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第八話 僕の行動

 それは、ティーノが気絶しているときの間の出来事であった。

 ある一人の女子生徒が、女一人、男2人と一緒に机を囲んでいた。壁は薄汚れており、電機もろくについてはいない。頼りになるのは、手元にある小さな光源だけである。その光で、彼女の制服に書かれた、『A』の紋章が反射した。


「ねぇ、あのベルへデスとかいう男、どう思う?」


座るなり、彼女は他三人に聞いた。すると三人の表情はますます曇っていき、あまり気に入ってはないようであった。

 その中、一人の男が口を開いた。Aクラス11位のバゼル・アラフォードである。


「俺はあの白髪のガキが、どうも気に入らねぇ。あいつを見てるとイライラすんだ」


この4人全員がティーノを目の敵にしている理由。それは至極簡単なことで、こんな短期間でクラス移動になることなど前代未聞であったからだ。

 本来のクラス移動では、早くて一年半ほどで移動するのが定石であった。そして、全生徒はそれを知っていた。だからこそ、皆誰もが、今年でクラス移動する人物なんていないと思い込んでいたのだ。しかし、そこにイレギュラーが登場した。それが、ティーノ・ベルへデスであった。

 それも彼は最近までBクラス最下位の男であるがゆえに、反発するのも仕方がないことであった。


「じゃあさ、私たちで少し痛めつけてあげようよ。もう二度と頂点を目指せないように」


女子生徒、ジュリエルがにやりと笑い、作戦内容を話した。

 話し終えた後、三人は固まっていた。


「おい...、さすがにやりすぎじゃないか?」

「いいのよ。あいつがAクラスに上がるには、次の特別試験でいい成果を出せばの話。それに、自分はいまだ弱者なんだって思わせれば、もう二度と強くなろうとは思わないでしょ」

「それもそうだな。あいつの顔がゆがむところを想像すると、なんだかワクワクするな」


部屋に笑い声が響く。しかし、第三者がこのことを聞いているはずもなく、静かに、ティーノを貶める作戦が実行された。

 そしてその一方で、別の勢力もまた、ティーノを注視していた。


「メリベル様。キィローが裏切りました」


シトリー・デクテットの本拠地にて、一人の部下が頭らしき女性に報告をしていた。

 シトリー・デクテットの本拠地は、学園を中心とするコルシア王国と対極の位置にある。あまりにもあからさまであるから、すぐについえてしまうと思うが、兵士の数があまりにも多すぎるが故にまともに攻め込むことができないのだ。


「あら、あの子なかなかかわいかったのに。少し残念だわ」


女性は玉座に座ったまま姿勢を変えず、落ち着いて対応する。


「それで、キィローを助けたのは誰なの?」

「こちらです」


そういって、幹部のダイアズは一つの水晶を女性に渡した。

 女性は紫の瞳で、その水晶を除く。そこに映っていたのは、ティーノがキィローを圧倒している場面だった。彼女はまじまじと、その光景を見ている。

 ティーノがキィローと戦闘をした際、ダイアズはその戦闘を見ていたのだ。


「へぇ。面白そうじゃないの」


にやりと女性は笑い、そして幹部にある命令を下した。


「二週間後、私とあいつが戦う?」

「そうよ。どれほどの実力かを知るには、あなたがちょうどいいでしょう?」

「......わかりました。戦闘が終わり次第、すぐ帰還します」


そうしてダイアズは、そそくさと足早に去っていった。

 玉座に一人座っていた女性は、ようやくその重い腰を持ち上げた。


「面白い子を見つけちゃった」


誰一人いないその部屋で、女性は一人笑ったのであった。






『ねぇねえ。おじさんって強いの?』


誰かの声が、僕の脳内に響く。必死に声の主を探してみるが、真っ暗で何も見えない。

 されど、声は止まない。


『お前よりも何倍も強いさ。当たり前だろ。俺はお前よりも長生きしてるんだからな』

『じゃあ僕も大人になったらいつか、おじさんさんみたいに強くなれる?』

『ああ。もちろんだ。それまで待ってる』


これは、過去の記憶だろうか?僕にはわからない。

 幼少期のことは何も覚えていない。ただ、気が付けばこの国にいた。その時のことさえ覚えていない。この声の主も、そして、ここはどこなのかも。

 全部、わからない。

 おじさんと呼ばれている人物と、一人の子供の笑い声が遠のいていき、僕はようやく目を覚ました。


「よかった......。ティーノがようやく起きて」

「あれ、メル?そうか。僕は気絶してたんだね」

「朝までぐっすり眠っちゃって」


そういうメルの顔には笑顔が浮かんでおり、安心したのが見て取れた。

 しかし、妙な夢を見たものだ。過去に僕はあんな会話をしただろうか。幼少期の記憶がないということは、おそらくあれは僕の過去なんだろう。きっと。

 いつか、すべてわかる日が来る。そう信じて今日も一日、メルとともに学園へ向かうのだった。

最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますので、ブックマークをして待っていただけると嬉しいです。

 これからもこのシリーズをよろしくお願いします!

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