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ご訪問ありがとうございます!

楽しんで頂けたらうれしいです!

誤字脱字多めです!ご容赦ください!

ミモザ商会のアスラーさんは、年配の紳士ではなく、私と同世代と思われるハンサムな紳士だった。


どうしよう、こんなかっこいい人だなんて思わなくて、ちゃんと身なりを整えなかった!


洋服に視線を落とすと、可愛いワンピースに取り切れなかった半端な糸が沢山ついていた。


私は頬がカッと熱くなりながら、その糸をサッと払った。


「ヘレナ嬢、ミモザ商会のアスラーです。お忙しい所にお邪魔してしまい、申し訳なかったね。どうぞ、作業を続けてください」


彼は艶かな優しい声でそう言ってくれた。私はなんだか恥ずかしく、顔を見れなかった。


「あ、はじめまして……ではないのですよね。こちらこそ、お忙しい中来ていただいて、ありがとうございます!ご注文の刺繍はもうすぐ出来ますので、下で少しお待ちください。アリス、アスラーさんにお茶をお出しして……」


アリスはニコッと笑ってうなずき、下に降りていった。


私は作業机に戻って、椅子に座り刺繍枠を手に取った。


ガタッと音がして視線を向けると、私の隣にアスラーさんが椅子を並べたのだ。


「えっ!」


私は驚きのあまり、声を出していた。


扉が開いているとはいえ、未婚の男女が……。あれ……?アスラーさんは未婚なのかしら……?


いやいや、こんな素敵な人が未婚なんてありえなかったわね。


しかも、私は今や傷物令嬢……。もう令嬢って歳でもないから、ただの傷物だ……。


そんなことを思っていると、胸の奥に冷水が流れ込んできたように、私の気持ちと体をサーっと冷やした。


いけないいけない、今は刺繍に集中しなきゃ!


刺繍は幼い頃から大好きだから、体に染み付いてて何も考えなくても手が動く。


色を決める時、刺す方法を決める時、とても心が踊る。


一本の糸が重なり合って、どんどん布が美しい色で埋まっていく瞬間は、なんとも言えない気持ちになる。


2本どりで刺繍すれば時間も早くなるし、楽だけど、仕上がりはやっぱり一本どりの方が綺麗な気がして、一本どりで頑張る。


おかげでアスラーさんという素敵な紳士を待たせてしまってるわけだけど……。


コツン……。


私のおでこに何かがぶつかった。


なんだろうと思い、針を持つ手を止めて上をむくと、アスラーさんのきめの細かい肌と、黒く隙間なく埋められたまつげがすぐ近くにあった。


私は思わず、後ろに仰け反って椅子の背もたれのお世話になった。


どうやら、集中するあまりアスラーさんとおでこがぶつかってしまったらしい。


「すみません……。あまりにも美しい刺繍だったので、近づきすぎてしまいました……。ご不快でしたか……?」 


彼は眉を下げてそう聞いてきた。


こんなかっこいい人に近づかれて、不快に思う女性などいるのだろうか……? と思ってしまったが、ご本人が気にされているので、「いえ、大丈夫ですよ」と笑顔で答えた。


ドキドキしてしまいちょっと口角が引きつったが、バレていないといいな。


その後は一定の距離を保ちつつ、私はもくもくと刺繍し、彼はそれを見るという奇妙な絵ができた。


途中、アリスが紅茶を運びに来てくれた。


きっとアスラ―さんが来ないから、二階に運びに来たのだろう……。いや、それとも毎回こんな風に作品を確認されているのだろうか?


