第四話 元気なのはいいことだと思います
トーナメント戦の後のことである。最下位の僕が優勝したことにより、噂は噂を呼び、気が付けば僕は注目の的になっていた。故に、登校中も誰かの視線を必ず浴びることになるため、気休めができなかった。
あれから二週間後、少しずつ僕への興味が薄まってきたころに、実戦形式の訓練をすることになった。そのため、僕たちBクラスの生徒一同は、現在ダンジョンの目の前にまで来ていた。
僕たちBクラスというのは案外扱いが雑であり、こういった訓練がほとんどない。おかげで戦闘経験は浅いし、なにより緊張する。実際、僕以外の生徒は緊張しており、顔がこわばっていた。
そんな中、担任のゼーニス先生が僕らのほうに顔を向けた。
「それじゃあ、今から実戦形式の訓練をするわけなんだけど、簡単にルールを説明するわね」
白い服のポケットから、何かを取り出す。そこから出てきたのは、アメジストのような色と透き通りを見せる魔石であった。先生は魔石を回転させ、その輝きを見せつける。
「これは魔石。このダンジョン内にいる魔物たちや、宝箱からドロップするアイテムです。あなたたちには4人のグループになってもらって、このダンジョンで、魔物を倒したり宝箱をあさるなどして魔石を集めてもらいます。また、魔石を一番多く集めたグループには特典があります。頑張ってくださいね。それでは、まずグループを作ってください」
グループ。この単語を聞くだけで反吐が出る。グループになってくれる人がいないらだ。最終的にあまりものになる。それはいつでも、ぼくの心をえぐってくるものである。
またあまりものになるんだろうか。と、僕がため息をついた時だった。やぁ。と、僕に声をかけてくれた人物がいた。そしてその声は昨日の夜、僕を襲った後、友人になったある男の声だった。思わず振り返る。するとそこにはキィローと、一人の女子生徒がいた。メルである。
「ティーノ君、俺と一緒にやろー」
「いいけど、なんだ僕となの?ほかにもいると思うんだけど...」
どうしてこの二人が?と困惑しつつ、目線をそらしながら話していると、キィローは面白おかしく笑った。
「なんでって、君ほど強い生徒なんて、今ここにはいないだろ?な。メル?」
「うん。私、あなたと一緒に行きたい」
二人からのその言葉に胸を撃たれつつ、僕は気を紛らわすように頭をかいた。
目線をそらし、みんなのほうをうかがってみると、散り散りになっていくつかの集団ができていた。そんな中、一人の女子生徒があたりを見渡しながらそわそわしているのを発見した。それを見て、過去の自分を想起させ、彼女と自分を重ねていた。
そう気が付いたときは、僕は二人にちょっと行ってくる。とだけ言って、彼女のもとへ走った。
「あのさ、もしよかったら僕たちのグループはいらない?ちょうど一人いないからさ」
「え、いいの?ありがとう!!私、ベルラって言うんだ!」
「ティーノ・ベルへデスだ。よろしく」
勢いのある彼女のあいさつに気圧されながら、僕は彼女と握手をした。
しばらくたって、全員がちゃんとグループになったか確認し終わった先生は、僕たちをダンジョンの入り口まで連れていった。全員がまだかまだかと入りたくてうずうずしていたが、入り口に先生が経っているため、入るわけにはいかなかった。
「それでは、ダンジョンの中に。みんな焦らないようにね」
先生が体をどけた瞬間、全員が一斉に中へ入っていった。のだが、僕たちのグループだけは走ってはいかず、ゆっくりと歩き始めた。その行為に、三人が目を疑った。
「そういえば君たちはさ、弱い魔物と連戦するのと、強い魔物一体と戦うのって、どっちが好きなの?」
僕が効くと、三人とも黙りこくって考え始めた。それから間もなく手を挙げたのは、おおざっぱそうなベルラであった。
「どっちにも行きたくないです!」
「第三の選択肢を急に出してくんなよ~。もぉー」
思わずため息をつく。
「で、本命は?」
「強い魔物一匹と戦うほうがいいです!!」
勢いだけはいいなと苦笑いする。すると、彼女と同意見だったのか、キィローもメルも、俺も私もと賛同した。
それを聞いた僕は、松明しかない石煉瓦の廊下ど道中で止まり、横にあった石煉瓦を押した。そこは隠し通路へのスイッチであり、見る見るうちに石煉瓦はくぼんでいった。すると、反対の方向から物音がし、振り返ればそこには地下通路への階段が姿を現した。
僕は臆することなく、その階段を下る。しかし他一同ポカンとしており、口をあんぐりと明けていた。
「どうしたの?ほら、行くよ~」
「お、ちょっと待てって!」
キィローが僕についていこうとすると、二人も正気に戻ったのか、僕たちを追いかけるように階段へ走っていった。どんどんと、階段を下りていく。
しばらく下って行ったのち、ようやく僕たちは、その目的の地点にまでたどり着いた。
「なにあれ...」
メルが震えた手でそれを指さす。事の重大さに気が付いた二人も驚愕していた。だが構わずに、僕はナイフを取り出した。
「そんじゃあ俺らで、Aランク級の魔物ベル・ケルピーを倒すぞ!」
こうして、俺たち4人とベル・ケルピーとの戦いが始まったのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!執筆速度は遅いですが、これからもこのシリーズを続けていこうともいますので、ブックマークをして待っていただけると嬉しいです。
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