボロとなっていたが、床に倒れ伏した男達より血の跡が少なかった。

その男――倉橋はスイッチを押した後、何かが消えてしまったような感じがするのを私は見て感じていた。









『――で、気分はどうだい?


 全身を爆風で焼かれた

 気分は?』


その言葉で電源を入れられたように、倉橋はハッとした感じで顔が動き、

辺りを見回し始めた。



やがて、すぐに目の前の光景に気付いて、、、、、


手にある黒い機械の先端にある赤いボタンを押した。


しかし―――――









―――カチッ―――


ボタンを押す音はすれど、彼が期待した爆発は何時まで経っても起きる事はなかった―――!!!



カチッカチッカチッ

  カチッカチッカチッ

    カチッカチッカチッ

・・・・・・・・・


何度も何度も、、、

倉橋はボタンを押すが、

テーブルクロスの下からは光も衝撃波さえも吹き出さなかったのだ。




「なぜっすか!?

 なんで爆発

 しないっすか!」


私の目の前にいる男は完全に狼狽していた。


あの時に私達を拘束した時に見せた余裕など表情なんてどこを探しても見つからなかった。


『“なんでなんで”って

 ・・・・さぁ』


そう言うと肩を落としてガックリとうなだれた自由人たる彼は、


やがて巻き戻るようにように姿勢を元に戻して微笑を浮かべて答えた。


『あのさぁ、なんで

 “それ”が起爆スイッチ

 なのかを僕がどうして

 知っていたのだと思う?』


「――――あっ!」


私は最初に引っかかっていた事を思い出していた。


――あの時、私達がテーブルの下の爆弾を見たのは拘束されて間もない時のハズ。


その後、倉橋はすぐにクロスを元にかけ直したため会場の外から見ることは無理がある。


おまけにあの爆弾は時計なんてタイマーは付いていなかったから秒針が紡ぐ機械音もしなかった。


つまり、目の前にいる自由人には知りようがないのだ。



「―――――!!」


私がそんな事を瞬時に思考していた間に倉橋は半ば這いつくばったまま爆弾があるはずのテーブルの下に向かっていき、、、、



かけてあるテーブルクロスを引き下げた。


「なぁっっっつつ!?」









何度、彼等の驚愕の叫びを聴いただろう。


何度、私は驚くべき光景を目にしたのだろう。


あの時に見た爆弾にはよくアニメやドラマで見るような筒状のダイナマイトが束になって機械と接続したはずだった。



だが、今私の目の前の爆弾にはある物が散りばめられて埋め込まれていた。



それは例えるなら“黒い飛礫”だった。


大きいもので直径3センチの黒い石の飛礫がダイナマイトや機械に無数に刺さっていたのである。


ダイナマイトの筒が白色だったので、まるで半紙に墨汁の飛沫をぶっかけたような有り様だった。



その黒い飛礫は時折“バチッ”という電気音がしていた所を見ると何かの機械なのだろうか・・・・?








『ちょっと、隠し玉を

 使わせてもらったよ。』


と、余裕の表情を浮かべながら右手の人差し指と中指を立てて口元に当てる自由人。


それは彼のちょっとしたカッコつけのポーズなのだろう。


『ま、先程のやつも

 とっておき

 なんだけど、ね♪』


彼はそのままのポーズで口元をニッと笑わせる。


「―――――!?

 お、お前なにも『そんな事

 はどうでもいいよ。』


倉橋の疑問を自らの言葉で掻き消す自由人は間髪入れずに手に持っている警棒を投げつけた!



バシッッツ!!


警棒は倉橋の持っていた起爆スイッチをはじき飛ばす。


「ぐっ!!」


彼は倉橋から転がり込んだ起爆スイッチが足下に転がったのと合わせるように、、、


バキッ!


足で完全に踏み潰した!!

まるで巨象が枯れ木を踏みつけるように黒い機械は粉々になる。


『これでお前は

 切り札もない。

 頼りの仲間も

 あのとおりだ。』


「なっ!?」


倉橋はしばらく放心していたので気付かなかったのだろう。


彼は口元にあった右手をビッと人差し指を勢い良く倉橋に突き出した!










『これで・・・・・

 お前の独りよがりの復讐は

 終わりだよ!!

 倉橋 友彦!!』


彼の啖呵が、

彼の豪声がこの悲劇にピリオドを打ったのだった。


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