アスラ―さんは商会の人で、仕事関係の人……。でも、なんだか眼差しが優しく陽だまりに包まれているような心地好さがあった。


前にもこんなことがあったかのような……。脳内の記憶を探し回るが、無駄に終わってしまった。


パチン。


最後の一刺しを終えて、糸処理をしてハサミで糸を切った。ハサミは糸用の金色のハサミで、アンティークのような装飾が美しい。切れ味もとても良かった。


私は刺繍枠から、刺繍した布を外し、確認する。


うん、隙間なく埋められてるし、糸の方向も揃っている。絹糸だから、光沢があってきれいだわ。


今回はピンクや赤の小さな花のブーケの図案だった。ブーケのピンクのリボンが下まで伸びていて、なかなかかわいい図案だ。


多分私が描いたのだと思う。


「こちらでどうでしょうか……?」


私は少し緊張した面持ちで、アスラ―さんに刺繍した布を渡した。


「拝見します」と彼は両手で受け取ってくれた。


こんな所まで紳士的で、思わずため息がもれた。


彼は細部まで刺繍を確認し、「大変素敵な作品です」と褒めてくれた。


「こちらの作品は、うちの照会で責任を持ってバッグに仕立てて、お客様にお届けいたします。ヘレナ様の作品は大人気で、オーダーは一年先まで埋まっているほどです」


アスラ―さんが刺繍の布を丁寧に包み、少し大きめの革のカバンにしまい、何か分厚い紙袋を取り出した。


「こちらが今回の謝礼です。お受け取りください」


受け取るとそれはかなりの重みがあった。


「えっ! いくら何でも多すぎです!」


私が返そうとすると、また私の方へ紙袋が押し戻された。


「これは当然の対価です。あなたは今王都で大人気の刺繍作家なのですから。それにアリスご夫妻のお給料もその中から支払わなければなりません」


そうか……。そうよね、今は私がアリス夫妻の雇用主なんだもんね……。しっかりしなきゃ!


「わかりました。ありがとうございます」私はその紙袋を膝の上の抱えた。


「でも、私は記憶がなくて……。お金の管理とかどうしてるのかしら……」


こんなこと、仕事先の人に聞くなんて恥ずかしい……。


「そうですよね。実は私が管理させて頂いております」


「えっ!」


アスラ―さんが管理って……?


「あなたが記憶を取り戻すまでの間、ご両親に承諾を得て、後見人としてあなたの財産を管理させて頂いているのです」


後見人……。アスラ―さんは仕事の他にそんなことまで……。これは頭が上がらないわね。


「ですので、大変申し訳ありませんが、そちらのお給金は生活費を除いた金額をまた私の方にお渡し頂ければと思います」


当面の生活費を抜いて、返せばいいってことね。


いつも受け取っている金額を聞き、差し引いた分をアスラ―さんに渡した。


「しっかり管理させて頂きますので、ご安心ください」とアスラ―さんは頭を下げてくれた。


初めて会う人だけど、なんだか信頼できると思ってしまった。


アスラ―さんが「では、これで」と立ち上がろうとした時、私は彼のジャケットを掴んでいた。


それは咄嗟のことで、自分でも驚いてしまった。


そして、私以上にアスラーさんは綺麗な二重の瞳を大きく見開いていた。


「ヘレナさん、どうされましたか?」


「私の刺繍作品がどのように商品になるのか、見せて頂くことはできますか?」


そう、明日になったら……、いやもっと早くに忘れてしまうかもしれないから……。


今言わなければと、思わず仕立ての良い服を掴んでしまったのだ。


アスラーさんは胸元から懐中時計を出し、時刻を確認した。


「まだ、職人は残っているな」と小声で言った。


「分かりました。確かに大事な作品がどのように仕上げられるか気になりますよね。今、アリスさんに説明してきますので、お待ちください」


私のわがままに、真摯に対応してくれるアスラ―さん。さすが両親が認めた後見人だわ。


アスラーさんが階段を下りていく音がした。


私は糸だらけの作業机を片付け始めた。ざっと片づけたら、外出するから準備しないと……。


その時机の端に置かれた大き目の茶封筒が目に入った。アスラ―さんが次の依頼書ですと言っていたわね。


私はその茶封筒を手に取り、中身を確認した。


ふむふむ、次はハンカチ用にスズランの刺繍ね。刺繍するハンカチと参考の図案も何枚か入っていた。


これは楽しみだわ!さっそく始めちゃいましょう!


私は刺繍糸が色別に並んでいる引き出しへと急いだ。


最後までお読み頂きありがとうございます!

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次回も読んで頂けたらうれしいです(*^^*)

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