第七章:新たな恋の予感!? まさかの幼女との出会い
葵の上の死からしばらく経った。
俺は心にぽっかりと穴が空いたような気持ちで過ごしていたが、周囲はそうもいかないらしい。
「光る君、そろそろ新しい縁談を考えねばなりませんな」
そう言ってきたのは弘徽殿の女御を母に持つ右大臣だった。彼は俺のことを快く思っていないらしく、何かと俺に難癖をつけてくる。
(いやいや、まだ心の整理もついてないのに結婚話とか勘弁してくれよ……)
とはいえ、貴族の男は結婚も政治の一環だ。俺の気持ちとは関係なく、周りは俺に新たな妻を押しつけようとしてくる。
◇◆◇
そんな中、俺はふと気になる話を耳にした。
「藤壺様の姪御が、たいそう可愛らしいとのことです」
(藤壺の……姪?)
彼女の妹が亡くなった後、その娘がまだ幼いまま残されたらしい。
名は若紫。
その名を聞いたとき、なぜか胸がざわめいた。
◇◆◇
俺はある日、ふらりと北山へ出かけることにした。
すると、山里のある僧坊に、小さな少女の姿を見つける。
「……ん?」
庭先で花を摘んでいた少女が、俺の視線に気づいてこちらを見上げた。
目が合った瞬間、俺は驚いた。
(……なんだ、この子)
彼女の顔は、まるで藤壺の面影をそのまま幼くしたようだった。
いや、藤壺というより──
「……あの、あなたは?」
少女が小さな声で尋ねる。
(……やばい、可愛い)
心の中で動揺しつつも、俺はやさしく微笑んだ。
「俺は、ちょっと通りがかった者だよ。お嬢ちゃんは?」
「わたしは……」
そう言いかけた彼女を、奥から出てきた老尼(祖母)が呼び止める。
「若紫、こちらへお戻りなさい」
彼女の名を聞き、俺は確信する。
(この子は……)
運命的なものを感じずにはいられなかった。
◇◆◇
その後、俺は何度か彼女のもとを訪れた。
彼女はまだ幼いが、その話し方や仕草にはどこか品があった。
「……俺、この子を育ててみたいな」
思わずそんな考えがよぎる。
(将来、彼女が成長したら……)
俺はまだ気づいていなかった。
この出会いが、俺の人生を大きく変えることになるということに。